オンデマンドメンタルヘルスサービスのGingerが53億円調達、新型コロナで需要増

オンデマンドのメンタルヘルスケアを提供するGinger(ジンジャー)が新たなラウンドで5000万ドル(約53億円)を調達した。

今回の資金調達は、テクノロジーやヘルスケアサービスの企業に関心を向ける投資家にとってメンタルヘルスとウェルネスが次の大きな分野になっていることを受けてのものだ。

データ分析会社のCB Insightsによると、新型コロナウイルス(COVID-19)による需要の高まりを受けて、メンタルヘルスのスタートアップの資金調達件数は2020年第2四半期に過去最多となった。55社超が第2四半期に資金調達を行った。ただし、調達の規模は15%減の4億9100万ドル(約520億円)だった。それでも5億ドル(約530億円)近くの資金が第2四半期にメンタルヘルス業界に注がれた。

マサチューセッツ工科大学のスピンアウトで研究ベースの企業として2011年に設立されたGingerは、雇用主が運用する健康保険プランを通じて最大のメンタルヘルスサービスプロバイダーの1社になった。

Gingerのサービスでは、患者は会社のメンタルヘルスプランを利用する際の玄関口となるケアコーディネーターにアクセスできる。ケアコーディネーターは行動療法コーチングを訓練されている。デューク大学、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、ミシガン大学、コロンビア大学といったところで行動療法コーチングの認証を受けて心理学の修士号を取得し、Ginger独自の200時間に及ぶトレーニングを受けている。

こうした療法コーチングは、Gingerの大半の患者が受けるケアだ。同社のCEO、Russell Glass(ラッセル・グラス)氏によると、より深刻な状態の場合、Gingerはケアをコーディネートする専門家をあてたり、症状を緩和するために投薬が受けられるようにもする。

Gingerは2016年にオンデマンドケアサービスの提供を開始し、プラットフォームには今や何万ものアクティブユーザーがいる。同社は企業に従業員1人あたり、1カ月あたりでサービスアクセス料金を課金し、企業の福利厚生プランを通じて数十万人の従業員にメンタルヘルスサービスへのアクセスを提供している、とグラス氏は語った。

デルタ航空やSanofi(サノフィ)、Chegg(チェグ)、Domino’s(ドミノ・ピザ)、SurveyMonkey(サーベイマンキー)、Sephora(セフォラ)などを含む200社超が自社従業員に高品質のメンタルヘルスケアを提供するために費用対効果の高いGingerを利用している。声明によると、Gingerの会員はネットワークに加盟している特典として、企業が契約しているOptum Behavioral Health、Anthem California、Aetna Resources for Livingといった地域あるいは全国でメジャーなヘルスプランを通じてバーチャル・セラピーと精神医学セッションを利用できる。

「我々のミッションは供給と需要の不均衡を打ち破り、より多くのケアを提供することだ」とグラス氏はインタビューで語った。「究極的には我々は助けを必要としている人をGingerで助けられるようにしたい。あらゆる場所にいる人にアクセスできることは戦略の重要な一部だ。つまり、消費者直結を目指している」

差し当たっては、同社は調達した資金を今回のラウンドに参加した投資家Cignaのような企業とパートナーエコシステムを構築するのに使う。Gingerはまた、さらに多くの人にリーチするために政府から支払いを受けられるようになることを目指している。ゆくゆくは、ケアのコストを抑制するのに消費者直結が事業の大半を占めるようになる見込みだ。

同社はまた、自動化、そしてケアパスと機械学習を使って患者ケアのパーソナリゼーションを自動化するための自然言語処理にも投資する。

5000万ドルのシリーズDラウンドはAdvance Venture PartnersとBessemer Venture Partnersが共同でリードし、新たにCigna Venturesが、そして既存投資家からはLinkedIn会長のJeff Weiner(ジェフ・ウェイナー)氏とKaiser Permanente Venturesが参加した。Gingerの累計調達額は1億2000万ドル(約127億円)になった。

Gingerはメンタルヘルスサービスを提供するのに、雇用者給付プランの既存ネットワークや独立した保険会社と協業しているが、他のスタートアップは雇用者提供型のメンタルヘルスとウェルネスのプランを展開する資金を調達中だ。SonderMind(ソンダーマインド)では独立したメンタルヘルスの専門家が保険会社に請求しやすく、AbleTo(エーブルトゥー)は雇用者が診断されていないメンタルヘルスの状態をスクリーニングするのをサポートしている。SilverLight Healthはメンタルヘルスケアをデジタルでモニター・管理するために組織と提携している。

一方で、他のスタートアップはメンタルヘルスに関する多くのサービスを消費者直結で展開しようとしている。RoやHimsのような資金潤沢で企業価値が10億ドルもあるような企業はメンタルヘルスとウェルネスのパッケージを消費者に提供し、Headspaceは消費者向けと雇用者給付の商品を展開している。Realのような新参の企業は女性に特化したケアを提供している。

今回のラウンドに伴い、GingerにはS.I. Newhouse(サミュエル・アーヴィング・ニューハウス)氏の家族が経営するメディアとテクノロジーの持ち株会社Advanceの投資会社Advance Venture Partners(AVP)の創業パートナーDavid ibnAle(デイビッド・ アイビンエール)氏(LinekInページ)と、Bessemer Venture Partnersからデジタルヘルス投資の第一人者、Steve Kraus(スティーブ・クラウス)氏(LinekInページ)が加わった。

「AVPは、テクノロジーを使って大規模でグローバルな困難に取り組んだり従来の事業やビジネスモデルを一変させようとしている企業に投資する」とアイビンエール氏は述べた。「Gingerはそうしたことを行っている。世界中の何百万人もの人のために高品質でオンデマンドのメンタルヘルスケアを現実のものにすべく、Gingerの素晴らしいチームと提携することを嬉しく思う」

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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