日本ではLuupやmobby ride、mymerit、加えて海外のキープレイヤーであるLimeやBirdなどのスタートアップが、実証実験などを通じて電動キックボードのシェアリング事業の本格的な社会実装を目指している。
だが、この国には「所有」から「共有」へのシフトという国際的なトレンドを逆行するプレイヤーも存在する。Makuakeで「Kintone α GO」の先行販売を開始したKintoneだ。
Kintone α GOは電動キックボードに国土交通省が定める保安部品を取り付け、原動付自転車登録を可能に。そうすることで、日本の公道を走行できるようにした。
一方でシェアリング事業の展開を目指す各社は現在、サービス提供の開始を目指し、超保守的とも言えるほど街や自治体との連携体制を重要視している。電動キックボードは海外では事故に関する報道なども目立つため、慎重に話を進めなければ満たすべきニーズも満たせなくなってしまうからだ。
Luupは4月、浜松市、奈良市、四日市市、多摩市、横瀬町との連携協定を締結した際に、「まずは電動キックボードの安全性や利便性の検証のために実証実験を行って参ります」とプレスリリースに綴った。LimeとBirdは「国家戦略区特区制度」を活用し電動キックボードの普及を加速できないかと考える福岡市で実証実験を行い、同市でのサービスインを目指し奮闘中だ。
KintoneのMakuakeのプロジェクトは、同社いわく開始から約30分で目標金額の50万円に到達。10月15日現在、「集まっている金額」は1200万円を超えているなど、注目を集めているのは確かだ。マイクロモビリティ推進協議会の会長も務めるLuup代表の岡井大輝氏は9月10日のプレスリリースで「電動キックボードは、世界で普及が進む一方で、日本の社会においてどういった形での実装が最も安全で望ましいのかが分かっていない状況です」と述べているが、単に公道での走行を可能にしたKintoneの電動キックボードは、果たして社会からの理解や市民権は得られるのだろうか。
そして、以前にTechCrunch Japanの取材に応じたLimeのCEO、Brad Bao氏は、同社の電動キックボード事業はシェアリングモデルである点がキモであり、所有せずに必要な時にいつでもアプリから機体を探すことができるという利便性がユーザーに愛されており、事業の急成長に繋がっていると説明した。Kintoneは「世界のスタンダードになっている『新しい移動の体験』を提供したいと考え、道路交通法に適合したモデルの開発に至りました」としている。電動であるがゆえにエコであり短距離移動を便利にするマイクロモビリティのソリューションであるという点は他社と変わりないが、もし重さ10kgだというKintone α GOを常備するユーザーが増えたとしても、「世界のスタンダードになっている」電動キックボードのシェアリング事業の本格的な展開は日本ではまだ先の話だ。