コロナ禍で苦しむ製薬会社のDXを進める、業界特化型デジタルマーケのフラジェリンが1.5億円調達

長引くコロナ禍を背景に、医療従事者を顧客とする製薬会社は苦境に立たされている。一般市民よりもはるかに厳しい感染拡大対策を行う医療機関では、MR(医薬情報担当者)による訪問営業を受け入れないケースが増えてきているからだ。

そんななか、製薬・医療関係企業向けのデジタルマーケティングツール「Shaperon(シャペロン)」を手がけるフラジェリンが順調に歩を進めつつある。同社はALL STAR SAAS FUNDを引受先とする第三者割当増資によって1億5000万円を調達したことをTechCrunch Japanの取材で明かした。

シャペロンは製薬会社がもつ医療従事者(顧客)の情報を集約・蓄積し、営業やマーケティング活動の生産性向上とデジタル化をサポートするサービスだ。具体的な機能としては、医療従事者とのコミュニケーションのデータ化と顧客管理、OutlookとGmailの連携によるメールの送受信の集約、メール開封やファイル閲覧履歴のトラッキングなどがある。

製薬業界には、顧客のメールアドレスがMR個人の資産となっていて企業として活用できないことや、業界特有のルールやコンプライアンスの制約から、他の汎用マーケティングツールを導入しにくいなどの課題がある。フラジェリン代表の阪本怜氏はそこに目をつけ、自身も薬剤師であり、製薬メーカーのグラクソ・スミスクラインでマーケティング戦略立案やデータ解析に携わった経験を活かし、業界の課題を解決するためにシャペロンを開発した。

フラジェリンにとってコロナ禍も追い風だった。阪本氏によれば、製薬業界はこれまでにも営業・マーケティングのDXで遅れをとっていることを課題として認識していた。しかし従来のアナログなやり方でも長い間ビジネスが成り立っていたことから、その改革の優先順位は低いままだった。そんななか、新型コロナウイルスの感染拡大により、訪問営業の自粛や患者の受診控えによる薬の需要減などの逆風を受けた製薬業界は改革を迫られ、DX推進の優先順位が一気に上がったという。

フラジェリンは2019年9月にシャペロンをリリース。翌10月には上場製薬会社の持田製薬への全社導入が決まった。その他にも、大手製薬会社1社(名称非公開)への導入もすでに進んでいるという。フラジェリンは収益の数字を公表していないが、同社が公表する「シャペロンによるプロモーションメールの配信数」は大きく伸びている。

阪本氏は今後予想される製薬業界の変化について、「MRによる訪問営業が主流だった従来のやり方から、MR活動のデジタル化とインサイド(リモート)セールス部隊によるより多角的な方法へと進化すると予想している。インサイドセールスがリモートで幅広い顧客にアプローチしつつ、詳細を求める医療機関にはMRが直接訪問するなど、製薬業界の営業とマーケティングのあり方は変わっていくだろう」と話す。

フラジェリンはそれを見越し、今後インサイドセールス向けのマーケティングオートメーションツールのリリースを検討するほか、外部の顧客管理システムとのサービス連携などにより、MR活動のデジタル化を1つのツールで実現できるようにシャペロンの機能を拡充していく予定だ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:資金調達 日本 医療

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TechCrunch Japan

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