ウルトラモバイルPCというカテゴリーを復活させたUMPC「GPD P2 Max」

GPD P2 Maxは中国・深圳のGPD社が開発・製造しているウルトラモバイルPC(UMPC)だ。UMPCといえば過去には、オンキヨー、工人舎、ソニー、東芝、富士通などの日本メーカー製が多く登場したが、しばらく新製品が途絶えていた。そこにGPD社が2016年に5.5型ゲーミングUMPC「GPD Win」、2017年に7型UMPC「GPD Pocket」を発売し、現在では主に中国の複数メーカーが参入し、再び活況を呈している。今回レビューする「GPD P2 Max」は、GPDのUMPCの現行最新モデルで、日本ではリンクスインターナショナルなどが正規代理店として販売している。

GPD P2 Maxの記事執筆時点のリンクスインターナショナルのAmazon販売価格は9万4009円

上位モデルはプロセッサーにCore m3-8100Yを搭載

GPD P2 Maxには、CPUに米インテル社のCeleron プロセッサー 3965Y(2コア2スレッド、1.50GHz)とCore m3-8100Y プロセッサー(2コア4スレッド、1.10~3.40GHz)を搭載したモデルが用意されている。

メモリーは8~16GB(LPDDR3)、ストレージは256~512GB(NVMe PCIe SSD)を搭載。ディスプレイは10点マルチタッチとスタイラスに対応する8.9インチ WQXGA液晶ディスプレイ(2560×1600ドット、340ppi、輝度300cd/平方m、sRGBカバー率100%)。ディスプレイヒンジ部には200万画素(1600×1200ドット)のウェブカメラが内蔵。通信機能はIEEE802.11a/b/g/n/ac(最大867Mbps)、Bluetooth 4.2に対応している。

今回リンクスインターナショナルが取り扱うCore m3-8100Y/16GB RAM/512GB SSDモデルを試用した

ボディーはマグネシウム合金製。本体サイズは213×149.5×14.2mm、重量は約650g。9200mAhのバッテリーを内蔵しており、バッテリー駆動時間は最大12時間が謳われている。インターフェースはUSB 3.0 Type-C(USB PD 2.0対応)、USB 3.0 Type-A×2、microHDMI、3.5mmヘッドセットジャックを搭載している。メモリーカードスロットは非搭載だ。

ACアダプター、USBケーブル、日本語キーボードシール、説明書が付属

冷却ファンの上に放熱口が設けられている

本体天面にはいっさいの装飾がない(下がヒンジ側)

ディスプレイは最大156度まで開けられる

USB 3.0 Type-A端子は左右どちらにも装備されている

ディスプレイの画面占有率は80.9%

キーボードは英語仕様。ただし前述の通り、正規代理店販売モデルには日本語キーボードシールが付属する

-(音引き)が独立しておらずカタカナ語入力時に不便

GPD P2 Maxのキーボードはキーピッチが17.5mm。7型UMPCのようにキーが密着していたり、極端に変態的な配列もない。実測約62×35mmと小ぶりだがタッチパッドが搭載されている点は評価できる。

しかし個人的にどうしてもなじめなかった点がある。それは-(音引き)が独立していないため、ファンクションキーと同時押しする必要があること。「コンピューター」などのカタカナ語を入力する際に音引きをワンプッシュで入力できないと効率がかなり低下する。次期モデルでは音引きを独立させることを強く要望したい。

音引きを入力するためには「Fn+I」を同時押ししなければならない

タッチパッドはジェスチャー操作に便利だが、個人的には音引きキーの独立を優先させてほしい

処理性能を計測するためにいくつかのベンチマークを実施してみたが、CPU、OpenGLベンチマーク「CINEBENCH R15.0」のCPUスコアは240cbに留まった。これは最新の薄型ノートPCの2分1~3分の1以下のスコアだ。GPD P2 Maxは低消費電力・低発熱を重視したYプロセッサーを搭載しているだけにベンチマークスコアは高いとは言えない。

しかし16GBのメモリーと、シーケンシャルリードで1617.61MB/秒、シーケンシャルライトで1581.88MB/秒のSSDを搭載しているだけに、体感速度はキビキビとしている。ブラウジング、動画視聴、オフィスアプリなど一般的な用途には十分なパフォーマンスだ。

なおバッテリー駆動時間を、ディスプレイ輝度50%、バッテリー残量6%までと言う条件でバッテリーベンチマーク「BBench」で計測してみたところ、5時間1分27秒という結果だった。カタログスペックの最大12時間を実現するためには、ディスプレイ輝度、処理速度などでかなり極端な省電力設定を施す必要があるだろう。

「CINEBENCH R15.0」のCPUスコアは240cb

 

「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」の「1920×1080ドット/標準品質」設定時のスコアは1548(設定変更を推奨)

「ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ ベンチマーク」実行中の本体底面の温度は最大43.6度(室温26度で測定)。ボディーは小さいが高負荷時でも発熱は比較的低めに抑えられている

使い勝手でもうひとつ気になった点がある。ウェブカメラがディスプレイのヒンジに埋め込まれているため、顔を下から見上げる構図となり、ディスプレイの正面に顔が収まるように調整するとボディーが見切れてしまうのだ。ビデオ会議用途に使うのならウェブカメラを別途用意することをお勧めする。

ウェブカメラはディスプレイのヒンジ部分に内蔵されている

顔が正面に収まるようにディスプレイの角度を調整すると、ウェブカメラの下側がボディーで見切れてしまう

キーボード配列の弱点はキーカスタマイズソフトでカバー

現行最小のMacBookであるMacBook Airの画面サイズは13.3インチ。12インチのMacBookはすでに現行製品から外れている。UMPCというカテゴリーの製品はWindowsユーザーならではの特権だ。

GPD P2 Maxは、ハードウェアの質感、ディスプレイ画質、必要十分なパフォーマンスと、作りがこなれている。キーボードの配列に難はあるが、「KeySwap for XP」などのキーカスタマイズソフトを使えばその弱点をカバー可能。このカスタマイズさえ面倒でなければ、常に携帯できるサブ機として活躍してくれるはずだ。

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TechCrunch Japan

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