オーストラリア人起業家、Wrightは自分がBitcoinの発明者Satoshi Nakamotoだと名乗りでた。しかしテクノロジー・コミュニティーの多くのメンバーはこのニュースに懐疑的だ。
ストーリーは説得力が薄く、「証拠」はBitcoinの発明者、Satoshiが過去にサインした開発初期の産物のひとつを利用したにすぎないと考える専門家が多い。Wrightは過去にもSatoshiではないかと指摘されたことがあったが、その時点では否定していた。
WrightはSatsoshiであるという主張を3つのメディアに対して行った。 BBC、 Economist、 そしてやや異例だが男性向けライフスタイル誌のGQだ。
BBCは「〔Wrightの主張は〕誰がデジタル通貨システムの基礎となるアイディアを最初に考えついたのかという問題に関する長年の推測を一掃するものだ」とし、さらに「Bitcoinコミュニティーの著名なメンバーであり開発において中心的な役割を果たした専門家がWrightの主張が正しいと認めた。Bitcoin Foundationのチーフ・サイエンティスト、Gavin AndresenはWrigtの主張を肯定するブログ記事を公開した。またBitcoin Foundationの創立者の1人である経済学者、Jon MatonisもWrightの主張が正しいと確信している」と報じた。
しかし、Hacker NewsとRedditにはWrightの主張に疑問を投げかける証拠が数多く寄せられている。またAndresenはハックされたのではないかという疑いも出ている。
BBCとのインタビューでWrightはBitcoin開発の初期段階で利用されたデジタル鍵でメッセージに署名した。このメッセージは本物のSatoshiが作成したbitcoinブロックと不可分に結びついているという。
しかしHacker Newsの指摘によれば、Wrightが用いたサルトルのテキストは「〔過去に別人によって暗号化されたことがあるので〕blockchainのトランザクションからコピーすることが可能」であり「Wrightは現実には何ら暗号を復号した証拠を示していない。BBCはデジタル署名が真性であることを見たに過ぎない。つまりそのデジタル署名が実際に行われたのは数ヶ月、それどころか数年前かもしれない。そうでないことを証明するのは非常に難しいはずだ」という。
Hacker Newsのスレッドによれば、本物のSatoshiはBitcoinコミュニティーとの会話をこれまでもっぱらBitcoinメーリング・リストによって行ってきたという。つまりSatoshiが自分の身元を明かす気があるなら、メッセージを1通、このメーリング・リストで送りさえすればよかったはずだと指摘している。
Redditも同様に疑問を抱いている。 Satoshiが初期のBitcoinの開発者の1人でPGPのエンジニア、Hal Finney宛に送った史上初のBitcoinトランザクションを暗号化したのと同じデジタル鍵で、Wrightはジャン=ポール・サルトルの発言を暗号化してみせた。しかし用いられたテキスト中にはCraigの名前、現状、現在の日付などは含まれていない。本物のSatoshiであれば当然含めていたであろう、そうした最新のデータがまったく含まれていないことは、Wrightはデジタル鍵をなんらかの方法で入手することに成功しただけという推測を成り立たせる。
Wrightをインタビューした3つのメディアのうち、Economistだけは最終判断を保留している。
本物のSatoshi Nakamotoは100万Bitcoinを保有していると推定されている。これは4億5000万ドル(479億円)に相当する。もしWrightが実際にそれだけの額を保有しているのであれば、オーストラリアの税務当局による調査を受けることになるだろう。そうであればメディアを利用したキャンペーンは同情を呼び起こす上で有効なはずだ。
一方、懐疑派のPatrick MckenzieはGithubにこの問題に関する簡単な分析を寄せ、Wrightの主張を「根拠薄弱なでっち上げであり、まともな解析には数分も耐えられない。〔Wrihgtは〕システムレベルでBitcoinの暗号化システムに精通していることを示したが、Satoshiでなければ知り得ないような非公開の情報は何一つ明かされていない」と述べている。
〔日本版〕Mckenzieは上記Githubで、Wrightが署名したサルトルのテキストはサルトルの任意の一節ではなく、過去にBitcoinで暗号化されたことがあり、データがブロックチェーンに残っているものであることを指摘している。同時に、メディアの非専門家に自分がSatoshiだと信じさせるのは「2時間の準備で足りる」が「Gavin Andresenがどうして信じてしまったのかは謎だ」とした。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)