オンライン通販の米Boxedが日本のイオンと提携しアジア進出

バルクサイズ(大容量)グローサリーを販売・配達するニューヨーク拠点のオンライン小売Boxed(ボックスド)は、アジア最大のスーパーチェーン事業者Aeon(イオン)と提携してアジアに進出する。

「ミレニアル世代のためのCostco(コストコ)」と称される米国での消費者向け事業とは異なり、Boxedはまだ初期段階にあるSaaSをマレーシアのイオンにエクスポートする。タイアップの一環として、Boxedはイオンのデジタルトランスフォーメーションをサポートするためにエンド・ツー・エンドのeコマースソリューションを構築する。Boxedは取引金額の公開は却下したが「数千万ドル(数十億円)」だと述べた。

人口3000万人超のマレーシアがBoxedのアジア初進出地となる。マレーシアは日本企業のイオンにとって日本国外で最大のマーケットだ。イオンはマレーシアで1万人超を雇用していて、パンデミック中にバーチャルモールを通じて同国でさらに雇用することを約束した。

Boxedのテクノロジーを使って、イオンの顧客はフレキシブルに自分でアイテムの数を決めて、自宅への配達をオーダーできる。Boxedはアジアでラストマイル配達を提供する予定はないが、その代わりローカルの配達サービスを活用する。たとえばGrabはパートナー候補だ、とBoxedの共同創業者でCEOのChieh Huang(チー・ハン)氏はTechCrunchとのインタビューで述べた。

アジア進出

共通の友人を通じてハン氏はイオンに接触した。イオンは263年前に日本で創業され、現在は14カ国2万1000カ所で衣料チェーン、コンビニエンスストア、総合小売店などを展開している。

イオンとの協業は当初困難だったとハン氏は語った。タイムゾーンが異なるだけでなく、イオンは巨大であることから社風も違った。実際に顔を合わせてのミーティングや国際電話を幾度となく重ね、徐々にギャップを解消した。

両社は他の東南アジアマーケットでの協業機会も模索している。Boxedは消費者ビジネスを地域に拡大するよりも、地元の小売事業者にソフトウェアをライセンス貸しすることで企業相手の事業路線を維持するつもりだ。東南アジアのeコマース業界ではすでにShopee、Lazada、Tokopediaといった事業者がしのぎを削っている。

従来型小売店のデジタル化

イオンモール(画像クレジット:イオン)

今回のSaaSディールの前に、イオンはBoxedに投資していた。2018年にイオンは、Boxedの小売デジタル化のノウハウを取り入れようと同社の1億1100万ドル(約116億円)のシリーズDをリードした。Boxedが選ばれたのは、サプライチェーンやユーザーの購買エクスペリエンスを完全にコントロールしているJD.comやAmazonと協業していたeコマースオペレーターの1社だったからだとハン氏は考えている。

Boxedはまた自前の倉庫ロボットも開発している。というのも「ロボットを買うよりもより安くで作ることができるからです」とハン氏は述べた。「ロボットの大半が環境をコントロールできないためにかなり高度化されています。当社は配送センターを持っていて、Lidarなど多くの高価な要素を取り除くことができます」

さらに同社の「ボックス」モデルは増える商品配達の送料を平準化するのに役立ち、プラットフォームに価格面でのアドバンテージを提供すると同氏は話した。

Boxedの未来

2013年創業のBoxedは700万人の登録ユーザーを抱える。米国で500人を雇用し、いまや年間売上高は数億ドル(数百億円)だ。

同社はこれまでに2億7000万ドル(約283億円)を調達した。最新ラウンドは2018年であるため、同社はほとんど表に出てきていない。この期間、同社は小売ソフトウェアソリューションの微調整に注力していた。同社にとって2つめのソリューションであり、より収益性が高い。同社のマージンは毎年増えていて、2021年は黒字化に近づいている、とハン氏は話した。そして他のeコマース企業と同様、パンデミックを通じて消費者の需要は増大した。

上場については「常に気にかけています」とハン氏は話した。「当社がどれくらい黒字化に近づいているか、多くの人が驚くでしょう」。

2020年9月にロイターはBoxedが「身売りか、バリュエーションが10億ドル(約1047億円)にもなる特別買収目的会社との合併を通じた上場」を検討していると報じた。それについての同社の反応は明確ではなかった。

「オンラインへシフトした結果、当社のマーケットプレイスと新しいSaaS事業での成長を加速させようと、当社との提携を模索する多くの企業から問い合わせを受けました。長期的な成功を考えながら、当社はそうしたオプションを熟慮しています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Boxedイオンeコマース

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。