アマゾンによるオンデマンド料理配達アプリDeliverooの16%株式取得を英当局が承認

ようやく正式なものとなった。Amazon(アマゾン)のCEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が、同氏のeコマース帝国のマーケットパワーを懸念する米国の議員から変な質問責めにあった(未訳記事)数日後、英国の競争・市場庁(CMA)はアマゾンによる英国のオンデマンドフードデリバリーアプリであるDeliverooの16%株式取得を承認した。

CMAは、この件について15カ月にわたって調査してきた。調査第1段階を12月に終了した際、懸念が残るために第2段階の調査を行うことを決めた。アマゾンがオンラインレストランフードマーケットに再参入し、「英国におけるオンラインコンビニエンスグローサリー配達マーケットでさらにシェアを拡大する」ことを認めるべきかどうかを吟味するというものだ。

CMAが作業を開始してほどなくして、新型コロナウイルス(COVID-19)が欧州を襲った。新型コロナがDeliverooの事業に影響を及ぼしたように、調査も影響を受けた。当初、新型コロナの影響はネガティブなものでDeliverooはアマゾンの株式取得なしでは倒産する、と主張した。CMAはDeliverooを「破綻会社」として扱い、Deliverooのマーケットからの撤退が競争を悪化させることになるとして同社の意見に同意した。そして2020年4月にアマゾンのDeliveroo株取得を暫定的に承認した(英国政府リリース)。

そして6月に再びCMAはこの件を暫定承認した(未訳記事)。ただ、4月からはDeliverooを破綻会社としては扱っていない。というのも、レストランフード配達マーケットの回復が予想よりも早く、レストラン「ミックス」(脱大手フードチェーン、小規模の独立レストランへの回帰)の動きが認められたからだ。いずれも、Deliverooの金庫に金が流れ込む結果につながった。同社の財政は「急回転」を経験したが、それでもCMAは競争阻害のリスクの「実質的な評価」を完了させる必要があるとした。

そして最終的に、アマゾンによるDeliverooの16%株式取得に競争阻害のリスクはないとの結論が出た。そのためベゾス氏は大喜びできる。もちろん、彼はDeliverooが一体何かを知っているはずだ。

CMAは、競争の観点からの今回の承認は「アマゾンとDeliverooが提出した内部資料の集中的な分析、消費者3000人を対象に行った調査、利害があるサードパーティからの意見提出」(英国政府リリース)によるものだと述べた。

アマゾンによる16%の株式取得が、今後のレストランデリバリーとオンラインコンビニエンスグローサリー配達において、Deliverooと独立して競うためのインセンティブにどのように影響するかを調査した、とCMAは説明した。

「CMAはこのレベルの投資はいずれのマーケットにおいても競争を実質的に阻害しない、との結論に至った。ただ、アマゾンが例えばDeliverooの支配持分を取得するなどしてDeliverooの支配力を高めようとすれば、CMAによるさらなる調査につながる」と付け加えた。

声明文の中で、CMAパネル委員長のStuart McIntosh(スチュアート・マッキントッシュ)氏は「調査第2段階で適用した法的基準を考慮し、株式取得の取引はレストランデリバリーとコンビニエンスグローサリー配達の両方において実質的に競争を阻害しないと結論づけた」と述べた。

マッキントッシュ氏はまた、決定が投資の規模とアマゾンの「2つのマーケットにおける競争するためのインセンティブ」を反映したものだとわざわざ強調した。つまり、アマゾンがDeliverooの持分を増やそうとすれば、調査が行われることを警告した。

アマゾンがDeliverooアプリ事業の5億7500万ドル(約607億円)のシリーズGラウンドをリードすると発表したのは2019年5月のことだ(未訳記事)。

この動きは、eコマース大企業のアマゾンが2016年にPrime(プライム)会員向けにロンドンのレストランのオンデマンドフードデリバリーを立ち上げた(未訳記事)後の次なる行動を合図するものだった。しかし、同社はDeliverooやUber Eatsのような手強い競合相手に直面し、数年後にデリバリーサービスを取りやめた(未訳記事)。

CMAの承認について、DeliverooはCMAが調査の拠り所としてきた5つの「競争阻害要因にかかる理論」がいずれも実証されなかった、と強調した。

同社の広報担当は以下の声明を出した。

CMAが15カ月に及ぶ調査を終え、アマゾンのマイノリティ投資が前に進められることを喜んでいる。

これは英国の顧客とレストラン、そして英国経済にとって素晴らしいニュースだ。英国生まれのDeliverooは、今回の資金を顧客のための選択肢と価値の増加に、そしてレストランのサポートに使う。また、社が拡大するにつれライダーにさらに多くのフレキシブルな仕事を提供できる。

世界で最も顧客第一主義でイノベーティブな企業であるアマゾンが当社にかなりの信頼を示し、そして当社の未来への出資を選んだことに興奮している。

Deliverooは、アップデートされたビジネス指標のいくつかを示した。同社プラットフォームには現在、世界のレストラン10万店が登録されていて、今年だけで3万店が加わった。同社は、新型コロナ危機によりレストランが売上の生命線としてデリバリーに対応するようになったことが貢献している、と指摘した。

「Deliverooと協業している世界のレストランの7万5000店は小規模の独立経営レストランで、パンデミックで最も影響を受けている」と同社は付け加えた。

画像クレジット:Deliveroo

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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