アトランタ郊外の電動スクーターを2700km離れたメキシコシティーから遠隔操作する実証実験が始まる

米国南東部にあるアトランタの郊外でのシェアリング電動スクーターの確保や回収は、およそ2700km離れたメキシコシティーから遠隔操作で行われている。

アトランタ郊外の都市Peachtree Corner(ピーチツリー・コーナーズ)では、今週からサービスが開始されるアプリを使って、遠隔操作のスタートアップTortoise(トータス)の技術を搭載したGo X(ゴーエックス)の電動スクーターを呼べるようになる。Go Xが開発した「Apollo」(アポロ)アプリを使えば、電動スクーターは利用者が乗りたい場所まで自動的に走ってきてくれる。目的地に到着したら、電動スクーターは安全な駐車所まで自分で帰っていく。そこでGo Xのスタッフは、スクーターを充電・消毒し、適切に消毒されたことを証明するステッカーを貼る。

しかしこの電動スクーターは、本当の意味での自動運転車ではない。Tortoiseのオペレーターが遠隔操縦しているのだ。Tortoiseのオペレーティングシステムと、スクーターに追加された特別な装置、例えば簡単に操縦できるように取り付けられた補助輪などによって可能になる。

この取り組みは、Go XとTortoise、そして地元の技術インキュベーターのCuriosity Labs(キュリオシティー・ラブズ)が共同で実施する6カ月間の試験運用で、米国の公道を初めて走行できる遠隔操作電動スクーターとなる。

画像提供:Tortoise

公共交通機関とシェアリング・マイクロモビリティーを一掃してしまった新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによって、Tortoiseの共同創業者で社長のDmitry Shevelenko(ドミトリー・シェビレンコ)氏は、以前にも増してスクーターの遠隔操作に確信を抱き、強気になったという。

「ユニットエコノミーに対する圧力は新型コロナウイルス前よりも強くなっています」と同氏。「車両を1日中消毒された状態にしておくという使用事例は、これまで考えてもみなかったものですが、今では非常に重要なことに思えます」。

従来のシェアリング電動スクーターのビジネスモデルは、ギグワーカーによる車両の回収に依存していた。常に人を乗せることで、スクーターの消耗が早くなる。しかも、使うたびに消毒などできない。

「私たちにとって重要なゴールは、このピーチツリー・コーナーズで世界初の効率的で組織化され高度化されたマイクロモビリティーを構築しつつ、利用者が電動スクーターの利便性を享受することでした」と、ピーチツリー・コーナーズ市政担当官を務めるBrian Johnson(ブライアン・ジョンソン)氏は語る。

この試験運用で、Tortoiseはちょっとだけ得をした。ピーチツリー・コーナーズは、すべてのシェアリング・マイクロモビリティー用車両に、自動的に再配置できる機能を義務付ける条例を通過させたのだ。ほかの街のように、乗り捨てられたドックレス方式のスクーターが固まって歩道をふさいでしまわないようにするのが目的だ。「私たちから要求したわけではありません。街が独自に決めたことです」とシェビレンコ氏は言う。

こうした条例は、行政がスクーターの展開の管理を強化するにつれて一般的なものになるだろう。例えば、シアトルとベルビューがあるワシントン州のキング郡では「遠隔再配置は運営企業がそれを導入すれば、認可を与える企業を決めるための採点制度で得点が稼げる技術だ」と名指しで呼び込んでいる。

「そのため、この技術が成熟するに従い、街がこれを正しく受け入れてくれることをとても喜ばしく思っています」とシェビレンコ氏は話していた。

画像クレジット:Tortoise

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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