オンライン診断で身長や立ち姿勢など答えれば自分に合ったマットレスが作られ家に届く、SleepTechのyuniが5.5万円から販売へ

人は、人生の3分の1を寝て過ごしている。睡眠を支えるマットレスは重要なプロダクトだ。しかし、マットレスに対して「選ぶのが難しい」「実際に寝てみないと良し悪しがわからない」「捨てるのが面倒」といった悩みを持つ人は多いのではないだろうか。

2019年に設立したyuniはこれらの悩みや睡眠課題を解決し、1人ひとりに最適な眠りの提供を目指すSleepTechのスタートアップだ。yuniは2021年6月末から、AI技術を活用した無料のオンライン診断で、パーソナライズされたマットレスをつくることができるサービス「xSleep(クロススリープ)」の一般販売を始める。

利用者はxSleepのサイトで、身長や年齢から、立ち姿勢、寝姿勢、肩幅、筋肉量などについての質問に答えるだけで、診断結果から自分にパーソナライズされたマットレスが1週間程度で自宅に届く。これまで自分に合ったマットレスを探すためには、実際に売り場まで足を運び、試す必要があったマットレス選びをyuniはオンラインで完結できるようにした。

さらに2021年夏からは、パーソナライズされたマットレスをただ購入するのではなく、自宅で実際に試すことができるサブスク型のサービスも全国で始める予定だ。yuniの内橋堅志代表に話を聞いた。気に入れば買い取りもでき、物足りなければ再度パーソナライズしてもらうこともできる。

エンジニア×実家の寝具メーカーにおける経験

実家の寝具メーカーの風景、内橋氏の遊び場だったという

yuniの内橋堅志代表の実家は寝具メーカーであり、幼いころから寝具作りは身近なものだった。高校生になってからは新規事業にも関わるようになり、素材から製造、運送、リサイクルに至るまで、寝具に関する幅広い知識を得た。大学では機械学習などを専攻し、卒業後はエンジニアとして企業に就職。その後はフリーのエンジニアとしても働いていた。

「私自身が機械学習エンジニアであり、データ分析に強みがあります。また、実家が寝具メーカーだったからこそ、寝具業界における人脈もノウハウもあります。このため、オンライン完結型のパーソナライズマットレスの開発・提供ができたのです」と内橋氏は話す。

マットレスのオンライン完結型パーソナライズに向け研究を行ってきた

寝具業界はレガシーな業界であり、マットレスなどのプロダクトは30年近く見た目も製法も変わっていないという。

内橋氏は「事業を始める前に、私は曖昧な感覚論ではなくデータドリブンな手法で、日本人に合ったマットレスを提案しようと考えました。研究を重ねる中で、『日本人』で一括りにするのではなく、1人ひとりにパーソナライズされたモデルを提供したほうが良いのではないかと考え直し、xSleepの開発に至ったのです」と振り返る。

オンライン診断でマットレスをパーソナライズ

質問を重ねて、パーソナライズしていく

xSleepの最大の特徴は、マットレスのパーソナライズがオンラインで完結する点だ。これまで業界内では、マットレスを個人に合わせて作るには「オフラインでの計測データが必要だ」と先入観があったという。

例えば、寝具のオーダーメイド企業がオフラインで取る代表的なデータは体圧分散とだ。体圧分散は簡単に言えば、マットレス上で体のどこにどれだけ圧力がかかっているのかということ。一般的にこのバランスが良いほど優れたマットレスだと言われている。

yuniはこれまでオフラインで計測していた体圧分散などのデータを、オンラインの質問で得た情報から予測するAI技術を独自開発した。年齢性別といった基本情報やライフスタイルなどから睡眠の傾向も予測できるようにしている。

この技術を活用したオンライン診断では現状、理学療法士と考案した質問などを含めて10個以上の質問を用意している。

「当たり前ですが男女でマットレスの構造は変わります。背骨の曲がり具合や寝姿勢、筋肉量などについても大きく影響します。これらに対する質問を重ねていくことで、1人ひとりのデータに基づくパーソナライズドマットレスの提供を可能にしています」と内橋氏は述べた。

xSleepのマットレスは組み立てを一本化

画像下部にある筒状のものがポケットコイル、上部の3×3に分かれているものがトッパー

xSleepでは自宅にあるマットレスに重ねて使えるトッパーのマットレスと、トッパーとポケットコイルのマットレスがセットになった2パターンを販売していく。

価格はそれぞれ税込み・送料込み・シングルサイズで、トッパーが5万5000円、セットが12万円を想定している。支払い方法はクレジットカード以外にAmazon Payなどにも対応する予定だ。

xSleepのトッパーは頭と腰、足の3つパーツに分かれている。さらに2段構造となっているため、1枚で計6カ所の素材や硬さなどを個人に合わせて変えることができる。

内橋氏は「自宅に届いたxSleepのマットレスは、数多の組み合わせの中から生まれた、その人しか持っていない製品になる可能性もあります」と説明する。

xSleepはマットレスの高い品質を実現するため、素材や組み立て、オーダーメイドなど寝具作りを専門とする国内外のパートナー企業10社以上と連携して生産している。内橋氏はこう説明する。

「我々はxSleepの組み立てを一本化している上、中間業者を排して『各メーカーが得意な領域に絞って発注する』ことを徹底しているので、高品質ながらも一般的なオーダーメイドマットレスより安価に提供することができるのです」。

サブスクで試せるマットレス

xSleepのトッパーを試せるサブスクサービスは現状、月々税込4000円ほどを想定しているという。具体的には利用者がオンライン診断をした後、パーソナライズされたマットレスが自宅に届き、それを数カ月単位で使うことができるというもの。自分に合っているか実際に寝て試すことができるのだ。

自分に合わないと感じれば、既存のトッパーを回収してもらい、再パーソナライズしたものでまた試せる。最終的には製品に納得してもらうことで、トッパーとポケットコイルのマットレスのセットを購入してもらう狙いだ。

内橋氏は「サービスとしてToo Muchな部分もあるかもしれません。ただ、マットレスの買い替えの判断ができない人のためにやっていきたいです」と話した。

内橋氏の実家の寝具メーカーは寝具リサイクルの特許を持ち、20年近くにわたり寝具のリサイクルを行ってきた。yuniは実家の寝具メーカーと業務提携をしており、その特許の使用権も得ている。これにより、通常の寝具は返品されれば廃棄するしかないが、yuniはサブスクサービスで回収したトッパーでもリサイクルできるようになっている。

さらにyuniでは、現在使っている自宅のマットレスを引き取って、新しいxSleepのマットレスと交換するプランも構想中だという。内橋氏は「xSleepは素材もリサイクル前提で作られており、SDGsにも配慮したブランドとして認知を拡大していきたいです」と力を込める。

しかし、内橋氏はマットレスを一方的にパーソナライズしていくことに躊躇もしているという。一般的に仰向けが正しい寝姿勢とされているが、うつ伏せや横向きで寝る人もいる。オンライン診断による結果は、あくまで現在の寝方に合わせたものになるため、正しい寝姿勢へと導くことはできない。

内橋氏は「今後は継続的に睡眠データを取得できるデバイスを開発し、そのデータから正しい睡眠に導きつつ、変化に合わせて最適なマットレスを提供できるブランドを目指して研究を続けていきます」と語った。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:yuniスリープテック日本人工知能サブスクリプション

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TechCrunch Japan

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