インド政府は現地時間5月26日、WhatsApp(ワッツアップ)が同国の新しいIT規則に異議を唱えた訴訟は、新規制の発効を阻止しようとする「不穏当な土壇場の」試みであるとともに「明らかな反抗行為」だとし、Facebook(フェイスブック)傘下の同サービスは2018年10月以降、トレーサビリティーの要求について書面での具体的な異議申し立てを一度も行っていないと指摘した。
インドのRavi Shankar Prasad(ラヴィ・シャンカール・プラサッド)電子IT大臣は、26日に期限が切れるガイドラインの遵守をWhatsAppが拒否したことは「その意図を疑いようがない、措置に対する明らかな反抗行為」であると述べた。
WhatsAppは26日未明にデリー高等裁判所でインド政府を提訴し、世界第2位のインターネット市場である同国の新しいIT規則により、当局が人々のプライベートなメッセージを「追跡可能」にし、集団監視を行うことが可能になると主張している。
電子IT省によると、政府は「特にインドの主権、一体性、安全に関連する犯罪、公共秩序・レイプに関わる犯罪の扇動、5年以上の禁固刑に値する性的表現物、児童性的虐待物の予防、調査、処罰などの目的」で、メッセージの最初の発信者を追跡する必要があるという。
「このような犯罪につながる悪事を始めた者を発見し、処罰することは公共の利益につながります。多くの集団リンチや暴動事件で、すでにパブリックドメインにあるWhatsAppメッセージの内容が繰り返し拡散されていることは否定できません。だからこそ、誰が発信したかということが非常に重要なのです」。
インドは2018年、メッセージの発信者を追跡可能にするためのソフトウェア変更を展開するよう、WhatsAppに初めて提案した。この提案は、デマの流通により現実に複数の死傷者が出ていた中、WhatsAppがインドでの偽情報の拡散防止に取り組んでいた時期に行われた。同提案は、2021年2月に新規則の一部となった。
一方WhatsAppは、ユーザーに提供しているエンド・ツー・エンド暗号化はセキュリティや政策の専門家が以前から高く評価していたもので、世界中で20億人以上のユーザーが利用している同社がユーザーを特定できる情報を見つけることは不可能だと主張してきた。
インドは、フェイスブック傘下の人気インスタントメッセージングサービスにとってユーザー数では最大の市場だ。政府の推計によると、WhatsAppはインドで5億3000万人以上のユーザーに利用されている。
電子IT省は、インドでの企業活動はいかなる会社でも「国法の対象」であるとし、他の市場でも類似の、あるいはより厳しい規制が施行されたり提案されていると主張している。
同省は「インドが求めているものは、他の国々が要求しているものよりもはるかに少ない」と述べ、新規則の目的を疑うことは「無謀」であると付け加えた。
同省はさらにこう述べた。「WhatsAppは一方で、マーケティングや広告を目的として、すべてのユーザーのデータを親会社であるFacebookと共有するというプライバシーポリシーを義務づけようとしています。そのまた一方で、法と秩序を維持し、フェイクニュースの脅威を抑制するために必要な情報仲介企業ガイドラインの制定を拒否しようとしています」。
TechCrunchが最初に報じたように、電子IT省は26日にソーシャルメディア企業各社に書簡を送り、新ルールを遵守しているかどうか最新情報を求めた。この書簡の中で同省は、現地での懸念に対応するために職員が地元に常駐することを義務付ける新規則のコンプライアンスの一環として、企業が任命した担当者の情報(氏名と連絡先)を求めている。
「WhatsAppはインドの仲介企業ガイドラインがプライバシー権に反するものであると主張していますが、これは見当違いです。【略】インド政府は『プライバシー権』が基本的な権利であることを認識しており、国民にその権利を保証することを約束します」と同省は声明で述べた。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:インド、WhatsApp、プライバシー、SNS
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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)