Appleが5年前に同社のアプリストアを立ち上げたときは、その今日の成功を同社自身が予測していなかった。それは、その後巨大な収益源となるものからキャリアたちを‘中抜き’し、Appleに110億ドルあまりの粗利益をもたらした(CEOのTim Cookが先月言った“デベロッパに支払った額は80億ドル”から逆算)。
昔のフィーチャーフォンの世界では、デベロッパはキャリアにぺこぺこして自分のアプリをプレインストールしてもらった。しかし今では、彼らは直接、Appleの審査過程やGoogle Playへアプリを提出する。
VerizonのVcastのように、アプリストアを作ったキャリアも一部にはある。でもそれらは、成功しなかった。Google PlayとiOS App Storeがアプリをダウンロードするメインのチャネルなのに、そこでキャリアがどうやって仲間に加わることができるのか?
そこで日本の第二位のキャリアKDDIは昨年、また一つアプリストアが増えるという策をやめて、約500のアプリのコレクションに対する会員制サービスを立ち上げた。そのサービスはAU Smart Passと呼ばれ、同社のAndroid機にプレインストールされている。これまで、月平均500万のユーザが一人当たり399円(4ドル20セント)使っているから、一年換算ではデベロッパがもらう売上の総額は2億5000万ドルになる。
これは、きわめてユニークなやり方だ。KDDIはデベロッパとパートナーしてアプリをAU Smart Passに置くが、そのときに、オマケのようなものを求めることが多い。たとえば日本でユーザ数1億2000万以上という人気のメッセージングアプリLineは、特製のステッカーを提供している。そのほかのアプリも、多くは有料だ。
KDDIは会費収入をデベロッパの各月のアクティブユーザ数に応じて分配する。アプリにアプリ内購入があってもよいが、その場合デベロッパの取り分はGoogle PlayやApple App Storeのように70%ではなく、80から90%だ。
“アプリに関して新しいビジネスモデルが必要だった。フィーチャーフォンからスマートフォンへのシフトを管理したかった”、合衆国でKDDIの海外モバイル事業開発を統括しているKazuhito Shimizuはこう言う。彼は同社の総額6000万ドルのベンチャーファンドも担当して、ニューヨークのタクシーと輸送関連のスタートアップHailoなどに投資をしている。
“これはアプリのためのNetflixみたいなものです”、と彼は言う。しかし心配なのは、Google PlayとKDDIのストアという二つのアプリストアがあるために、消費者が混乱しないか、という点だ。
NTT DocomoやKDDI、SoftBankなど日本のキャリアは、合衆国や西欧で、力関係がキャリアからAppleやGoogleへ移行していった過程から学べる立場にいる。
日本では、スマートフォンの普及率はまだ50%未満だ。でも日本にはものすごく洗練されたフィーチャーフォンの歴史や、ゲームとアプリのプラットホームがあり、後者のユーザ一人当たりの売上は今なお西欧市場を恥じ入らせる。
しかしそのような日本でも、アプリの流通は劇的に変わりつつあり、GREE やDeNAのような大手のモバイルゲームプラットホーム企業もスマートフォンの普及に対応しようと努めている。Lineの勃興が示すように、新しい勢力も育ちつつある。AU Smart Passは、そのような市場に進出しようとする大型デベロッパにとって、恰好の足がかりだろう。
このストアが使えるのは日本のみ、そしてAndroid携帯のみだが、KDDIはアジア市場への拡大を検討している。同社はまた、消費者が写真やファイルや音楽などを保存するためのクラウドストレージなど、そのほかのサービスも今すでに作り始めている。
“AU Smart Passは、日本進出を考えているデベロッパにとって、最初のマーケティングチャネルになりうるだろう”、と彼は言った。
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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))