5月22〜23日に開催された「Infinity Ventures Summit 2014 Spring」。会場に向かう途中で声を掛けてくれたクラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏から「実は次のプロジェクトはメイカーズ領域にチャレンジする」と聞いていたのだが、その詳細が明らかになったようだ。同社は6月2日、クラウドソーシングによるモノづくり支援プラットフォーム「メイカーズワークス」を公開した。
メイカーズワークスでは、製造業や建設業に携わる事業者とプロダクトデザイナーや機械、回路、建築、雑貨などのCAD設計者、オペレーターをはじめとした、モノづくりに関わるスキルを持つ全国のフリーランスとのマッチングの機会を提供する。クラウドワークスでは、「国内GDPの20%以上を占める製造業・建設業にリーチする。早晩に数億円規模に成長すると見込んでいる」と説明している。
吉田氏によると、このプロジェクトは2月頃から企画されていたものだという。クラウドワークス上では、すでに回路設計や3Dデータのモデリングといった、モノづくりに関する仕事の依頼が投稿されていたそうで、「ニーズは感じていた」(吉田氏)という。そこで実際にヒアリングしてみると、ある宝飾メーカーからは「宝石を固定するツメのデザインを広く集めたいが、社内デザイナーだけでは足りない」といった声が聞こえてきた。またある印刷会社からは、「これまでデザインのコンペをしていたが、デザインだけではなくてモノ自体を作って欲しい」と言われるなどしたことから、IT系業務が中心となるクラウドワークスとは分けたサービスを展開することになったそうだ。
現在はあくまで設計やデザインといった領域のみをカバーするが、将来的には対応するプロダクト領域やスキル、業務を拡大していくほか、モノづくりに関わるさまざまな事業者との提携を進める。メイカーズワークス上で企画、設計したプロダクトを、提携する製造施設で試作、量産までを実現することを目指すという。
月次の流通総額は億単位になる一方、単価はすでに下落傾向に
吉田氏は、メイカーズワークスの立ち上げ以外にもいくつかの話を聞かせてくれた。一部の内容はメイカーズワークスのプレスリリースにも書かれているのだが、クラウドワークスには現在、70業種16.5万人超のユーザーが登録している。クローズドベータ版サービスを開始した2012年3月から2014年5月までの累計発注社数は3万件で、仕事の予算総額は100億円。直近の月額での流通総額では1億円を超えているとのことだ。
ただ一方で、すでに単価自体は下落傾向にあるそうだ。これについて吉田氏は「価格下落は市場原理。クラウドソーシングだからという話ではない」。と説明する。吉田氏はKindleやSpotifyなどを例に挙げて「製造原価を考えるとものが売れない時代。今までは『(製造に)いくらかかるから、この値段で売る』という考えだったが、今ではコンテンツは数ドルで手に入るようになった。マーケットサイドから価格が付くようになっている」と語る。ではクラウドソーシングで単価の高い仕事を続ける方法はあるのか? 吉田氏はそのヒントが、クラウドワークスの「ありがとうボタン」にあると語った。
このありがとうボタンは、Facebookの「いいね!」ボタンのような機能だが、つまりはそのユーザー、そのユーザーの仕事に対して共感を集めた人の数を示すものだ。クラウドソーシングでは、こういった他者からの「共感」を価値にした世界がやってくるのではないかというのが吉田氏の考えだ。「たとえばクラウドワークスで10件の仕事を受けて、評価が高い人限定の『経験者向けマーケット』があってもいい」(吉田氏)