カーボンオフセットに関する評価枠組みとデータを提供するSylveraが約36.4億円を獲得

英国を拠点とするスタートアップのSylvera(シルベラ)は、カーボン・オフセット・プロジェクトに関する説明責任と信頼性を高めることを目的とし、機械学習技術を利用して衛星画像やLiDARなどのさまざまな視覚データを分析する。同社が、昨年5月の580万ドル(約6億6100万円)のシードラウンドに続いて、3200万ドル(約36億4800万円)のシリーズAを迅速に完了させた。

このラウンドは、SylveraのシードラウンドをリードしたIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)と、ニューヨークに拠点を置くグローバルなプライベートエクイティおよびVC企業Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が共同でリードした。また、Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)、LocalGlobe(ローカル・グローブ)、および多数のエンジェル投資家もこのラウンドに参加している。

2020年に設立されたこのスタートアップは、現在、合計3950万ドル(約45億円)を調達したことになる。

シリーズAは、チームのさらなる拡大や技術面でのリーダーシップの強化など、さらなる事業拡大のために使用されるとしている。

また、このプラットフォームを拡大し、すべてのオフセットに対応できるようにすることも視野に入れている。

共同設立者兼CEOのAllister Furey(アリスター・フューリー)博士は、「市場は、気候変動に対して世界で最も強力なツールの一つです。しかし、人々が実際に良いことをしているプロジェクトに投資するインセンティブを与え、良い仕事をしているプロジェクト開発者に報いるためには、カーボンオフセットの品質を判断するための信頼できるデータが必要です。」と声明で述べている。

「そのため、私たちはボランタリーカーボン市場(VCM)のための最も正確な評価を構築しているのです。私たちはこの資金を利用して、対象範囲を拡大する予定です。そにれより、わたしたちの評価で、企業のサステナビリティリーダー、炭素取引業者、政策立案者が、カーボン・プロジェクトを評価し投資する際に、明確さと自信と選択肢を持つことができるようになります。こうすることで、何十億ドル(何千億円)もの資金を炭素の削減、隔離、除去に回すことができるのです。」と述べる。

Sylveraは、ウェブアプリとAPIで提供する評価について、顧客数を公表していないが、これまでの顧客は様々な業界にまたがっており、Delta Airlines(デルタ航空)、Cargill(カーギル)、CBL(Xpansivマーケット)、Bain & Company(ベイン・アンド・カンパニー)などが含まれるという。

また、「企業のバイヤー、トレーダー、取引所など、さまざまな顧客がいる」とも述べている。「我々の顧客は通常、ネット・ゼロを約束した大規模な機関であり、市場で最も大きなカーボンクレジットの買い手です」。

Sylveraの評価枠組みは独自のものだが、このスタートアップは、カーボンオフセット・データの信頼できる主要な情報源になるという目標を支えるために、プロジェクトの評価を行う方法の詳細を公表することを約束していると言う(重要なのは、直接的な対立を避けるために、カーボンオフセットそのものを取引しないことだ)。

「カーボン・プロジェクトの独立した、詳細かつ最新の評価」というのは、偽物のオフセットやグリーンウォッシュが横行する業界では立派な目標だが、実際に信頼を得るためには、その方法、データ、アルゴリズムについて、独立した、詳細かつ最新の外部検証が必要であることを主張している。

「私たちは、今後2年以内に、Sylveraを、あらゆる種類のカーボンオフセットに関する最も信頼できる情報源にすることを目指しています」と、同社は述べる。「信頼されるデータソースとなるためには、透明性を確保する必要があります。このため、私たちは、評価の枠組み、モデルの精度評価プロトコル、基盤となるモデルの精度数値を公開する予定です。また、今年後半には、世界中の主要大学のパートナー研究者とともに、先進的なバイオマス推論に関する査読付き学術論文を発表する予定です。」と付け加えている。

Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)のパートナーでSylveraの取締役であるCarlos Gonzalez-Cadenas(カルロス・ゴンザレス・カデナス)氏は、声明の中で今回のシリーズAラウンドについて、「うまく機能するカーボンオフセット市場なしには、世界の炭素排出量を減らすチャンスはないでしょう。カーボン・オフセットには毎年数十億ドル(数千億円)が費やされていますが、透明性や説明責任が欠けており、その結果、信頼も失われています。気候変動の緊急事態に対処するために必要な規模に達するには、信頼が絶対に必要です。独立系データプロバイダーであるSylveraは、世界有数の大企業や政府などからの需要が飛躍的に伸びているのを目の当たりにしています。彼らの仕事がいかに重要であるかを浮き彫りにしており、私たちはSylveraとのパートナーシップを拡大できることに興奮しています。」と語っている。

画像クレジット:Sylvera

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

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TechCrunch Japan

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