アメリカのスキル危機を解決する鍵は必修一般教育へのコンピュータサイエンスの導入だ

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[筆者: Linda Moore](政策および政治に関する超党派ネットワークTechNetの議長でCEO。)

合衆国はグローバルな競争力において危機に直面しており、対策が講じられなければその危機が、私たちの国を今後数十年間にわたり、戦略的に不利な立場に置くだろう。わずか数年後には、国民のスキル不足により、180万の求人が満たされないまま放置されることになる。それは十分な数の個人が、必要とされる技術的技能に関して、訓練されていないからだ。

40億ドルをコンピュータサイエンスの教育に投ずるというオバマ大統領の予算案は歓迎すべき一歩だが、しかし率直に言えば、この根本的な問題を解決するためには、国をあげての戦略を必要とする。今日では、10の学校のうちわずか1つにプログラミングのクラスがあるが、これを変えなければならない。

本誌主催の表彰制度Crunchie Awardでもっとも社会的影響力が大きかった賞を取ったCode.orgのような団体が、この問題に真剣に取り組み、児童生徒たちにプログラミングを教えているが、私がここで指摘している国家レベルの問題は、政府と非営利組織と民間(私企業等)三者の、公私両方から成るパートナーシップを必要とする。

では、私たちは、国としてあるいは国民として、この問題にどのように対処していくべきか?

第一に、アメリカのすべての中等学校が、コンピュータサイエンスを必須学科とすべきである。そしてそれらのクラスは、今の高卒資格に必要とされている中核的な科学と数学を学科の一部として含むべきである。また、充実した持続的事業により高能力なコンピュータサイエンス教師を訓練し確保しなければならない。生徒たちはテクノロジーを利用するだけでなく、それを実際に自分で作って動かす技術も習得する必要がある。

コンピュータサイエンスは子どもたちを問題解決者とイノベーターに育てる。

第二に、コンピュータサイエンスの教育は、若い女性たちや、社会的不利益を被りがちなマイノリティも含め、すべての児童生徒に等しく提供されなければならない。メンタリング(mentoring)とプロジェクトの実体験を含む教育課程が、生徒たちの生き生きとした関心をかきたて、彼らをコンピュータサイエンスとSTEMのキャリアに自然に進ませるだろう。

US2020Million Women Mentorsのような事業が、児童生徒たちをエンジニアやテクノロジー業界のそのほかのリーダーたちに結びつけようとしている。私たちはテクノロジーへの関心の火花を点火し、生徒たちに、STEMのキャリアがさまざまな機会に満ちた世界への扉を開くことを、理解させなければならない。

第三に、私たちはデジタルのコンテンツやツールを活用して教室にイノベーションを持ち込み、個人化された、データ指向の学習を提供し、教育の結果を改良していかなければならない。今日では、教師たちはタブレットなどのデジタルツールやリッチメディアの、その上っ面(つら)だけを使っている。これからは、教室の中にデジタル学習のリソースおよび、学習とテクノロジーとの統合を、確実に持ち込む必要がある。

そしてさらに、5年以内に全米の教室に高速ワイヤレスブロードバンドを導入し、児童生徒たちがインターネットに高速に、容易に、そして安定的にアクセスできるようにしなければならない。高速のインターネット接続がなければ、デジタル教育は画餅に終わる。児童生徒たちがインターネット上の情報のライブラリの全体に、自分の指一本でアクセスしたり貢献できる状態を、維持する必要がある。また、豊富なリッチメディアを通じて、高度な実験などにもアクセスできなければならない。

私たちは、コンピュータサイエンスが万人必修の基礎学科である、と認める必要がある。合衆国のすべての児童生徒が、アルゴリズムや、インターネットの原理、アプリケーションの作り方などを学習すべきである。しかしさらに重要なのは、コンピュータサイエンスが子どもたちを問題解決者とイノベーターに育てることだ。児童生徒たちにそんなスキルが身につけば、ほかのあらゆる学科においても有利であり、教室ばかりでなく、それを超えた広い世界においても、万事に有益である。

これは、一朝一夕には実現しない。それは、一つの世代全体に課せられているチャレンジだ。しかし私たちは今から始める必要があり、コンピュータサイエンスとその他のSTEM学科を十分に学んだ生徒たちのプールを、大きくしていく必要がある。それは、次世代の優れたイノベーターがアメリカに存在し、何百万もの児童生徒たちがこれらの革新的な分野でキャリアを追求していけるためだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

投稿者:

TechCrunch Japan

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