最後に会社のトレーニングを受けた時を思い出してみてほしい。おそらく、そこから何かを学ぼうという気持ちよりも、早く終わってくれとイライラする気持ちの方が強かったのではないだろうか?(それは違うと言う人がいるとすれば、その人の気を疑ってしまう)。
JMI EquityとBDC Capitalから2700万ドルを調達したAxonifyは、トレーニング受講者の負担を軽減しながら、それが生む成果を高めようとしている。あなたはどれくらい短いトレーニングを望むだろうか?Axonifyのプログラムは1日あたり3分のトレーニングで、しかもそれはゲームのようになっている。この時点ですでに、オフィスに座って受講する1時間のビデオ・レクチャーよりも魅力的に聞こえるのではないだろうか?しかし、ここまで聞いてまだ納得できないとしても、悪いのはあなたではない。
そもそも、なぜ社員を教育するコンテンツが必要なのだろうか。それを理解するためには何よりもまず、企業の導入例を見てみるのが良いだろう。自動車パーツ販売の全国チェーンであるPep Boysでは、職場での事故が原因で実際に毎年何百万ドルもの費用が発生していた。そのような費用は”OSHA(職業安全衛生法)”関連費用とも呼ばれている。このようなコストが発生するのを避けるのは簡単だ。もし従業員が謙虚にも、床にこぼれた油をそのままにしておいたら?
Pep Boysはまず、700店舗のうち20店舗にだけAxonifyを導入することにした。こうすることで簡単にこのツールの効果を測定できる。そのプログラムが完了したとき、Pep BoysはOSHA関連費用を1500万ドル削減することに成功しており、それどころか、万引きによる被害も2500万ドル減らすことができたのだ。
Axonifyの興味深い特徴はおそらく、この教育プログラムは現在70代になるマーケッターの夫婦が考え付いたアイデアを元につくられたものだということだろう。OSHAのようなコストを削減するためにとった彼らの手法とは、従業員の心の中にある自意識過剰な部分を改めるというものだった。Axonify CEOのCarol Leamanは、このプロセスは3つのステップに分けられると説明している。
まず第一に、Axonifyのプログラムではコアとなるコンセプトが従業員ごとに最適化された間隔で何度も繰り返される。また、復習用のコンテンツが定期的に配信され、さらなる繰り返し学習で脳への定着を図る。最後に、Axonifyでは受講者からの回答とともに、その答えに対する受講者の自信の度合いも計測している。この背景にあるのは、答えに対する自信度と正解率との相関性を受講者に見せることで、自信過剰がどのような悪影響をもたらすのかということを学ばせるというアイデアだ。
Axonifyのゲームはどのようなデバイスでもプレイすることができ、PCからPOSデバイスまで様々な環境でプレイすることができる。Axonifyは昔ながらのアーケードゲームに似ているが、ゴルフゲームやCandy Crushのようなゲームを選ぶこともできる。
ゲームをプレイしている最中にキリのよいポイントまで到達すると、クイズが出題される。クイズの難易度や内容は従業員ごとにカスタマイズされている。クイズへの回答は強制ではないが、マネージャーはプログラムを管理するダッシュボードにアクセスでき、従業員のパフォーマンスを向上できる方法があれば、それを後から確認することもできる。
「従業員の教育という分野では、費用対効果を測定しにくいという問題がある」とJMI EquityのMatt Emeryは話す。
HRという分野には、問題に対する即効薬になると謳っている無数のサービスが存在していて、企業がそれに飽き飽きするのも無理はない。だが、LeamanとEmeryの両者は、Axonifyは他社の既存サービスに取って代わるものではないと主張している。繰り返しによって知識の定着力を伸ばすというコンセプトを社員教育プログラムに応用したものが、たまたま企業向けの教育プログラム市場には沢山あるというだけだ。
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