コンテンツレコメンドプラットフォームのTaboolaとOutbrainが900億円規模の合併を中止、新型コロナが影響

オンライン広告はサービス規模のゲームだが、グーグルとFacebook(フォイスブック)に対抗するために2つのライバルを統合しようとする試みの1つが失敗に終わった。記事の配信元に広告ベースのコンテンツレコメンドプラットフォームを提供するスタートアップのTaboola(タブーラ)とOutbrain(アウトブレイン)は予定されていた8億5000万ドル(約900億円)規模の合併を中止した。合併後の会社の評価額は20億ドル(約2122億円)以上になるはずだった。

中止のニュースはイスラエルのマスコミで噂されていた(Globes記事)が、テルアビブに拠点を置くシニア投資銀行家でスタートアップのアドバイザーでもあるAvihai Michaeli(アビハイ・ミカエリ)氏から報告があった。TechCrunchは現在両社にも事実を確認している。

「新型コロナウイルスの感染蔓延によって市場の状況が変化しているのを鑑みて、取引を打ち切ることにした」と合併に近い人物は匿名で情報を寄せた。そして「長い道のりだったし、決して素晴らしいことではないが、立ち去るのは正しい行動だ」と続けた。また、取引に近い別の情報筋は「幸せだからといって離婚する人はいない」と今回の破談について語った。

おそらく今後数日のうちに正式な発表があると考えられる。なお、取引が成立しなかった場合の違約金などは発生しない。この取引は何年も前から行われていた(未訳記事)。TechCrunchでは最初に2015年に両社の協議について報告したが、最終的にまとまったのは約11カ月前の2019年10月になってから(未訳記事)だった。しかし、それから本日までの間に、いくつかの要因の組み合わせが進行を邪魔していた。

第一の要因は、世界的な新型コロナウイルスの感染蔓延だった。TaboolaとOutbrainのビジネスは、記事配信元のウェブサイトと統合したウィジェットを中心に展開している。このウィジェットは、配信元が自社コンテンツの回遊性を高められるだけでなく、スポンサードコンテンツや広告を一緒にウィジェット内で提供する仕組みだ。しかし、この8カ月間で多くの大手ブランドが広告予算を抑制したため、広告ベースのメディアの世界は急落し、エコシステム内のほかのプレイヤーにも打撃を与えた。

そして資金調達の見通しにも影響を与えた。両社の合併は当初、現金と株式の要素、具体的にはアウトブレインの価値の30%を2億5000万ドル(約265億円)の現金でOutbrainの株主と従業員に支払う予定だったが、現金の提供を予定していた金融機関が行き詰まってしまった。この取引は最終的に8月に期限切れとなり、延長されなかった。そして、この取引を完全な株取引に転換しようとする試みは、Outbrainにとって受け入れがたかったようだ。「現金は取引の重要な要素だった」とある情報筋は指摘する。

加えて両社の間には「困難な文化的適応」があると言われていたが、それは取引の終了が長引くにつれてより明らかになった。「現金を手に入れればリスクを減らすことができ、それがなければ我々はさらに不安になっていた」と情報筋が説明する。

3つ目のハードルは、現在進行中の規制上の問題だ。米国の規制当局は名目上、取引を承認したように見えたが、合併は英国とイスラエルの両国でまだ調査中であり、調査はさらに数カ月間続くことになっていた。英国では、両社は現在重要な競争相手がいないため、独占禁止法上の懸念がある。

イスラエルで設立され、ニューヨークに本社を置くこの2社は、計画されている取引を合併と表現していたが、統合された事業体はTaboolaと呼ばれ、Taboolaの創業者であるAdam Singolda(アダム・シンゴルダ)がCEOに就任することになっていた。TaboolaとOutbrainはともに利益を上げており、それぞれの年間収益は約10億ドル(約1060億円)に達している。Taboolaは、Comcast、Fidelity、Pitangoを含む投資家から約1億6000万ドル(約170億円)を、Outbrainは、Index、HarbourVest、Lightspeedなどの投資家から1億9400万ドル(約206億円)をそれぞれ調達していた。

今後、両社はチームとしてではなくても、成長を続ける方法を模索し続けるだろう。メディアや広告の世界にはまだいくつかの教訓が残っているので、それは他の戦略的買収や他の機会を比較検討することを含むだろう。同筋は、「この市場で成功するには、規模と範囲が重要です。」と述べた。

TechCrunchが理解しているところでは、両社はチームとしてではなくても今後も成長を続ける方法を模索していくようだ。メディアや広告の世界ではありがちだが、他社の戦略的買収などを検討することも含まれると考えられる。情報筋は「この市場で成功するには、規模とカバー範囲が重要です」と述べた。

画像クレジット: Taboola

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。