Kinspire(キンスパイヤー)という新しいスタートアップは、子供たちが夢中になる活動を保護者が簡単に見つけらるよう手助けしたいと考えている。それも画面を使わない活動だ。保護者や学校教師がともに吟味した数百種類の活動が紹介されているこのアプリは、新型コロナウイルスの大流行によって多くの家庭がソーシャルディスタンスの確保を要請され(The New York TImes記事)、普段どおりに子供同士が一緒に遊ぶ機会やその他の活動が奪われた時期に迎えられた。今や何百万もの小学生たちは、長時間オンラインで過ごし遠隔学習を強いられている。
このように子供のスクリーンタイムが急激に増加している現状を受けて、保護者たちは、できればオフラインで、子供たちが夢中になれる新しい活動を模索するようになった。
「親として、私たちの生活にはKinspireが必要だと感じ、開発しました」と、理学博士で2児の父であり、Kinspireの創業者兼CEOのRob Seigel(ロブ・シーゲル)氏は説明する。「Kinpireができる前は、ウェブサイトやソーシャルメディアで活動を探して子供に勧めるのが、大変なストレスでした。そうした苦労の挙げ句、子供は決まって「やらない」と言います。Kinspireなら、ここだけで、子供がやりたい遊びを自分で探すことができます。パパが面白そうだと思うものではなくてね」と彼は話していた。
また彼は、遊び方の解説や必要な材料も、このアプリだけでわかるようにしたいと考えた。そしてアメリカで自宅待機が始まったころ、シーゲル氏は仲間を集め、アプリを作り上げた。
ローンチ時点で、Kinspireには画面を使わない活動が350以上紹介されている。ここには、ナショナル・パブリック・ラジオのポッドキャスト「Wow in the World」(世界の驚き)で放映されている実践型のSTEM(理工系)教育番組「Tinkerclass」(ティンカークラス)の活動も含まれている。この番組は、家にある日常的な物を「ティンカーする」(いじくりまわす)ことを子供に奨励するものだ。現時点で、これらのコンテンツはすべて無料で利用できる。
Kinspireコミュニティーは、最初にアプリでプロフィールを登録した後、「活動を追加」機能で活動の検索ができるようになる。シーゲル氏によると、内容は、AIモデレーション・サービスと人間による審査を組み合わせて厳選しているという。
初めてKinspireアプリを開くと、Instagram(インスタグラム)のような縦型の画像のフィードが現れる。ただし、そこにあるのはアーティスティックな写真やネタではなく、いくつもの面白いお勧めの遊びや活動が、スクロールで閲覧できるようになっている。それぞれの活動のカードには、Kinspireコミュニティーが撮影した写真が添えられている。コミュニティーには、学校教師、活動クリエイター、保護者、介護士などが参加している。
Kinspireの初期から参加しているクリエイターには、@naturallycuriouschildrenのNicole Roccaro(ニコール・ロッカロ)氏、@entertainmytoddlerのKari McManamon(カリ・マクマナモン)氏、@makethingsbox_のViviana Maldonado(ビビアナ・マルドナド)氏、@totsonlockのKira Silvera(キラ・シルベラ)氏が名を連ねている。
保護者は、年齢、屋内用か屋外用か、準備時間、保護者の立ち会いがどれほど必要か、活動のタイプ、必要な材料、どれだけ散らかるか(このあたり、子を持つ親が作ったのだなと感じさせる)といった項目でフィルタリングして、お勧めの活動を探すこともできる。
後で試してみたいお気に入りの活動を保存しておくことも可能だ。
Kinspireのひとつの活動を終わらせた子供には、創造的または科学的な工作、自然探索、ごっこ遊び、料理、算数、音楽、マインドフルネスなどなど、多岐にわたる内容に応じてアプリ内のご褒美が贈られる。ご褒美の中には、デジタル・キャラクターの記章としてプロフィールに表示されるものもある。また、家で折り紙のキャラクターの作り方が印刷できるようになるご褒美もある。
このアプリは、ホームスクールや遠隔学習で学ぶ子供や、自宅待機の初期段階で憔悴してしまった子供のための新しいアイデア探しに苦労している家族にも役に立つ。
同社は、プレミアムなサブスクリプションプランを追加して収益化を図ろうと考えている。サブスクリプションを購入した保護者は、個々の活動クリエイターから、自分たちのためのオリジナルの活動をKinspire内で提供してもらえるようになる。またこの収益の分配金が、パートナーであるクリエイターの収入源にもなる。
さらにKinspireでは、活動の中で物が買える仕組みにも取り組んでいるも。これはテスト期間中にもっともリクエストの多かった機能だ。これが実現すれば、保護者は活動に必要な材料をAmazon(アマゾン)やら方々のショップで買い集めることなく、すべてKinspireで直接揃えられる。Kinspireは、そこから手数料を徴収する。
デンバーとニューヨークを拠点とするKinspireは、新型コロナ禍の最中、テクノロジーや子供の遊びに関する経歴を持つ仲間たちと、2020年5月に創設された。
創業メンバーのSara Berliner(サラ・バーリナー)氏は、Y Combinetor(ワイ・コンビネーター)が支援する新しいインタラクティブな動画プラットフォームでありクリエイター向けツールでもあるHellosaurus(ハローザウルス)のアドバイザーを務めている。Kinspireを創設する以前に、彼女は子供向けIPスタジオStar Farm(スター・ファーム)を共同創設し(2002年〜2008年)、現在はIngage(インゲージ)となっているScrollMotion(スクロールモーション)でKids & Family(キッズ・アンド・ファミリー)グループの立ち上げと開発を行っていた(2008年〜2012年)。さらに、Peekaboo Barn(ピーカブー・バーン)を開発したNight & Day Studios(ナイト・アンド・デイ・ステューディオズ)の最高戦略責任者も務めていた(2012年〜2018年)。彼女は2児の母親でもある。
Kinspireのその他の共同創設者であるロブ・シーゲル氏、Dave Tarasi(デイブ・タラシ)氏、Nate Ruiz(ネイト・ルイース)氏は、HeadsUp(ヘッズアップ)、Nodin(ノーディン)、SolidFire(ソリッドファイヤー)、NetApp(ネットアプ)といったスタートアップで合わせて20年の経験を有する。CEOのシーゲル氏は、2人の男の子の父親であり、HeadsUpの共同創設者でCEO、NodinのCTOを経験。SolidFireとNetAppではソフトウェア・エンジニアとしても活躍していた。
このスタートアップは、現在は自己資金で運営されているが、シードラウンドを調達中だ。
KinspirのアプリはiOS版とAndroid版が、米国とカナダで無料ダウンロードできる。
画像クレジット:Sue Barr / Getty Images
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(翻訳:金井哲夫)