もう来週の木金、11月16日、17日に開催が迫ったテックイベント「TechCrunch Tokyo 2017」の登壇者をお知らせしたい。2014年にシリコンバレーのガレージで創業したクルマ関連スタートアップDrivemodeの共同創業者の上田北斗氏だ。
Drivemodeは車内でスマホを使うためのUIを開発している。「車内でスマホを使う」というと、危険だし止めるべきと考える人が多いだろう。それはその通り。運転中のスマホ操作による事故は日本でも米国でも問題となっている。
Drivemodeが挑戦しているのは、以下の動画にあるように、いかにドライバーの認知的負荷を下げて運転しながらスマホアプリが使えるかを徹底して追求すること。Google Playから入手可能なこのAndroidアプリは、車内での利用に最も人気のあるアプリの1つだ。すでに100万ダウンロードを超え、アクティブな利用者は180カ国に広がっている。アプリは、ドライバーの邪魔にならないように、スマートフォンのさまざまな機能、例えばナビゲーション、メッセージング、通話などを声や簡単なジェスチャーでアクセスできるようにデザインされている。
Drivemodeの上田氏は、既存の大手企業が挑戦できない領域だからこそ、スタートアップ企業がやるべきだし、勝ち目があるのだとぼくに話してくれた。現実問題としてスマホのながら運転は法で禁じようが、良いスローガンを考えようが、なくならない。かといって大手企業がこの課題に取り組むことは難しい。企業イメージや一般社会からの反発が必至だからだ。
スタートアップ企業としてDrivemodeは2017年3月にシリーズAラウンドで650万ドル(約7.4億円)の資金調達を行っている。このとき、車載機器サプライヤーのパナソニックが戦略的投資家としてラウンドをリードしているほか、Innovative Venture Fund Investment、みやこキャピタルに加えて保険会社の三井住友海上(VC子会社経由)も投資家の顔ぶれに含まれている。
上田氏はロサンゼルス生まれの日系アメリカ人。日本のコンテンツを見て育ったそうで、少し話をしただけだと日本人と信じて疑わない感じだ。ワシントン大学で機械工学を学び、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。Drivemode創業前の2011年からはテスラ・モーターズでModel Sセダンのローンチ・マネージャーとして活躍していた経歴をもつ。シリコンバレーのCarTech動向には断然明るい人物だし、イーロン・マスクのそばで仕事をしていたことから、イベントでは「マスク伝説」もちょっとご披露いただけそうだ。
ぼくが聞いたなかで感銘を受けたのは、前にせり出すテスラのドアハンドル機構の話。工学的に実装ハードルが高く、現場のエンジニアが実現コストに対して提供価値が見合わないと匙を投げたくなっていたとき、こうしたハンドルこそがドライバー(ヒト)とクルマのユーザーインターフェイスで、ここは一切妥協してはいけないのだと言い張ったという話だ。
なんだ、そんなことかというヒトもいるかもしれない。もしかしたらDrivemodeが取り組む領域も「なんだUIか」というヒトもいるかもしれない。でも、「そんなことか」と鼻で笑う態度こそ、テレビの本分は画質なのだとハードウェアばかりにこだわって、ソフトウェアやサービス、UXを軽視した日本のテレビ産業と業界、あるいはケータイ業界の失敗の根底にある態度だったのではないだろうか。クルマはいま、複雑で高度なすり合わせを必要とし、日本企業群が得意だったアナログなマニュファクチャリングから、デジタル化され、モジュール化され、イノベーションや要素技術を採り入れて統合するソフトウェア産業に近いものに生まれ変わろうとしているようにぼくには思えてならない。
ヒトとクルマの間にあるべきもの、あるいは今後車内空間にあるべきものを考え続け、作り続けているDrivemodeの上田氏。スタートアップと大手企業、日本と米国、テクノロジーとビジネスと多面的にクルマの未来を見つめる上田氏の話をぜひTechCrunch Tokyoに聞きに来ていただければと思う。チケットは絶賛販売中だ。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。