キーボードの欠点が消えた新MacBook Pro 13インチ、Airとの差別化はやはり悩ましい

今回のMacBook Proの登場で、Apple(アップル)は、その歴史の中で最も不遇な部品の1つを闇に葬ることになった。最新の13インチモデルは、5年におよぶバタフライ式キーボードの失敗の連続に慈悲深く終止符を打ったのだ。

ここではそれ以上は踏み込まない。過去数年間にMacBookシリーズのモデルを購入したことがある人なら、私が何を言いたいかわかってもらえるだろう。固着して打てなくなったり、逆にランダムに入力されてしまうキーのことだ。競合のプレスイベントでライブブログの準備をしている際に、それが起こってかなり焦ったことが、少なくとも1回はあった。

アップルは、このバタフライ式の問題を何度も修正しようと試みた挙げ句、ついにそれを破棄し、基本に戻って昔からある信頼性の高いシザー式に戻った。私は今それで入力している。その結果、4年間使った私のマシンを買い換えようかと、真剣に検討することになった。正直なところ、そのマシンも、キーボード以外はまったく完璧だ。しかし、キーボードがあれなのだ。ずっと平面を叩いてタイプしているような感触しかない。

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今回の発表で、13インチのMacBook Proは、MacBookシリーズとしてシザー式キーボードを採用する一連のアップグレードの3番目、そしてその最後を飾ることになった。このキーボードは、アップルが大好きな「M」で始まる単語「マジック」を先頭に付けた名前で呼ばれる。文字どおりマジックとは言えないが、その改善には即効性があり効果は絶大だ。タイプの感触は、バタフライ式よりもかなり柔らかく感じられ音も静か。やはりストロークが1mmあるのが、手に優しい。

Touch Barから独立した専用のエスケープキーの追加など、他にも見るべき部分がある。Touch Barが万能というわけではないので、これは細かいことながら、歓迎できる改善点だ。

こうして私は、このレビューの最初の数段落をキーボードの話で費やしてしまった。バカげていると思われるかもしれないし、それがそこまで重要な話題なのかという疑問もあるだろう。しかし結局のところ、それを除けば、新しいMacBookのアップグレードは、かなり平凡なものになってしまう。それでも何も問題はないし、アップグレードは、たいていそんなものだ。しかし、新モデルに買い換えようかどうか迷っている人にとっては、このキーボードの改良が、強い動機を与えるものであることは確かだろう。

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本体の見た目は、以前のモデルとほぼ同じ。おなじみの金属製のユニボディデザインで、色はシルバーとスペースグレーから選べる。画面サイズも同じ13.3インチで、解像度は2560×1600のRetinaディスプレイだ。そこまでの仕様はMacBook Airと同じだが、このProの13インチモデルの輝度は500ニトであるのに対し、Airは400ニトとなっている。そのぶん明るく目にも優しいが、バッテリー寿命には、やや不利だろう。事前の噂では、画面が大きくなった16インチモデルと同様に、13インチから14インチになるのではないかとも言われていた。それによってAirとの差別化を図るというわけだ。しかし、少なくとも今回は見送られたようだ。

ポートの構成も、4つのThunderbolt 3(USB-C)(上位モデル)と、ヘッドフォンジャックで変わっていない。私たちにとって、日常の仕事をこなすための、頼りになるラップトップであるのは確かだ。私が唯一不満なのは、外観がAirとほとんど変わらないこと。Proの上位モデルなら、かろうじてThunderbolt 3ポートの数が異なる。Airは、999ドル(日本では10万4800円)から、Proは1299ドル(同13万4800円)からで、300ドル(同3万円)もの価格の違いが外観には現れていない。

もちろん重要なのは中身だ。私自身も母親にそう言い聞かせられながら育ってきた。奇妙なのは、Airは全モデルが第10世代のインテルCoreプロセッサーを採用しているのに対し、エントリーモデルのProは第8世代のものを搭載していること。上位モデルは第10世代だし、エントリーモデルも第10世代にカスタマイズすることは可能だ。もっともProは、エントリーモデルもクアッドコア(1.4GHz)なのに対し、Airのエントリーモデルはデュアルコア(1.1GHz)という違いはある。ちなみに、このレビューモデルは、2.0GHzで動作するクアッドコアの第10世代Core i5を搭載している。

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このモデルの価格は、エントリーモデルより500ドル(同5万4000円)高い1799ドル(同18万8800円)となっている。さらに200ドル(同2万円)を加えれば、2.3 GHzのCore i7プロセッサーを選択することも可能だ。レビューしたモデルは、GeekBench 4のシングルコア、マルチコアの各テストで、それぞれ5520と18228を記録した。同じテストでAirは、5244と14672だったから、CPU性能は明らかに高い。

このモデルは、16GBのメモリと512GBのSSDストレージを備えている。エントリーモデルで比べると、どちらも8GBのメモリと256GBのSSDストレージという仕様だけに、AirとProの境界はぼやけて見えてしまう。しかし、前者の最大メモリは16GB、最大ストレージが2TBなのに対し、後者はそれぞれ32GBと4TBで、カスタマイズの上限の違いは明らかだ。

その他の点でも、エントリーモデルでは、両機種のスペックは似通っている。しかしProは、その名にふさわしいパフォーマンスを発揮できるようにスペックを拡張できる。したがって、AirではなくProを選ぶ理由は、ビデオ編集やゲームなど、より強力なプロセッシングパワーを必要とするから、ということになる。その場合には、カスタマイズによって、Proらしさが発揮できるようにする必要がある。Proのバッテリー寿命は、Airの11時間に対して最長10時間とされている。新品の状態で、何時間か日常的な作業、仕事、音楽の再生などで使ってみた。しかし、毎日さまざまな用途で使い続ける場合を考えると、10時間というのはやや誇張した数字だと感じられる。その点に関しては、もちろんAirの11時間にも同じことが言える。

繰り返しになるが、13インチのMacBook Proの最大の欠点は、いろいろな点でMacBook Airとの製品ラインの切り分けが不鮮明なこと。しかも、Airはより薄く、より軽く300ドル(同3万円)も安い。Airに対して13インチのProを選ぶ意味は、13インチに対して16インチのProを選ぶ意味に比べると弱いと言わざるを得ない。

ほとんどのユーザーにとって、ほとんどの作業ではAirで十分だろう。しかし、それほど苦労せず、また金額的にも大枚をはたかずに、少しでも強力なパワーが欲しいという人にとって、13インチモデルは確実で安全な選択肢となるはずだ。今や、キーボードの問題も解決されたのだから。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

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TechCrunch Japan

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