暗号通貨ウォレットアプリ「Ginco」を提供するGincoは2月19日、日本マイクロソフトと提携し、ブロックチェーンサービス事業者向けにクラウド型ブロックチェーン環境「Ginco Nodes(ギンコ ノーズ)」を共同開発、提供していくと発表した。
Gincoは2017年12月に創業、2018年2月にはウォレットアプリGincoを開発し、提供を開始した。ビットコイン(BTC)をはじめとする15種類以上の暗号通貨に対応してきた。
ウォレット開発を通して、Gincoではブロックチェーンサービスを提供するためのシステム基盤を構築。ウォレットづくりで培ったブロックチェーンの鍵管理やAPI、ノードなどの技術をモジュール化して、2019年1月末から他のサービス開発事業者でも利用できるようにした。
これまで、ブロックチェーンサービスを開発する事業者にとっては、ブロックチェーンについての技術や知見が少ないことが課題となっていた。またサービス開発のためには、システム基盤から自社で開発する必要があり、コスト負荷もかかる。Gincoのプラットフォームを利用することで、事業者はブロックチェーンサービスの開発に必要な機能を、モジュールとしてすぐに使うことが可能になる。
Gincoでは「この1年間、ウォレット開発とそのアップデートに注力してきたのは、ブロックチェーン技術を使って実現できるはずのイノベーションをユーザーに届けるため。ウォレットを作ってユーザーに利用体験が提供できれば、ブロックチェーンの普及・発展につながると考えてきたが、2019年はインフラを提供することで、事業者を通して、より広いエコシステムづくりに取り組む」としている。
今回のマイクロソフトとの提携は、GincoがAzureパートナープログラムに参加する形となる。従来、ブロックチェーンサービス開発にともなう「ノード」の構築・保守・運用とAPI対応は、事業者各社が個別に行ってきたものだが、これをクラウドサービスGinco Nodesとして提供していく。
Ginco Nodesはフルノードで、組み込み型バックエンドSaaSとして提供される。構築や維持・運用に時間・コストがかかるブロックチェーンノードやトランザクション監視APIなどを開放。Ethereum、Bitcoin、XRPといった6種類のブロックチェーンで機能が活用できるようになる。これまでのウォレット運用では1年間システムダウンもなく、Gincoでは「算出される可用性は99.99%を超える」としている。また、日本リージョンからの提供となるため、「海外サーバー経由の他サービスと比較して、日本の事業者にとっては遅延が少ない環境で利用できる」という。
現在開発中のGinco Nodesは、ベータ版を3月初旬にローンチ予定だ。事業者がこれから立ち上げるサービスだけでなく、既存事業のブロックチェーンノードの乗せ換えも対象にしていく。
現時点でブロックチェーンゲーム「My Crypto Heroes」や「Etheremon」のノードとして採用が予定されているほか、DAppsブラウザ機能付きの仮想通貨ウォレット「Go!Wallet」の基盤ノード、ブロックチェーンデータ分析プラットフォーム「catabira」のデータ観測用ノードといったアプリ、ゲームやツールのインフラとして導入が予定されている。
Gincoでは、Ginco Nodesの提供により、事業者が小規模な実証実験やプロトタイプ開発を低コストで実現できるようサポートするという。すでに同社が事業者向けに提供している実証実験コンサルティングや技術開発支援サービスと組み合わせることで、ブロックチェーン関連事業の立ち上げ早期化を支援していく。
マイクロソフトとの提携に先駆け、2月13日には、仮想通貨取引所向けに業務用ウォレットサービスの提供も開始した。ブロックチェーンノードの導入・運用サービスや業務用ウォレット、事業者独自のユーザー用ウォレットの開発など、仮想通貨取引所を運営する事業者がサービスづくりに集中できるよう、インフラ支援を行う。
「これまではブロックチェーンに興味があり、新しい技術が好きな事業者とユーザーしか、恩恵を享受していなかった」とGincoではコメント。今後、「ふつうの事業者がサービスに取り組みやすくすることで、ふつうのユーザーも広く利用できるようにし、ブロックチェーン技術を真に社会実装する」ために、個人向けウォレットに加えて、B2Bの分野でも業界を盛り上げていきたいとしている。