クラスター型分散データベースシステム開発のMemSQLが約54億円を融資で調達

多くの スタートアップが資金調達の活動を再開している中、急成長中のあるスタートアップが、キャッシュフローがプラスに転じつつある同社の株式を維持するため、多額のデットラウンドを完了した。そのスタートアップの名はMemSQLという。同社は、クラウド、ハイブリッド、オンプレミス環境を横断し、高速で移動する大規模なデータに対する問い合わせと分析を行うために利用されているリレーショナルリアルタイムデータベースを開発しており、顧客には、大手銀行、通信事業者、配車サービス大手、さらには新型コロナウイルス追跡アプリを開発している企業も含まれている。同社はこのたび5000万ドル(約54億円)の融資枠を確保した。CEOのRaj Verma(ラージ・ベルマ)氏は、この資金による「今後数年間は資本金を十分に確保できる」と述べ、IPOまたはプライベートエクイティによるイグジットを目指すと語る。

今回の融資枠はHercules Capitalから与えられたものだ。同社は約43億ドル(約4600億円)を管理下に置く、興味深い歴史を持つ企業だ。2012年当時はまだスタートアップだったFacebookにも投資している。ちなみにHercules CapitalのCEOは、2019年に起きた大学の不正入学スキャンダルで非難されている中心人物のひとりだった。

MemSQLは、その評価額を開示していないが、PitchBookからのデータでは約2億7000万ドル(約290億円)と評価された2018年の最後の3000万ドル(約32億円)の増資時よりも、大幅に高くなっていることをベルマ氏は認めた。

なぜ第三者割当増資ではなくデットフィナンスで資金を調達するのだろうか?同社はすでに、Y Combinatorをはじめ、Accel、Data Collective、DST、GV(Googleを所有するAlphabetのベンチャーキャピタル部門の1つ)、Khosla、IA Ventures、In-Q-Tel(CIAに関係したVC)およびその他多数の投資家たちからの支援を受けている。ベルマ氏はTechCrunchとのインタビューの中で、同社は今回のパンデミックが起きる前にこの調達活動を検討し始めたと語っている。

既存および新規の投資家から「資金調達ラウンドを行うための複数のオプション」が提示され、すぐに8通ほどの条件規定書が作成された。最終的に同社は、株式を譲渡するほど資金に逼迫していたわけではなかったために、主に融資枠を調達するルートを選択したのだ。そして融資枠が最善のオプションとなるような「現状好ましい」条件規定書が用意された。「私たちのキャッシュバーンは(100万ドルの単位で)1桁台です」と彼は言う、そして「私たちはまだ独立しています」と付け加えた。

同社の最近の業績は順調だ。2019年は75%成長し(2018年は200%)、その期間のキャッシュバーンは800万〜900万ドル(約8億6000万円〜9億7000万円)で、現在の年間収益は4000万ドル(約43億円)る。現在の顧客には、アルゴリズム取引のすべてにMemSQLを使用している世界最大級の銀行3行、大手通信事業者、マッピングプロバイダなどが含まれている。ベルマ氏は現在、具体的な顧客名について話すことは手控えているものの、これまでに挙げられた顧客には、Uber、Akamai、Pinterest、Dell EMC、Comcast などが含まれている。なおマッピングプロバイダについて、投資家であるGoogleが顧客かどうかはコメントを拒んだ。

また、現在のパンデミックがテクノロジー業界の一部の企業に大きな圧力をかけているとするならば、MemSQLはビジネスで力強い上昇を見せているグループの1つだ。

ベルマ氏は、これには複数の理由があると指摘している。第1に、同社の顧客基盤は景気後退や室内に閉じこもることを強制されることで打撃を受けている、旅行業界などの分野との強い関わり合いを持っていなかったこと。第2に、そのプラットフォームはレガシーアーキテクチャを考慮しつつ、ビジネスを継続するためにハイブリッド環境またはオールクラウド環境に移行する必要に迫られている企業にとって、現時点で役立つことが実際に厳密に証明されていること。そしてまた、True Digital(トゥルー・デジタル)のようなほかの企業が、新型コロナウィルスの蔓延に対処するために、MemSQL上に接触者追跡アプリケーションを構築していることなどが理由だ。

同社は、Oracle(オラクル)やSAPなどの大手企業が争う、非常に混み合った領域で活躍している。ベルマ氏によれば、同社の技術はそうした競争相手たちとは一線を画すものだと言う。なぜならそのハイブリッドアーキテクチャが違いを生み出し、さらに30倍もの速度改善を提供することが可能だからだ。前述のようにユーザーは1日あたり数百万件のイベントをサービスに投入することが可能で、同時にレコードをリアルタイムで問い合わせることができる。

また、競争力のある価格設定も大切な要素だ。「私たちは魅力的な代替手段なのです」とベルマ氏は言った。「今回の投資スキームはHerculesからの重要なコミットメントを表しています、そして、成長志向で組織的に支援されたテクノロジー企業に、さまざまな段階で資金を提供できる、当社の幅広いプラットフォームと能力の例を提供しています。私たちは、MemSQLの管理チームが運営面で達成した成果に感銘を受けています、そしてデータベース市場の有望な企業の1つとのパートナーシップを開始できることを、とても楽しみにしています」と、Herculesのシニア・マネージング・ディレクターであるSteve Kuo(スティーブ・クオ)氏は声明で述べている。

画像クレジット:Getty Images

原文へ]

(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。