インド最大のフィンテック「Razorpay」が約426億円調達、評価額約8511億円

インド最大のフィンテック巨人であるRazorpay(レーザーペイ)は、企業価値を4月の30億ドル(約3404億円)から75億ドル(約8511億円)へと2倍以上に増やし、急成長を見せつけるとともに積極的に提供サービスを拡大している。

現地時間12月19日夜、インドの決済サービスで市場をリードするベンガルール拠点のスタートアップは、シリーズFラウンドで3億7500万ドル(約426億円)調達したと発表した。今回のラウンドは、同社がこれまでに調達した総額を超える資金をもたらすもので、Lone Pine Capital、Alkeon Capital、およびTCVの3社がリードした。

最新ラウンドには既存投資社のTiger Global、Sequoia Capital India、GIC、およびY Combinatorも参加した。これまでの7年間で総額7億4000万ドル(約840億円)を調達したとRazorpayは述べている。

Razorpayは、中小企業や大企業の決済受付、処理、支払いを行うサービスを提供している。同社はネオバンキングプラットフォームも運営しており、そこでは企業向けにクレジットカードの発行や運転資金の貸付を行っている。他に90以上の通貨に対応した海外決済ゲートウェイも提供している。

その他同社が企業に提供しているサービスには、納税手続き支援、メールやインスタントメッセージで送付できる決済リンクの生成、さまざまな支払い方法に対応した自動更新サブスクリプションプラン、バーチャルアカウントとUPI IDを使った取引の自動照合などがある。

Razorpayが提供しているサービスは、インドではほぼ無名の国際決済の巨人Stripeと類似している。ここ数年同社は東南アジアのいくつかの国にも進出している。

Razorpayの取扱高は年間600億ドル(約6兆8084億円)に上り(2019年は50億ドル[約5674億円]だった)、800万社を超える顧客企業の中には、Facebook(フェイスブック)、Swiggy(スウィッギー)、Cred(クレド)、National Pension System(国家年金機構)、Indian Oil(インド石油)らがいる。2021年インドでユニコーンになったスタートアップ42社中、34社がRazorpayを利用している。

「当社の決済事業は伸び続けています。過去1年半に、ネオバンキングと融資に関する命題も達成しました」とRazorpayの共同ファウンダーでCEOのHarshil Mathur(ハーシル・マトゥール)氏はインタビューで語った。

「私たちの願いは、会社を始めた人がRazorpayに登録すれば、銀行口座開設から支払い、入金、給与支払いまで財務面のすべてを当社に任せられることです。他を探していろいろなツールを使う必要はありません」と同氏は付け加えた。顧客のビジネスが成長すれば、Razorpayも一緒に成長する、と彼は言った。

マトゥール氏とShashank Kumar(シャシャンク・クマール)氏(もう1人の共同ファウンダー)の2人(上の写真)はIIT Roorkee college(インド工科大学ルールキー校)で出会った。当時インドの中小企業はネット経由で送金を受けるために多くの困難に直面しており、既存の決済処理会社は彼らのニーズに対応することに目を向けていなかった。

企業価値を2020年の10億ドル(約1135億円)強から75億ドルへと引き上げたRazorpayは、今やインドで最も価値の高いフィンテックスタートアップだ。しかし、ここまでの道のりは容易ではなかった。

ファウンダーたちはスタートアップ設立後の数年間、銀行と一緒に仕事をするための説得に苦闘した。交渉は遅々として進まず、彼らは投資家たちに何度も同じ説明を繰り返しては絶望を感じたと以前のインタビューで回想していた。

「この7年間、Razorpayを顧客第一のテクノロジーサービス会社にするために休まず働いてきました。Razorpayチームが2014年以来捧げ続けているものがあるとすれば、それは再発明を止めないことです」とクマール氏は言った。

同社は提供サービスの拡充に焦点を絞るとともに、インドと東南アジアでの成長を加速するために600名以上を雇用する計画だ。

最近Razorpayは、パスワード、カード情報、住所など買い物客の個人情報を初めての購入時に保存し、次回その情報を同じ店だけでなく、Razorpayで決済している他の店で決済する時にも予備入力される機能を導入した。しかし消費者向けのネオバンキングサービスを提供するつもりはないとマトゥール氏は言った。

「消費者に焦点を当てた何かを提供する可能性はありますが、純粋な消費者向け機能からは2つの理由で距離を置いています。1つはその分野で他の会社が提供していないような大きな付加価値を与えらるものを持っていないこと、もう1つは、消費者向けビジネスに参入することで得られる大きなものが見えないからです」と同氏は語った。

RazorpayはIPOの準備も進めているが、少なくともあと2年半は上場するつもりはないと語った。

「急速に加速するインドのデジタル決済市場でオンライン決済をリードしているRazorpayは、常に新しい道を開拓しています」とAlkeon CapitalのゼネラルパートナーであるDeepak Ravichandran(ディーパク・ラビチャンドラン)氏が声明で言った。

「Razorpayが決済、バンキング、ソフトウェアのさまざまな製品通じてオンラインの売り手(既存の決済プロバイダーから長年虐げられきた)にシームレスなエンド・ツー・エンド体験を提供し、地理的な拡大も視野に入れている今、ビジョンの実現に向かって進み続けるマトゥール氏、クマール氏と彼らのチームと提携を結べることを大いに喜んでいます。これからの旅が楽しみでなりません」。

画像クレジット:Razorpay

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(文:Manish Singh、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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