経営破綻の米レンタカー大手のHertzが最大1070億円の新株発行へ、なぜ?

米連邦破産法11条に基づく手続き中のHertz(ハーツ)は現在、最大10億ドル(約1070億円)相当の株式を発行できる。同社が狙うマーケットは、投機的な短期の賭けを好むトレーダーだ。

米デラウェア州破産裁判所による米国6月12日の決定は、Hertzに最大2億4680万株の未発行株を投資銀行のJefferies(ジェフリーズ)に売却することを認めた。6月11日に緊急要請を行ったHertzは「Jefferiesとの契約を結んでいない」と同社は米証券取引委員会への提出書類に記載した。

そう、ニューヨーク証券取引所と上場廃止を巡って争っている同社が、間もなく完全に消滅する可能性のある株式を新しく発行することができるのだ。そしてこのスキームに喜んで飛びつく用意がある個人投資家が多数いるようだ。

Hertz株は6月12日金曜日に2.83ドル(約300円)で取引を終え、前日終値から37.38%上昇した。同社の株価は、5月26日に終値で過去最低の0.56ドル(約60円)まで下げた後、400%以上上昇した。

Hertzは先月、米連邦破産法11条に基づく破産保護を申請(Hertzのプレスリリース)した。申請は決して驚きではなかった。レンタル業を営む同社は新型コロナウイルスのパンデミックに押しつぶされた。旅行や企業の出張がなくなり、Hertzには突然、未使用の資産、つまりたくさんの車が残された。収入の口がなくなっただけではない。中古車価格も下落の一途をたどり、車両の価値をさらに下げた。

同社は5月の申請で、破産手続き中は手元にある10億ドル(約1070億円)以上の現金を使って事業を運営し続けると説明した。その後、注目すべき資金源が現れた。株取引アプリのRobinhood(ロビンフッド)を使っているトレーダーらだ。

Hertzは今週、Robinhoodのデータを分析するウェブサイト「Robintrack」の人気チャートで2位になった。このチャートは、特定の銘柄を1日、3日、1週間、1カ月間保有しているユーザーの数を示す。今週、トレーダーの増加数で最も人気のあった株は電気自動車メーカーのNikola Motor(ニコラモーター)だった。Nikola Motorは少なくとも2021年まで売上がまったくないと予測されているものの、株価は急上昇した。

この不可解なトレンドにどっぷり浸かるために、TechCrunchのタイムマシンで2020年2月21日に遡ってみたい。Hertz株は、2018年1月以来の最高値である20.29ドル(約2200円)で取引を終えた。このとき、約1064人のRobinhoodユーザーがHertz株を保有していた。

新型コロナウイルスのパンデミックが景気を後退させ、Hertz株もそれに追随し2月21日から3月18日までの間に83%超下落した。その後株価は一瞬上昇し、再び下落を始め、5月26日には0.56ドル(約60円)で取引を終えた。2月の最高値から97.24%の下落だ。一方Robinhoodでは、Hertz株が購入するタイミングを迎えたように見え始めていた。株価が下がったため、RobinhoodのトレーダーはHertzに投資し始めたのだ。3月18日までに3500人を超えるRobinhoodユーザーがHertz株を保有していた。1カ月後、その数は1万8000人を超え、5月21日にはほぼ倍増して4万3000人を超えた。

画像クレジット:Robintrack

Hertzは5月22日、米連邦破産法11条の破産申請を行った。6月12日金曜日の時点で、17万46人のRobinhoodユーザーがHertz株を保有している。

はっきり言えば、Robinhoodは個人投資家が利用する多くのツールの1つにすぎない。Robinhoodで人気がある銘柄には幅広い投資家の市場心理が反映されていない可能性がある。だが、そこには若い投資家や新しい投資家の関心が投影されている。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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