アプリ運営プラットフォーム「Yappli(ヤプリ)」を手がけるヤプリは10月16日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(本ラウンドのリード)、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、YJキャピタル 、川田尚吾氏を引受先とした第三者割当増資(グロービス、YJキャピタル、川田氏は既存投資家)とみずほ銀行等からの融資を合わせ、総額約6億7000万円の資金調達を実施したと発表した。
同社はこれまでグロービス・キャピタル・パートナーズ、YJ キャピタル、Salesforce.com、川田氏らから資金を調達しており、累計調達総額は約10億3000万円となる。また、資金調達と合わせてCFO(最高財務責任者)に元マナボCFOの角田耕一氏が就任したことも発表している。
「この2年はとにかく伸びている。最初の3年はすごいプロダクトを作ったものの、セールスやマーケティングに課題があった。いいプロダクトがあったけど売れない状態からセールスのグロースハックに成功した」——ヤプリ代表取締役の庵原保文氏はそう語る。
同社は2013年に設立(当初の社名はファストメディア)。ブラウザ上でドラッグ&ドロップしてスマートフォンアプリを制作できるYappliを開発し、中小企業や個人までをターゲットに、安価に利用できるサービスとして展開。しかしサービスインから1年足らずでの売上が数十万円という状況だったため、方針を転換。大手企業をターゲットにすることで、半年後には単月黒字を達成するという結果を出した(当時の様子は前回の資金調達の記事に詳しい)。
現在、専任の開発チームを有しない一般企業など、220社がサービスを導入。サービス継続率は99%を誇る。Yappliで制作したアプリの累計ダウンロード数は1000万件を越えた。特に小売・アパレル領域での販促支援のためのアプリは好調で、中には売上の50%以上がアプリ経由になったというアパレルブランドもあるという。そのほかにも、ゴルフ場運営の太平洋クラブで予約数2倍、アウトドアブランド「THE NORTH FACE」では、来店クーポンの利用回数が2万回以上増加、同じくアパレルの「Right-on」では、ポイントカードのアプリ化により、会員数の伸び率50%アップといった結果が出ている。販促支援にとどまらず、採用サイトのアプリ化や自社製品カタログのアプリ化など、利用用途も広がっている。
「オウンドメディアよりエンゲージしたいといった理由もあり、一般企業でもアプリを利用したいというニーズは増えている。スタートアップであれば、アプリなんて当たり前になっているかも知れないが、今まで(一般企業は)そのテクノロジーにアクセスできなかった。マーケティングで言えばGPSを使って、プッシュをして、とメルマガをリプレイスするモノになってきた。iOS11でQRコードが標準で使えるようになったので、よりアプリへの登録も容易になった」(庵原氏)
同社は今回調達した資金を元に、人材を強化。Yappliの機能強化を進める。
「創業の時から、簡単に、ちゃんと動くアプリが作れる、というのが受けている。素晴らしい管理画面こそが競争優位性だ。実際、セットアップ以降は(エンジニアが不在な)企業のウェブ担当者やマーケティング担当者が運用できている。この2年はセールスとマーケティングに注力してきたので、次はプロダクト回帰。エンジニアも10人規模で拡大する」(庵原氏)
今後は「(Yappliで制作した)自社アプリのデータの資産化にも取り組んでいく」(庵原氏)という。自社アプリを利用するユーザーの端末IDをもとに、FacebookやSmartNewsといった外部サービスにおいてもレコメンデーションを行うなど、アプリ内にとどまらない販促施策のプラットフォームとして開発を進める予定だ。