法務系クラウドサービス「Holmes」を提供するリグシーは10月24日、500 Startups Japanを引受先とする第三者割当増資を実施したと発表した。調達金額は非公開だが、数千万円規模だという。
Holmesは、クラウド上で企業間の契約書の作成、締結、管理までを一括して行えるSaaSサービスだ。サービス上には弁護士が作成した様々なタイプのテンプレートが用意されているほかそれらの文言を自由に編集することでオリジナルの契約書を作成することが可能だ。
土地や建物の売り買い、担保の譲渡などの取引関係や、労務関係のものまで200種以上のテンプレートが利用できる。
作成した契約書はサービス上から直接Eメールを通して契約相手に送ることができる。受け取った企業がメールに記載されたリンクから契約書の内容を確認し、承認することで契約が締結される。
通常、紙ベースの契約書で締結を完了させようとすると、承認フローを含めて1〜2週間程度の時間がかかってしまうこともある。その一方、締結までのフローをすべてオンラインで完結できるHolmesを使えば、その時間を大幅に短縮することができる。
Holmesは2017年8月にサービスを正式ローンチ。リグシー代表取締役の笠原健太氏は、いざローンチしてみると意外な顧客層からの反響が大きかったと話す。
「当初は、コストや時間的な面から契約書の作成を避けてきた中小企業やスタートアップをターゲットとして想定していました。しかし、ローンチしてみると、意外にも大企業からの問い合わせが多かったのです」(笠原氏)
大企業ともなれば、様々な企業と契約を交わす機会も多い。しかし、その数が多ければ多いほど管理が煩雑になってしまう。その点、オンラインで契約書を締結でき、その後の管理もサービス上で行えるHolmesは大企業にもウケたようだ。
現在Holemsは、月額無料で契約書ごとに都度購入する「Freeプラン」、月額980円で契約書を作成し放題の「Standardプラン」、契約フローや権限の管理までを行いたい大企業向けの「Enterpriseプラン」を用意している(料金は個別見積もり)。
自身も弁護士である笠原氏に聞けば、契約書の作成を弁護士に依頼すると1通3〜5万円ほどの費用がかかるというから、この料金設定は十分に魅力的だと言えるだろう。
創業は「裁判をなくしたい」との想いから
今回の取材はリグシーのオフィスも兼ねる法律事務所で行った。そこはオフィスビルが立ち並ぶ赤坂見附の中心地にあって、巨大な円卓で取材をするなんていうスタートアップではちょっとないような、立派で豪華なオフィスだった。普僕は普段マンションの1室で取材をすることも多いものだから、最初、場所を間違えたと思い一度エレベーターを降りたくらいだ。
普通なら現在の成功に甘んじてしまいそうなものだけれど、その笠原氏がなぜスタートアップを立ち上げようと思ったのだろうか?
「もともと弁護士として自分の法律事務所を立ち上げたのは、『この世から紛争裁判をなくしたい』という想いからでした。裁判は費用もかかるし、それまで取引相手だった相手方との関係も崩れてしまう」と笠原氏は語る。
「紛争裁判が起こる一番の理由は、面倒くさいだとか作成の仕方が分からないなどの理由で契約書を作成しないことです。だから、今度は『契約書を作らない理由をなくしたい』という想いでリグシーを創業しました」(笠原氏)
それまではスタートアップ業界とはかけ離れた業界で暮らし、もちろんSaaSサービスの開発ノウハウもなかった笠原氏は、当初は外部企業と協力しながらHolmesをつくり上げ、2017年3月にリグシーを創業。現在は自社の開発メンバーも含む11名でリグシーを運営している。