インターネットアーカイブが無料の電子書籍プログラムを2週間前倒しで終了、出版社からの訴訟を受け

National Emergency Library(NEL、全国非常時図書館)は、最終的に反発を招く運命となった多くの善意に基づくアイデアのひとつだ。これはInternet Archive(IA、インターネットアーカイブ)の発案によるプラットフォームで、130万冊を超える本を無料で借りることができる。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより全国の図書館が閉鎖されていたために、このシステムは教育者の本のニーズを補うようにデザインされていた。

その一方で出版社はそれを良しとしなかった。2020年6月初めに、出版社4社によるコンソーシアムがインターネットアーカイブに対して訴訟を起こした。「『オープン・ライブラリ』という名称にもかかわらず、インターネットアーカイブの行為は合法的な図書館サービスを大幅に上回り、著作権法を踏みにじり、産業規模で故意にデジタル著作権侵害を構成しています」とHachette(アシェット)、HarperCollins(ハーパーコリンズ)、Wiley(ワイリー)、Penguin Random House(ペンギン・ランダムハウス)の4社はニューヨーク連邦裁判所宛の訴状に書いている。

その脅しだけで十分だった。インターネットアーカイブは米国時間6月12日、ライブラリが米国時間6月15日に閉鎖されると発表した。これはもともと閉鎖を予定していた6月30日よりも2週間早い日付だ。

「この苦情は、デジタルブックを所有およびそれを貸し出すという図書館の概念全般を攻撃し、図書館がデジタルの世界でどのようなものかという、考えそのものに異議を唱えているのです」とインターネットアーカイブは述べている。「この訴訟は当初NELについて懸念を表明したものの、最終的には私たちと協力して物理的な学校や図書館から切り離された人びとに、アクセスを提供することを決定した一部の学術出版社たちとは対照的なものです。私たちは、ここでも同様の協力が可能であること、そして出版社たちが費用のかかる攻撃を中止することを望んでいます」。

インターネットアーカイブはさらに、このサービスを利用したすべての教育者や、それを利用して最前線で働く労働者たちに健康維持マニュアルを提供している司書の言葉を引用している。しかしそうした美談を前にしても、出版社たちがひるむことはなかった。訴訟を起こした出版社たちは、特にインターネットアーカイブがライセンス料を払わないことや、従来の図書館と合意してきた制限を欠いていることを問題にしている。

それは出版社たちがインターネットアーカイブに対して抱いてきた長年の不満であり、ついには「産業規模で故意にデジタル著作権侵害」を構成しているとまで言わしめたものなのだ。最終的には、数週間早く店仕舞をすることが最も抵抗が少ない道だったようだ。だがインターネットアーカイブはその投稿を、将来のコラボレーションに含みを残しつつ締めくくっている。「役に立つデジタルシステムをともに作り上げていきましょう」と。

原文へ

(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。