2020年度から小学校でプログラミング教育が必修化される。しかし、サイバーエージェントグループでプログラミング教育事業を行うCA Tech Kidsは「算数・理科などの既存の科目内での限定的な実施となり、経済産業省の試算では2020年に37万人のIT人材が不足する見込みとなるなど、世界的にも日本のプログラミング教育が遅れていることから、民間団体による強化が重要な課題となっている」との懸念を抱いている。
そのような課題の解決に向け、同社は国内最大級の“小学生のためのプログラミングコンテスト”「Tech Kids Grand Prix(テックキッズグランプリ)」を本年、初めて開催した。イベントの司会を務めた代表取締役社長の上野朝大氏によると「子供達がプログラミングを学ぶことに世間の関心が非常に高まっている一方、多くの人がまだその重要さを十分に理解していない」という。
「我々はプログラミングは優れた技術であって、何かを実現するための優れた手段だと考えている。小学生のような子供達であっても、プログラミングを使いこなせば作りたいものを作れたり、困っていることを解決できたりする。それを多くの人に知ってほしいと思い、今回のコンテストを開催する運びとなった」(上野氏)
9月24日、渋谷ヒカリエで行われた決勝プレゼンテーションでは「ゲーム部門」と「自由制作部門」でそれぞれ6名ずつ計12名の小学生が登壇し、自身の開発した自慢の作品を発表した。ファイナリストは国内外より集まった1019件のエントリーの中から選出された強者たちだ。
見事に総合優勝を果たしたのは小学校5年生で10歳の宮城采生(みやぎ・さい)さん。デザイン・プログラミング・BGMなど“全てがオリジナルのスマホゲーム”を発表し、ゲーム部門で1位に選出された後、初代グランプリに輝いた。
「オシマル」と題されたゲームを開発した宮城さんは去年の夏から真剣にプログラムに取り組むようになったという。開発にはMac版Unity、素材にはMac付属のソフトとiPadアプリを使ったそう。スタッフとして「ゲーム制作は自分、テストプレイは家族や友人」と説明するなど、“チームでの開発体制”を意識していたのが印象的だった。
ゲームはCPUを相手にした対戦型のもの。自分が左右に操作する“アニマル”を3体ゴールさせることでクリアとなる。キャラクターは数種類あり、「種類によってコストや性能が違う」ので状況に応じて使い分ける。
タイトルは「アニマルブロックが押し合っている印象から」オシマルと名付けたそうだ。タイトル画面も「ゲームの方向性に合うよう密度感を表現した」と説明するなど、かなりロジカルに世界観の表現を追求していた。審査員からの質問に対し「iPad一つで向かい合って勝負ができる」機能を実装したいと今後の展望を話していた。
Tech Kids Grand Prixの審査項目は「掲げる夢や実現したい世界観」「夢を実現するクリエイティブなアイデアとそれを体現した作品」「自身のビジョンやプロダクトを社会に発信していく姿勢」の3つ。若い感性から生まれたユニークな作品はどれも自由で興味深かった。「大好きな“数学”を友達にも楽しんでもらいたい」「僕のソフトで世界を変える」など名言が盛りだくさんのコンテストだったが、その熱い気持ちを忘れず、テクノロジーでより楽しく美しい世界の実現を目指してほしい。近い将来、TechCrunch Japanで取材できる日を楽しみにしている。