カナダ最高裁判所は2021年3月第4週、政府による炭素排出に課税する計画を合法であると裁定した。気候変動に焦点を当てているこの国のスタートアップにとって極めて大きい意味を持つ決定だ。
この裁定は、約2年にわたった法廷闘争に終止符を打ち、温室効果ガス排出削減技術を開発するカナダのスタートアップに対する投資と商業支援の基盤を作るものだと、世界最大級の公益事業・石油化学企業の投資家や起業家は述べている。
「炭素にかかる費用の増加は、カナダを脱炭素のブレークスルー技術のスケールアップや炭素捕捉などのソリューションの展開、産業の電化、電気分解による水素生成などの重要拠点にする可能性があります」と、大手エネルギー企業を代表してスタートアップを支援するファンドに関わる投資家はいう。
この2018年温室効果ガス価格づけ法案は、Justin Trudeau(ジャスティン・トルドー)首相が推進するカナダ気候政策の中心をなすものだ。同法案は全州が従うべき最低基準価格を設定しているが、州はさらに高い価格を設定することもできる。これまでに同国の13州のうち7州が、国の設定した「最低税額」を設定している。
その価格は1炭素トン当たり30カナダドル(約2620円)だが、2030年までに170カナダドル(約1万4830円)まで上がることが決まっている。この数字はカリフォルニア州民が州の炭素価格プランの下で支払う金額より少し高く、Northeastern Regional Greenhouse Gas Initiative(北東地域温室効果ガスイニシアチブ)が設定している炭素価格の約4倍だ。
この計画では、カナダ政府が課税した金額のほとんどが、温室効果ガス排出を削減するプロジェクトや技術の支援、および業界の持続可能な取り組みの推進に用いられる。
「気候変動は現実です。これは人間の活動による温室効果ガス排出が原因であり、人類の未来に深刻な脅威をもたらします」と、最高裁判所のRichard Wagner(リチャード・ワグナー)長官が判決文に書いた。
アルバータ州、オンタリオ州、サスカチュワン州の3州では、温室効果ガス政策の合法性に対する異議申し立てがなされており、アルバータ州では訴えが最高裁判所に持ち越され、国の価格政策の施行を停滞させていた。
障壁が取り除かれたことで、世界の起業家や投資家は、この炭素政策がカナダのスタートアップの未来を直ちに後押しすることを期待している。
「これは政府による根本的な支援と多額の資金調達の可能性を意味しています。気候変動緩和に取り組むテック企業の意義を立証、支援するであろう分野別開発に向けた包括的支援を望むなら、政府がその重要性を公言し、金の心配はいらないと言ってくれるほどすばらしいことはありません」とBeZero CarbonのファウンダーであるTommy Ricketts(トミー・リケッツ)氏はいう。「カナダのスタートアップにとってこれ以上の条件はありません」。
カナダ炭素税の恩恵を直接受ける企業の中には、廃熱発電を含む脱炭素プロジェクトを進めているKanin Energyや、現在、Xprize炭素コンテストに参加中で二酸化炭素をエチレンに変換する方法を研究しているCERT、おなじく二酸化炭素変換技術に取り組んでいるSeeO2などがある。
地熱技術のQuaiseとEavorや、カナダの輸送産業の電化に焦点を当てている企業も後押しを受けるだろう。
さらに別の分野では、Panetary Hydrogenのように水素生成と炭素捕獲を組み合わせることで海洋の脱酸に寄与しようとしている会社も好影響を受けるだろう。
「スタンドで売られるガソリンのことを考えてみてください。そこには追加料金がかかることになります」と世界最大級の石油・ガス会社のベンチャー部門で働く投資家が非公式な発言として語った。「クリーンなエネルギーは、間違いなく価格が下がります。そしてこの税金の行き先を考えてみてください。そのほとんどは政府によるクリーンエネルギー技術や気候変動技術会社への資金提供に使われます。つまり、炭素排出削減分野のスタートアップは二重に恩恵を受けるのです」。
カテゴリー:EnviroTech
タグ:カナダ、二酸化炭素
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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook )