アマゾン時代を生き抜くために小売業はどうすべきか?

Amazon(アマゾン)の2019年のプライムデーは、労働者の抗議行動から独占禁止法に関する調査まで、複雑な問題に見舞われたが、販売点数はブラックフライデーとサイバーマンデーの合計を上回る1億7500万点となり、これまでの記録を更新した。わずか20年で、Amazonは物流業界に革命をもたらした。注文の直接配送を実現し、その受注配送システムを、Amazonマーケットプレイスで販売するサードパーティにも提供した。

今年中には、米国の全世帯の半数以上がプライム会員になる見込みだ。Amazonが配送にかかるコストと時間を低減し続けるにつれ、消費者の期待は逆にどんどん高くなっていく。しかしこうした状況は、他の小売業者にとって何を意味するのか?

ポストAmazonの時代に生き残るためには、企業が物理的な商品を保管し、最終目的地に配送するための方法を、今後10年で根本的に変えなければならない。以下に示すのは、物流の世界が直面する非常に重要な課題と、次に起こるかもしれないことの3つの予想だ。

大きな課題

アマゾンを打ち負かすことは難しい。巨大で、幅広く、そして奥も深い倉庫システム、配送システムのインフラを備え、そこには最先端の自動化が施されているからだ。その一方で、一般的な物流サプライチェーンは、製造工場からの物理的な商品の輸送から、消費者に届けるための最後の1マイルの配達まで、ますます複雑になってきている。そのうえ、従来のやり方は、透明性が低く、情報の流れが非効率的で、自動化も限られているため、行動に移すことのできるような指針を得るのも難しい。

外部の企業に物流業務を委託するサプライチェーンが多くなる中、荷送人の期待と、物流プロバイダーの能力との間のギャップは拡がり続けている。輸送容量と輸送能力は拡大しつつあるものの、荷送人から見える範囲は縮小し、プロセスの管理もしにくくなっているからだ。

現在、業界全体でブルーカラー労働者が不足している、といった他の要素を考えると、結果として、配達と倉庫作業における革新が、差し迫ったニーズとなってきている。

2019年7月9日、イタリアのトリノにあるAmazon物流センター内に積み上げあれたAmazonの段ボール箱(写真:Stefano Guidi/Getty Images)

物流業界で次に起こること

荷送人は、物流における価値連鎖を改革し、保管から配達まで、さまざまな機能をアップグレードする必要性がますます高まるだろう。さらに、新しいパートナーを開拓して、革新的な技術と専門知識を導入する必要もある。

業界全体に対して、無駄のない効果的なソリューションを提供する上で優位な立場に立つ技術系のスタートアップは、物流チェーン全域の可視性、配達の早さ、保管と配送における費用対効果、といった特に重要なポイントを改善することに注力している。

  • 24時間年中無休のトラッキング機能が必須に

ここ数年で、「ITの大衆化」の波が物流業界にまで押し寄せた。それにより、ビジネスのプロフェッショナルでさえ、エンタープライズ向けソフトウェアに対して、日常的に使われている消費者向けアプリのような、シンプルで速く、使いやすいルックアンドフィールを求めるようになった。

ほとんどの企業の伝統的なインフラの課題は、既存の在庫について簡単に追跡したり、可視化したりできるようにするということにある。ベンチャーによるハイテクを取り入れ、技術と実行力を持ち合わせたソリューションの新しい波が出現して、こうした問題の解消に取り組んでいる。

例として、Shipwell(運送)、Stord(倉庫)、およびShipbob(配送)を挙げておこう。こうしたソリューションは、発送業務のチームに不可欠なスピードと信頼性を備え、しかも適正な価格によって、エンドツーエンドでデジタル化されたサービスを提供している。

米国では、次世代の在庫、倉庫管理に関して、まだ明確な勝者は決まっていない。しかし、これまでのところ、ワークフローやダッシュボードツールといったソリューションを含めてサービスを提供できる、キャパシティプロバイダーがこの方向に進んでいると見られている。

  • 即日発送が標準に

Amazonが最近発表した即日発送は、業界全体が進もうとしている方向の先駆けとなるものだ。Invespによると、調査の対象となった小売業者の65%以上が、今後2年以内に即日配達の実現を予定しているという。

そうした業者の多くは、エンドツーエンドの配送ソリューションを、電子商取引に関するサービスの事業者を利用して解決しようとしている。そこには、倉庫、梱包、配送、運輸、逆物流管理サービスなどの業者が含まれる。DeliverrShipmonkDarkstoreといったスタートアップは、コストと速度の点で競争力のある、より優れたソリューションを提供している。通常、ストレージの供給を直接コントロールし、配達は、アウトソーシング、またはクラウドソーシングによってまかなう。

垂直市場に目をつけた会社もある。たとえば、Cathay Innovationというポートフォリオ企業の配達アプリGlovoだ。最近、独自のダークストアをオープンした。ガレージ程度の大きさで在庫数も限定された倉庫を都市部に設け、15分以内の配達を保証することを目指している。GlovoのCEO、Oscar Pierre氏は以下のように述べている。「私たちは、ダークストアをもっとも重視しています。来年中にバルセロナ、リスボン、ミラノ、トビリシにも、ストアをオープンさせる予定です。20分以内に配達できれば、顧客の意思決定に大きな影響を与えることができます。納期が短かければ価格はそれほど気にしない、という場合には、近所のコンビニに出向くか、私たちのアプリで注文するかのどちらかになるでしょう」。

期待される配達時間は、ほとんど「ムーアの法則」のように短くなり続けている。物理的な小売店が、オンラインストアとしての条件を満たすようになるために必要なさまざまな変化を考えると、この領域には非常に大きな機会が残されている。

  • 保管と配送の費用対効果は急速に向上する

SpotifyやNetflixが、消費者に課す金額を10ドル(約1060円)前後の範囲に落とし込んだのと同じように、小売業者や配達業者も、送料について同様のことをしようとしている。それは荷送人が、消費者に負担してもらえる送料の額を制限することになる。そのため、販売者はコストを削減できる場所を他に見つけなければならなくなる。

伝統的な企業には、解決するための準備が十分にできていない問題を解決すべく、いくつかのスタートアップが登場してきている。それによって、小売業者がAmazonと対抗し、市場のニーズにより速く応え、しかもコストの上昇を抑えることが可能になってきている。

柔軟なオンデマンド方式の倉庫管理は、コストを節約し、AWSのようなスタイルで実効面積を拡大するための有効な手段となっている。FLEXEFlowspaceのような企業は、未使用の倉庫スペースと配送能力を、倉庫面積と配送量に対するニーズがダイナミックに変化する顧客と結びつけることで、より流動性が高く、効率的な市場を創り出している。しかも、自らの資産の稼働率も向上させているのだ。トラック輸送に関しては、ConvoyOntruckといった会社(私のベンチャーファームが投資している)が、輸送容量と空のトラックのマッチングを実施することで、トラックの利用率を向上させようとしている。

多くの荷送人(ウォルマートのような巨人も含め)が収益性の高い電子商取引事業の創出に取り組むなか、保管、流通、配送などの領域が、今後数年間、特に注目すべき重要な分野になるだろう。

まとめ

IoTセンサーや機械学習モデルから自律型ロボットまで、さまざまな技術革新が物流サプライチェーンを変革しつつある。この分野のスタートアップは、ポストAmazon時代を生き延びるためだけでなく、急成長している電子商取引の業界が、その革新の可能性を発揮することを手助けするというチャンスを手にしているのだ。

画像クレジット:Emanuele Cremaschi/Getty Images

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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