インド政府がツイッターは同国での免責措置を失ったと主張、新IT規制不遵守を理由に

インドの新しいIT規制をめぐり同国政府とTwitter(ツイッター)の間で緊張が高まっている中、インド政府は現地時間7月5日、Twitterはインドにおいて、ユーザーが作成したコンテンツに関して責任を問われない免責措置を享受できなくなったと、ニューデリーの高等裁判所に提出した書類で述べた。

インド政府は5日に提出した裁判所への申し立ての中で、米国のソーシャルネットワークであるTwitterが2021年2月に発表され5月下旬に施行されたインドの新しいIT規制に従わなかったため、同社はインドでの免責を失ったと主張した。

専門家たちはここ数週間、Twitterが世界第2位のインターネット市場である同国でセーフハーバー保護を維持できるかどうか決定する権限は、インド政府ではなくインドの裁判所にあると述べてきた。

インターネットサービスは「セーフハーバー」と呼ばれる広義の保護を受けており、ユーザーがネット上に投稿したり共有するコンテンツに関して、技術系プラットフォームは責任を問われないとされている。例えば、Twitterであなたが誰かを侮辱した場合、同社はその投稿を削除するよう求められることはあっても(侮辱した相手が裁判所に訴え、削除命令が出された場合)、ユーザーの言動に対して法的な責任を問われることはないだろう。

この保護がなくなれば、モバイル調査会社のApp Annieによるとインドに1億人以上のユーザーを抱えているTwitterは、名目上ではこれらのユーザーがプラットフォーム上で発言するすべての内容に対して責任を持つことになる。

「第79条第1項で媒介者に与えられる免責は、媒介者が第79条第2項および第3項の条件を満たすことを前提とした条件付きの免責であることを述べます。規則7に規定されているように、2021年情報技術規則を遵守しなかった場合、2000年IT法79条1項の規定は当該媒介者には適用されません」と、IT省のN Samaya Balan(N・サマヤ・バラン)氏は申請書に記している。

この動きは、インド政府とTwitterの間で緊張関係がエスカレートしているのを受けたものだ。この新規則では、重要なソーシャルメディア企業(インド国内に500万人以上のユーザーを抱える企業)は、チーフコンプライアントオフィサー、常駐グリーバンスオフィサー、および現場の懸念に対応するいわゆるノーダルコンタクトパーソンを任命することが求められている。Google(グーグル)やFacebook(フェイスブック)をはじめとする他のいくつかの該当企業は、新IT規制を部分的または全面的に遵守している。

Twitterは、これらの要件のいずれにも準拠していないと申し立ては批判している。Twitterは5日に提出された書類についてはコメントを差し控えたが、過去にはIT規制を遵守するつもりであると述べていた。

Ravi Shankar Prasad(ラビ・シャンカール・プラサッド)通信情報技術相は先週の会見でこう述べた。「インドは、すべてのソーシャルメディアプラットフォームのビジネスを歓迎しています。ラビ・シャンカール・プラサッド、または首相、誰を批判しても構いません。問題なのは、ソーシャルメディアの悪用です。彼らの中には、我々は米国の法律に縛られているという人もいます。インドで事業を行い、大金は稼いでいるが、米国の法律が適用されるという立場を取るのでしょうか。これは明らかに許容できません」。

免責措置が剥奪されると、インドのTwitter幹部は、プラットフォーム上で好ましくないと判断されたコンテンツに関して、いくつかの刑事責任を問われる可能性がある。インド警察は諸問題に関し、同社またはその関係者に対して、すでに少なくとも5件の訴訟を起こしている。

デリー警察の特殊部隊は、2021年5月下旬にTwitterの2つのオフィスを突然訪問し、多くの人がそれを威嚇戦術と受け止めた。Twitterは当時「インドの従業員に関する最近の出来事と、当社がサービスを提供している人々の表現の自由に対する潜在的な脅威に懸念を抱いている」と述べ、インド政府に対し、新しいIT規則に準拠するための3カ月間の追加猶予を要請した。

WhatsApp(ワッツアップ)も、新IT規制に完全には対応していない。今回のIT規制では、暗号化されたメッセージングアプリの運営者に対して、法執行機関が問題のあるメッセージの発信者を「追跡」できる方法を導入することも義務付けられている。インドで5億3000万人以上のユーザーを抱えるWhatsAppは「トレーサビリティ(追跡可能性)」を可能にすることは国民のプライバシーに関する憲法上の権利を侵害するとして、2021年5月にこの要件についてインド政府を訴えた

Signal(シグナル)もまた、このトレーサビリティの要求に応じていないと報じられている。同メッセージングサービスは、コメントの要請に応じなかった。インドで数千万人のMessages / iMessageユーザーを抱えるApple(アップル)が、トレーサビリティの要件を遵守しているかどうかは不明だ。Appleはこの件に関してコメントを控えている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:インドTwitterSNS

画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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