「Pokémon GO(ポケモンGO)」は米国時間8月26日、ソーシャルディスタンスを保ちながらゲームをプレイしやすくするための仕様変更を、恒久的に維持すると発表した。
この仕様変更は、新型コロナウイルスの蔓延に合わせて導入されたもので、ゲームプレイに欠かせない拡張現実の主要なランドマーク(ジムやポケストップ)にアクセスできる距離を、それまでの2倍にするというものだった。ポケモンGOを提供するNiantic(ナイアンティック)は、8月初めにこの仕様変更を解除したが、コミュニティやクリエイターからの反発を受け、数週間後に恒久的に復活させることにした。
Trainers – we’re looking forward to sharing our plans as a result of the task force on September 1, but one thing does not have to wait! From now on, 80 meters will be the base interaction radius for PokéStops and Gyms globally. (1/2)
— Pokémon GO (@PokemonGoApp) August 25, 2021
トレーナーのみなさん、9月1日にタスクフォースの結果として私たちの計画をお伝えするのを楽しみにしています。しかし1つだけ、お待たせさせずにお伝えしたいことがあります! 今後、全世界のポケストップとジムの基本交流半径は80mとなります。(1/2)
Pokémon GO
新型コロナウイルス流行前のポケモンGOでは、プレイヤーはポケストップやジムにアクセスするために、半径40メートル以内にいる必要があった。しかし、今回の恒久的な変更により、その半径は80メートルに拡大された。特に障がいのあるプレイヤーは、この変更によって、移動手段が限られている人でも、ゲームにアクセスできるようになったことを実感していた。ポケモンGOは、ARモバイルゲームの先駆けとして、ポケストップやジムのように現実世界の指定された場所に移動できないと、事実上プレイできない。それらの場所に、より遠くからアクセスできるようになったことで(例えば、車イスのユーザーが舗装された歩道から離れられなくても)、新たなプレイヤーにゲームを開放することができた。
ポケモンGOは長い間、現実世界の探索を促すゲームとして位置づけられてきたため、世界的なロックダウン(都市封鎖)はナイアンティックに固有の課題をもたらした。アクセス可能な距離を40メートルだけ伸ばしたり、ポケモンの出現数を増やしたり、より多くのポケモンボールを手に入れやすくするなど、小さな変更を加えることによって、ポケモンGOは自宅にいてもプレイしやすいゲームになった。
これらの変更は、ゲームを壊したり、冒険心を否定したりするものではなかった。そのため、特に現在のデルタ変異株が拡散しつつある状況を考えると、これらの好評だった変更を元に戻すという決定は、プレイヤーを困惑させた。財務面を見ても、このアプリは新型コロナウイルス流行の間に大きな利益を上げていることがわかる。2020年には10億ドル(1100億円)以上を稼ぎ出し、ポケモンGOが2016年に始まってから最高の収益を記録した。アプリ分析会社のSensor Tower(センサー・タワー)によると、この上昇傾向は2021年の上半期も続き、6億4200万ドル(約706億円)の収益を上げているとのこと。2020年上半期の4億7900万ドル(約527億円)と比較すると、消費者の支出が34%増加したことを示している。
Dear @NianticLabs your community needs you to address the recent in-game changes to #PokemonGO. #HearUsNiantic we love this game and the communities we've built together. This game thrives on inclusivity and diversity. Show us you understand that. pic.twitter.com/1N6EAaM5m2
— ZoëTwoDots (@_ZoeTwoDots) August 5, 2021
親愛なる@NianticLabsさま
最近の #PokemonGO のゲーム内変更について、コミュニティはあなたに再考を求めています。私たちはこのゲームを愛し、ともに築きあげてきたコミュニティを愛しています。このゲームは包括性と多様性の上に栄えてきました。あなたがそれを理解していることを示してください。ZoëTwoDots
ナイアンティックが交流半径を縮めた後、ポケモンGOのコンテンツクリエーターとコミュニティメンバーは協力して同社宛てに公開書簡を書き上げ、Twitter(ツイッター)ではハッシュタグ「#HearUsNiantic」がトレンド入りした。この公開書簡では、交流半径を広げることで、ゲームがより安全でアクセスしやすくなり、煩わしさが減ると訴えていた。
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一部のプレイヤーは、8月5日に「Pokémon No Day(もうポケモンはやらない)」と呼ばれるゲームのボイコットを組織した。同日、ナイアンティックは、ポケモンGOコミュニティに宛てた回答書を発行した。
「人々が探求し、運動し、安全に人と一緒に遊ぶように促すことが、ナイアンティックの使命であることに変わりはありません。プレイヤーのみなさまの健康と幸福は、私たちの最優先事項です」と、ナイアンティックは声明で述べている。これらの懸念に対処するために、同社は「社内部門間協力チーム」を結成し、著名なポケモンGOコンテンツクリエーターを招いてコミュニティからのフィードバックを共有した。交流半径の拡大は、このタスクフォースの最初の成果だが、9月1日にはさらに多くの調査結果を共有すると、ポケモンGOはツイートしている。
TechCrunchは、コミュニティからの好意的な反応や収益の増加をもたらし、新型コロナウイルスの流行が進行中であるにもかかわらず、なぜ最初に変更を元に戻すことを選んだのかとナイアンティックに尋ねたが、同社はコメントを断った。
ソーシャルメディア上でプレイヤーから目に見えるネガティブな反応があったにもかかわらず、Sensor Towerによれば、ボイコット運動の前後で、ポケモンGOの消費者支出やアクティブユーザー数に変化は見られなかったという。しかし、App Storeのレビューでは、否定的な意見が大幅に増加した。
現在では拡大された交流半径が復活しているものの、一部のプレイヤーは依然として不満を感じている。というのも、ナイアンティックが6月にこれらの変更をもとに戻す計画を発表した後、コミュニティリーダーがこのような意見を表明していたからだ。
「私たちの意見を聞いてもらうために、なぜこのような大きなコミュニティ運動が必要だったのでしょうか?」と、クリエイターのZoëTwoDots(ゾーイトゥドッツ)氏は、YouTube(ユーチューブ)の動画で語っている。
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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hirokazu Kusakabe)