昨日リクルートによる日本語訳付きMOOCsコンテンツについて書いたばかりではあるが、その対抗馬となるサービスについて紹介したい。
僕も以前“先生”として出演させてもらった、スクーが手がけるオンライン動画学習サービス「schoo(スクー)」。同サービスが東京大学とコンテンツ連携をする。4月より、schoo上にて東京⼤学 知の構造化センターが主宰する全学教育プログラム「東京⼤学 i.school」の学習コンテンツを完全無料で提供する。
日々蓄積される大量の知識をPCを使って分析し、知的発見やイノベーション、問題解決、意思決定のための方法論に落とし込むという取り組みである「知の構造化技術」。i.school では、東京大学が蓄積してきたを知の構造化技術を教育に活⽤することを目指して2009年に設立されたプログラムだ。大学の学部間を超えた履修カリキュラムとしてさまざまな講義やワークショップを運営している。これをスクーが2年間の運用ノウハウをもとにオリジナルの学習コンテンツを共同作成。4月16日から全8回で公開する。
2013年10月に3期目を迎えたスクー。代表取締役の森健志郎氏は、これまでを振り返って「1期目は自分たちが先生をやって欲しい人たちに声をかけてきた。そして2期目には出版社をはじめとして、さまざまなパートナーと組むことができた。3期目はインフラを目指したい」と語る。実は東京大学も2013年秋に一度先生として動画に登壇しており、その反応がよかったことから、今回の取り組みにつながっているのだという。
schooのインフラ化施策はいくつかあるが、その1つが「公認団体」の試験運用だ。これまで東京・渋谷の自社スタジオでのみ収録していたコンテンツを、外部に解放。放送を希望する企業や個人に対してそのノウハウを伝えた上、カメラなど機材を購入させたのち、公認団体という形で外部からの配信を許可したのだ。
森氏によると、「コンテンツ量を増やすことで、ソーシャルでの拡散が増え、よりユーザーが集まってくる。しかし1人のディレクターが対応できるのは月間20本程度が限界」とのことで、今後は公認コンテンツを拡大することで、2014年内に月間1000本のコンテンツ配信に挑戦するという。「(KPIとして)生放送の最大受講者数を追っていたが、最近ではもしかしたら(1回の生放送あたりの)限界値は低いかもしれないという話をしている。ユーザーにとって最適なコンテンツをロングテールでしっかり取っていかないといけない」(森氏)
schooのユーザー数は現在6万人弱で、そのうち月額525円を支払ってアーカイブなどを閲覧する課金ユーザーは3%ほど。同社は今後法人市場をターゲットにしている。「BtoCのマーケットは120億円。対してBtoBのマーケットは1000億円程度。企業研修用のコンテンツなど、お金を取れるポイントは多くある」(森氏)
冒頭にあるとおり、米国を中心にMOOCsに注目が集まっているのは事実。だが森氏は、MOOCsに対するスクーの強みを語る。「今のMOOCsは録画して、配信するだけの仕組み。完聴率、学習率は下がってしまう。学校に行けない人のための『補助輪』としての機能はある。だがschooはネットならではの経験を作れるのが強み。今では、ユーザーに質問を投げる頻度にあわせて、完聴率がどう変わるのかといったことも計っている」(森氏)