アディダスが国際宇宙ステーションで靴のソール製造実験へ

来る3月2日には、SpaceXとして20回目となるISS(国際宇宙ステーション)補給ミッションの打ち上げが予定されている。今回は、通常の補給品やちょっとしたお土産品に加えて、パートナーと有償の顧客から依頼された興味深い実験機材も含んでいる。さらに実験室として使われているヨーロッパのコロンバスモジュールを拡張するための資材も積まれる。

画像クレジット:SpaceX

中でも、奇妙に感じられるのは、Adidas(アディダス)の「BOOST in Space」(宇宙で増強)という試みだろう。同社は、数千もの小さな泡球を融合させることで靴のミッドソールを製造している。これは、もちろん通常は地球上で行われるので重力の影響が避けられない。そこで、それを宇宙で行うとどうなるのか実際に試して調査しようというのだ。

「微小重力状態では、ペレットの動きと位置に影響を与える要因を詳しく調べることができます。それが、製造プロセスや、製品の性能、快適性の向上にもつながる可能性があります」と、このプロジェクトは説明している。もちろん、これは素晴らしい見ものにもなるだろう。このトースターサイズのデバイスからもたらされる成果が、きっと優れた靴の開発につながるはずだ。

このような営利目的の業務については、たいていいつもそうなのだが、ちょっと変わったものであっても、そうした実験をISS上でやること自体が、かなりクールなものに感じられる。

微小重力状態は、引く手あまたの条件であり、宇宙空間での実験プロジェクトの多くは、実際それを求めてのものなのだ。たとえば、蛇口のメーカーであるDelta(デルタ)による商用実験は、水滴の形成について何らかのことが学べるのではないかと期待してのもの。それによって、より効率的なシャワーなどを作ることができるのではないかと考えている。

消化器組織は、通常はこのような青色ではないが、これについては微小重力環境の影響ではない

一方、Emulate(エミュレート)は、チップ上の臓器(正確に言えば腸組織)を宇宙に送り出し、「微小重力環境や他の潜在的な宇宙飛行によるストレス要因が、腸の免疫細胞と、感染症への感受性に、どのように影響するか」を解明するのに役立つことを期待している。また宇宙空間上で、幹細胞から心臓組織を生成することもテストする。これは、長期間の宇宙飛行に役立つ可能性がある。

ただし、今回運ばれる最大の貨物は、間違いなくBartolomeo(バルトロメオ)だ。Bartolomeoは、ヨーロッパのコロンバスモジュールに接続する新しい外部プラットフォームとなる。

貨物が取り付けられた左側。右側は見えていない。他の目的のための「腕」が突き出している

商用、その他のパートナーの貨物用に12のスペースが確保されている。理由はさまざまとしても、宇宙ステーションの外部へのアクセスが必要な大学や企業が利用できる。たとえば、地球の撮影、真空露出、放射線試験などが考えられる。仕様については、ここに書かれている。

すべてがうまくいけば、打ち上げは予定通り3月2日となる。その時点が近づいたら、ライブストリームを公開し、記事を更新する予定だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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