米国で「修復する権利」、つまりユーザーが自ら選んだ方法で(主にメーカー非公認の修理業者に持ち込んで)購入した製品を修理できる権利を法案化する運動が盛り上がりを見せており、ジョー・バイデン大統領もそれを後押しする動きを見せているほどです。それを阻止しようと、アップルがロビイストや業界団体を通じて働きかけていることも伝えられていました。
そうした「修復する権利」をアップルの共同創業者のひとりスティーブ・ウォズニアック氏が支持し、それが自分の人生にどれほどの影響を与えたのかを約10分間語っています。
ウォズ(愛称)氏の話を引き出したのは、「修復する権利」運動の中心人物であるルイス・ロスマン(Louis Rossmann)氏です。ロスマン氏がウォズ氏にCameo(著名人に謝礼を支払い、短編のカスタム動画を作ってもらえるサービス)のリクエストを送ったところ、ウォズ氏は「自分はとても忙しいので、この運動にはあまり参加していないが支持している」と切り出しています。
ウォズ氏は「私が非常にオープンな技術の世界で育っていなかったら、アップルは存在しなかったでしょう」「当時、テレビやラジオなどの電子機器を購入すると、回路や設計のすべてが紙に書かれていました。完全なオープンソースだ」と振り返っています。
さらに「技術者ではない家族でも、真空管を引っ張り出してきて、真空管テスターを探し、故障していれば新しい真空管を買ってくる。当時は誰もがそうしていた」と修理がどれほど簡単だったかを説明。そして創業時のアップルが、当時のオープンな回路図から恩恵を受けたことを強調しています。
すなわち「アップルを設立するとき、私は入出力用のテレタイプ(印刷電信機)を買うことができなかった」ため、信号の出力用にテレビを使うことができたとのこと。「それもこれも、自分で修理したり、改造したり、利用したりすることができたからだ」として、回路図が公開されていたから金がない若者でも自力でどうにかなったというわけです。
そんな自らの修理経験を踏まえて「なぜ自分で修理するコミュニティを止めるのか?なぜ人々の修理する権利を止めるのか?Apple IIを見てください。完全な回路図付きで出荷された…この製品はアップルの最初の10年間、唯一の利益源だった」として、累計で約600万台が販売された名機の原動力が「修復する権利」だったと語っています。ちなみにApple IIの手書き回路図は、約6500万円で落札されたこともありました。
それに続けてウォズ氏は「修復する権利をもっと全面的に認めるべき時が来ている」と述べ、「企業がそれを邪魔するのは、彼らに権力を与え、すべてを支配することに繋がるからだと思う」と語っています。締めくくりの言葉は「自分のコンピュータなのか、それともどこかの会社のコンピュータなのか。それを考えてみてください。正しいことを始める時が来たのです」というものです。
ウォズ氏の考えは「修復する権利」の阻止に動くと噂されるアップルの方針とは真逆にも思えますが、一方でアップルは独立系修理業者の認定プログラムを日本を含むグローバルに拡大するなど歩み寄りの姿勢も見せています。アップルが「修復する権利」に恩返しをするのか、今後の展開を見守りたいところです。
(Source:Steve Wozniak speaks on Right to Repair。via 9to5Mac。Engadget日本版より転載)
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