インドのPractoが5500万ドルを調達、アジアの新興国でヘルスケアプラットフォームを展開

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インドに拠点を置き、医師検索・医療情報サービスを展開中のPractoが、この度シリーズDで5500万ドルを調達し、世界中の新興国へのさらなる進出を狙っている。

今回のラウンドでリードインベスターになった中国の大手ネット企業Tencentは、2015年にPractoが9000万ドルを調達したシリーズCでもリードインベスターを務めていた。またロシアのRu-Net、日本のリクルートが運営するRSI Fund、そしてニューヨークのThrive Capitalが新規の投資家として、さらに既存の投資家であるSequoia、Matrix、Capital G(旧Google Capital)、Altimeter Capital、Sofinaもラウンドに参加していた。なお今回の調達資金を合わせると、これまでにPractoが調達した資金の合計額は1億8000万ドルに達する。

Practoのビジネスにはいつも感銘を受けてきた。というのも、同社はヘルスケアという全ての人に影響を与える課題に取り組んでおり、その中でも特に問題が深刻な新興国をターゲットとしたサービスを提供しているのだ。プラットフォームの基本機能としてPractoのユーザーは、インドやその他の新興国では簡単にはいかない医師の検索や、医師から提供された医療情報の入手、さらにはQ&A機能を使って簡単な質問への回答やアドバイスを受けることができる。

新興国では医師不足が深刻な状況にあり、Practoのサービスは大きなインパクトを持っている。世界銀行のデータによれば、インドでは国民1000人に対して内科医が0.7人しかおらず、この割合は郊外だとさらに下がる。ちなみにアメリカとイギリスを例にとると、それぞれの国民1000人に対する内科医の数は2.8人と2.5人だった。

消費者側の問題解決以外にも、PractoはSaaSモデルを採用し、診療データ管理用のソフトウェアを医療施設に向けて販売している。これにより医療関係者は、Practoの消費者側のサービスを使って、自分たちのサービスを広範囲にスケールする前に、ビジネスやプロセスをデジタル化することができるのだ。

Practoによれば、同社のサービスを通じて年間4500万件のアポイントが成立しており、現在プラットフォームには20万人の”医療関係者”と1万軒の病院、そして5000軒の診療センターが登録されている。またPractoのプラットフォームは、インド以外にもフィリピン、インドネシア、シンガポール、ブラジルで利用されており、医療従事者向けのソフトウェアは世界中の15カ国で利用されている。

Practoは今回調達した資金をさらなる海外展開に利用する予定で、既存新興市場でのビジネス拡大、新規新興市場(東南アジア、南米、中東、アフリカ)への進出を狙っている。

「既存の市場でもさらに投資を加速させていきます」とPracto CEOのShashank N.Dはインタビュー中に語った。

「昨年私たちはエンタープライズ向けのビジネスを強化するために(インドで)複数の企業を買収し、インドの消費者向けサービスの拡充も進めてきました。今後は既存市場をさらに深掘りすると同時に、中東など新市場の調査も行っていきます。私たちのビジョンは、世界中の人がより健康に長く生きるためのサポートをするということです」と彼は付け加える。

Practoは海外での業績についてあまり情報を明かさなかったが、ほとんどの海外市場へ参入したのが昨年だったことを考えるとそれも理解できる。

「SaaSとマーケットプレイスを利用し、Practoはこれまでに確かな収益構造を築いてきました。現在海外からの売上は全体の20〜25%を占めており順調に成長していますが、インドでの売上の方が大きな伸びを見せています」とShashankは話す。

さらにPractoはTencentと密に協力しながら、今後医療保険の分野へ参入しようとしている。Tencentは数ある事業のひとつとしてWeChatを運営しており、これは中国で一番人気のメッセージアプリかつ驚異的なスティッキネスを誇るモバイルプラットフォームだ。WeChatのデイリーユーザー数は7億6800万人を記録しており、そのうち半分が1日あたり少なくとも90分間このアプリを使用している。

WeChatのようなプラットフォームをつくるノウハウこそ、PractoがTencentから学ぼうとしている点であり、ほかにも医療業界にいるTencentのパートナー企業を通して、中国でテクノロジーがどのようにヘルスケアに影響を与えているかについて情報を集めているとShashankは付け加える。

「昨年は一年を通して、Practoのプラットフォーム化に注力していました。ここで言うプラットフォームとは、消費者の医療に関するニーズをワンストップで満たせるような総合プラットフォームを指しています」と彼は話す。

TencentはPractoのこの動きを、実際のアクションをもって支援している。Practoへの投資は同社にとって初めての大規模投資案件であり、次回のラウンドでもTencentはリードインベスターを務めようとしているのだ。

「Practoはこれまでに素晴らしい成長を遂げ、同社がカバーする消費者と医療従事者のニーズの幅もだんだんと広がってきました。ヘルスケアの分野でフルスタックのモデルを確立することは大変難しいことですが、Practoは実際にプラットフォームを構築して急速にスケールしています。これは世界的にみても珍しい例です」とTencentの投資・M&A担当執行取締役であるHongwei Chenは声明の中で熱く語った。

2011年のシードラウンドからしばらくが経ってビジネスが成長し、海外での業況も上向いているが、ShashankはまだPractoのエグジットは考えていないと言う。

「今回のラウンドで資金に余裕が出たこともあり、特にIPOに向けた具体的な計画も立てていません。新興国のヘルスケア市場ははじまったばかりで、テクノロジーをヘルスケア分野で活用するというコンセプトも浸透していないので、まだまだ成長の余地はあると考えています」と彼は話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

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TechCrunch Japan

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