アイディアを所有することに法的権利を与えることが、意図せざるばかげた結果を生むことがある。「大ばかな特許がスモールビジネスを破壊している」と、NBAダラス・マーベリックスのオーナー、Mark Cubanはかつて私に言った。スタートアップのおよそ1/3が特許侵害で脅されており、その多くがスモールビジネスを脅して示談に持ち込むことだけを目的として設立された組織(いわゆる「特許ゴロ」)による。オバマ大統領は今日(米国時間6/4)午前、国際的に嫌われている企業体に対していくつかの非常に具体的な大統領令を発動する決定を下した。
背景を少し説明した後、ばかげた法の乱用を阻止する3つの方法を挙げる。
特許囲い込みの歴史
特許ゴロ、あるいはもっと外交的正式名称である特許係争団体[Patent Assertion Entities (PAE)]は、知的財産を蓄積して他の脆弱なスモールビジネスを脅して示談に持ち込むことのみを目的とするダミー会社である。
「彼らは自分では何ひとつ生産していない。他人のアイデアを利用してハイジャックし、金をゆすり取ろうとしているだけだ」と、オバマ大統領は今年のGoogle+ハングアウトで明言した。
サンタクララ大学の研究によると、特許裁判の推定61%が特許ゴロによるもので、訴訟の76%が15社以上を訴えている。これは言うなれば訴訟マシンだ。
知的財産の囲い込みは、アメリカで多くの偉大なイノベーターたちが主張してきた由緒ある伝統だ。ライト兄弟は補助翼(翼につけられた着陸時に伸びる小さなフラップ)を持つ飛行機を商品化する者は誰でも訴えると脅した。「1917年に政府が介入し、ライト兄弟に特許をライセンスするよう命じたことで、ようやく飛行機のイノベーションが本格的に始まった」とスタンフォード法科大学のマーク・レムレー教授は書いている。
よって、過激な特許囲い込みに対する政府の介入は、アップルパイ並みにアメリカンなのである。
ばかげた乱用を阻止する3つの試み
1. 機能クレームの範囲を狭める – 多くの恥知らずな会社が、とんでもなく広い範囲のイノベーションの所有権を主張する。Amazonが「ワンクリック購入」ボタンの特許を取得しようとしたことは有名だ。Acacia Researchという特許ゴロは、インターネット経由で医療画像を送信することの所有権を主張した。オバマ氏の大統領令は「発明の範囲を、ある目的を果たす〈あらゆる〉方法ではなく〈特定の〉方法に限定しようとしている」と、電子フロンティア財団がこの大統領命令に関するブログ記事で説明している。
「官邸がソフトウェアの機能クレームに注目していることは大変喜ばしい。特許ゴロによる広すぎる特許係争の多くは、これに起因していると私は考えている」とレムリー教授が私宛のメールで語った。
2. エンドユーザーを巻き込む – 時として特許ゴロにとって、彼らが所有権を主張する製品を使っていると言って企業の不意をつくだけの方が簡単なこともある。例えばLodsysは、ユーザーに「クリックしてアップグレード」させているアプリデベロッパーを脅す暴力的訴訟を続けている ― AppleとGoogleが提供している機能だ。
当然Appleは自社ユーザーを守るためにこれに介入し、未だに裁判は続いている。
3. 所有者を公表する – 特許ゴロは法の抜け穴を使って審査を回避し、誰が実際にその知的財産を所有しているかを隠そうとするが好きだ。例えば、Intellectual Venturesは、特許権を主張するダミー会社を1000社持っていて、司法審査を避けることが戦術であると自ら認めている。オバマ大統領の命令は「特許所有者は、特許庁に真の所有者の最新状態を報告する」ことを義務付けている。
追加のステップ ― おそらく不十分
オバマ大統領が宣言するだけでアメリカ特許の混乱状態を正すことはできない。法律の助けが必要だ。具体的には、彼は「敗者負担(loser pays)」を支持している。これは、特許ゴロが裁判で負けた時に支払い義務を負わせることを意味している。今年の2月に、〈革新的ハイテク企業を言語道断な法的争いから救う〉(SHIELD)法案がこの解決策を提案している。
情報の自由のタカ派にとってはこの命令でも全く不十分だ。Mark Cubanをはじめとする多くの人々が、ソフトウェア特許のほぼ全面廃止を要求している。ずる賢い特許ゴロが利用する法の抜け穴はどうやっても残る。MITのEric von Hippleは、デザインに多くの資金を必要とする発明(新薬やiPhoneなど)にとって、特許は殆ど価値を提供しないことを発見した。
何を信じるにせよ、この大統領令が正しい方向への一歩であることは間違いないようだ。
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(翻訳:Nob Takahashi)