コロプラが渋谷・道玄坂に開設したコワーキングスペース「the Roots」に学生起業家が集結

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ゲーム開発のコロプラ2015年3月にスタートした投資子会社の「コロプラネクスト」が渋谷にコワーキングスペース「the Roots」をオープンした。7月29日の夜にはオープニングパーティーを開催。学生起業家や投資家たちが集まった。東京の人であれば道玄坂の途中にあるFORUM 8の入ったビルと言えば分かるかもしれないが、ちょっと年季の入った雑居ビルの3階に、下の写真のような超オシャレな場が誕生した。

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見た目は超オシャレで、ともすればチャラチャラして見えるが、案外ルールは厳しい。コロプラの副社長で今回の学生起業家向け投資事業の中心人物の1人である千葉功太郎氏は「運用ルールは厳密に決めています」と胸を張る。24時間365日利用可能なスペースで学生向け。だから、ともすれば悪い意味での部室的なノリにもなりかねない。そんなこともあって、アルコールはイベント時以外は禁止だし、IDを持つ入居者以外は彼女・彼氏を含めて入室禁止にしているそうだ。オープニングパーティーで挨拶した千葉氏は学生起業家たちに向かって、超オシャレな場所で仕事をすることになったとしても、「オレたちイケてるなと勘違いしたりしないで謙虚な気持ちで取り組んで」と語りかけていた。

the Rootsが入る新大宗ビルは道玄坂中腹にある雑居ビルだが、実は多くのスタートアップが入居している。近隣には独立系VCの拠点もある。昨日のパーティーにはEast Ventures、インキュベイトファンド、IVP、B Dash Ventures、ANRI、Skyland Ventures、プライマルキャピタルなどVCから投資家が顔を出していたが、渋谷を中心に活動するキャピタリストも少なくない。六本木や神谷町を拠点にするVCたちからは、「やっぱり渋谷は人と会うコストがかからないよね」という感想も聞こえてきた。

コロプラネクストは学生起業家を資金や事業面で支援していくが、渋谷に拠点を作ることで、起業家同士の情報交換やチーム組成を促し、投資に繋がるような人的交流が生まれてくることを狙っているようだ。ちなみに、コロプラ自体は恵比寿のガーデンプレイスに入居している。

もともと渋谷はスタートアップの集積地の1つだが、今回のthe Rootsのようなコワーキングスペースとして、リクルートが運営する「TECH LAB PAAK」やEast VenturesとSkyland Venturesの「Hive Shibuya」、エンジニア向けなので毛色は少し違うがインテリジェンスが8月1日に開設予定の「dots.」、朝日新聞社の「Asahi Shimbun Accelerator Program」が入る朝日新聞メディアラボ渋谷オフィスなど続々と交流スペースが誕生しつつある。

5社がピッチ、平均年齢19.5歳のチームも

オープンパーティーには、学生起業家や投資家、関係者らが(ぼくの目視だと)50〜60人ほどが集まった。これまでコロプラネクストがウェブサイトからの応募や人的繋がりで面談してきた200人を超える学生の中から、起業家や起業志望の学生たち30人ほどが会場に来ていたようだ。

イベントでは若手起業家がプレゼンを行った。すでにコロプラネクストからの投資が決まっているか、投資を検討中という5社だ。簡単に紹介しよう。

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最初にプレゼンを行ったのは、メイクアップ関連情報をシェアするコミュニティ「Makey」(メイキー)を運営するMoobの中村秀樹氏。Makeyは、ずばり「クックパッドのメイク版」だ。アプリではメイクの「Before/After」や写真入りの手順が表示できる。中村氏によれば、Instagramでは30秒に1度はメイク・コスメ関連の投稿があり、Twitterではその30倍のペースでツイートがある。1日に10万以上のメイク関連情報の発信がある計算で、「メイク情報の発信、閲覧欲求は非常に高い。スマホとセルフィー文化が広まると、これはもっと爆発的に増える」と話す。今年1月末に正式リリースしたiOSアプリでは、所有コスメや肌質感、顔の形、メイクタイプごとに検索ができるほか、つくれぽライクな機能を追加するなど、「われわれはクックパッドを踏襲する」と先行していて成功しているCGMサービスを研究し、料理ではなくメイクに適用し、PCではなくモバイルに最適化するという。Makeyでは、すでに独自文化ができつつあって、Makey専用のツイッターアカウントを作るユーザーも出てきているそう。SEOを効かせた記事を量産するメディア運営も行うことで、モバイルメディアの新しいカタチを作るという。

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大阪大学の高橋慶治氏が創業したTraimmuでは、学生向けのメディアのCo-mediaと就活プラットフォームInfrAを展開している。高橋氏の見立てでは、現在の就活生の間には2つのトレンドがある。1つは優秀な学生がマイナビやリクナビといった大手ナビサイトに登録しなくなってきていること。もう1つはインターンシップが増加していること。その結果として優秀な学生が集まる媒体がない、インターンシップでの実績や経験を評価できてないといった課題が顕在化しているのだそう。企業による応募も、エンジニアとかマーケティングといった職種名による曖昧な応募の仕方が主流であるために、応募の集中が起こってマッチング精度が悪くなるという悪循環が起こっているという。そこでInfrAでは「レジュメ」と呼ぶ学生向け個人ページを用意して、これまでの表彰経験やインターンでの経験を可視化する方法を提供。一方、企業側は中途採用の求人のように、実績や実務経験、役職や給与、スキルなどの明確な基準で条件を提示するようにするのだという。

平均年齢が19.5歳で高校生メンバーもいる若いスタートアップ企業のINASE(いなせ)が提供するのは「Gocci」(ゴッチ)という動画による飲食店紹介のサービスだ。INASEの細川氏は「食べログやぐるなび、Rettyで、もう面白いことは全部できてると思ってませんか? 本当にそうでしょうか?」と語りかける。Gocciが取り組むのは、店舗外観で2秒、店の内部で2秒、料理で3秒などとした合計7秒の動画を基本として、お店の様子がひと通り分かるようにするというアイデアだ。「動画なら、その場の雰囲気がそのまま伝わる。実際に店舗に行ってみたら思ったより狭かったり、思ったよりうるさかったりしたことはありませんか? 写真は断片的すぎたり、キレイに見えすぎる。リアルさが低い」と言う。Gocciは9月末には英語圏版を出す予定で、「グルーバルなグルメアプリを出す。世界から日本を飲み込む形を目指す」と言う。クリップ動画というメディアで言語依存性が低いということもあるのだろうが、まずは日本市場で足場を固めるという発想ではないのが頼もしい。INASEのチームメンバーは全員がエンジニアで、これまで「東京の青梅で寝食を共にしながら開発してきた。これからはthe Rootsを拠点にやっていきたい」と話した。東京外の人ために念ために付け加えると青梅(おうめ)は都心から遠く隔たった東京都の西のはずれで、ツーリングとか梅の花を見に山に入るには良いところだとは思うけど、ふつうはスタートアップ企業が拠点を置くことを考える場所ではない。

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このほかプレゼンは、以前TechCrunch Japanでも紹介したことのあるカップルデートなどの写真を撮影するサービスの「ラブグラフ」と、10代向けファッション動画コミュニティー「Kollect」を提供するFastriが行った。プレゼン後にはthe Rootsに集まった学生起業家やその予備軍の学生、投資家たちが立食形式で事業アイデアや自己紹介をしていた。

2015-07-29 20.05.27

投稿者:

TechCrunch Japan

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