編集部注:本稿はRobert S. Marshallによる。MarshallはEarth NetworksのCEOを務めている。
ラスベガスで行われてあConsumer Electronics Showに参加した人は、「スマートホーム」関連デバイスの多さに目を回したことだろう。牛乳や玉子が少なくなったときに通知してくれる5000ドルのスマート冷蔵庫や、スマートフォンやテレビ画面から灯りや鍵、あるいはサーモスタットをコントロールできるデバイスなどが出品されていた。いずれもなかなか便利そうなプロダクトにみえる。ただし、スマートホーム化が節約になっているのか、エネルギーを効率的に利用しているのかなどと考えだすと、よくわからなくなってしまう面もある。
起業家たちも、スマートホーム関連のデバイスないしサービスを生み出して、スマートホーム業界への参入をはかっている。しかしスマートホーム・デバイスの普及のために、スマートな消費者の存在が必要であることを見落としているのではなかろうか。
Parks Associatesの2016年3月のレポートによれば、スマートデバイスを利用している家庭の70%が、エネルギー消費を抑えることに成功しているのだそうだ。ただし、アメリカではブロードバンド導入済み家庭の83%が、毎月の電気代がいくらなのか把握していないという結果も得られている。すなわち、電気代を抑えたりすることのできるスマートデバイスへの興味の低さを示しているとも言えるだろう。
こうした状況の中、スマートホームを実現する機器に注目してもらい、そして利用を促進するためには、新たな戦略も必要となってくる。デバイス製造者、技術開発者、ユーティリティ機能の提供者、インテグレーター、そして規格の策定者たちが歩調を揃えて、統合的に利用できる環境を整えることによって「賢い消費者」を育てていく必要があるように思えるのだ。このために直ちに対処する必要のある改善点がいくつか存在する。
IOTに根ざしたアプローチを
まず、スマートホーム関連デバイスは、単独で動作するものではなくIoTの機能を備えている必要がある。消費者は、スマートホームのデバイスを1つずつ追加していく傾向があるようだ。そうでありながら、2015年のForresterの調査によれば、13%の消費者が複数のスマートホーム・デバイスを活用しているのだ。すなわち、複数のデバイスが連動して快適さなどを提供することができるようにならなければならない。
直接に役立つデータを提供して、賢い消費者を応援することが必要だ。
スマートホーム・デバイスの導入時期には、セキュリティシステムが灯り制御をコントロールするシステムを制御できるかとか、あるいはスマートサーモスタットがスマートメーターのデータを読み取ったりすることができるのか(あるいはその逆)といったことに興味を持つ人は少なかったかもしれない。初期の利用者は、プロダクト自体に新規性があればとにかく使ってみるという傾向もあるからだ。しかしスマートホーム・デバイスを一般家庭にも普及させるためには、何百ドルも出してさまざまなスマートホーム・デバイスを導入することで、全体として実現できる快適さをアピールしていく必要がある。
スマートホーム・デバイスに統合的なシステムや、あるいは標準プロトコルを持たずに相互通信が行なえような状態が続くなら、スマートホーム・デバイスは「おもしろい」存在に留まり、「必要」なものとしてとらえられることはないだろう。複数導入しても便利になったり、節約できるようになるわけではなく、ただ混乱がもたらされるだけといったことになってしまうのだから。
今後はさらなるスマートホーム・デバイスが市場に出てくることが予想される。そしてIoTを意識したアプローチの重要性が増すことになる。Parks Associatesの最新レポートによれば、ブロードバンドを導入している家庭の40%が、1年以内にスマートホーム・デバイスの導入をする予定なのだそうだ。しかしそうした消費者の頭の中でも、スマートホーム・ソリューションの相互連携を大事だとする考えが芽生えつつあるようだ。
前向きな技術開発はいくつも行われており、たとえばZigBeeやZ-Waveなども、スマートデバイスないしセンサーをIoTで連携させる仕組みを構築しつつある。スマートデバイス分野においては、独自の仕様にこだわるのではなく、IoTで連携するための標準化の上にプロダクトを構築していくことで、消費者はさらに便利に、そしてスマートに利用できるようになる。家庭に設置した各デバイスがリアルタイムで情報のやり取りを行い、そこから考慮ないし対処すべきさまざまな情報が得られるようになる。デバイスの相互接続性が増すことで、スマートホーム・デバイスの普及がさらに進むことになるはずだ。
データの活用範囲は「ホーム」を超えて拡大する
本稿では「スマートホーム」という用語を何度も使ってきた。ちなみに「スマートホーム」と「コネクテッド・ホーム」(connected-home)の違いを意識しているだろうか。「スマートホーム」に重要なのは「データ」だ。有用でわかりやすいデータが消費者に届けられることにより、消費者自身も「スマート」になるのが「スマートホーム」の目的であるのだ。
デバイス間の相互接続性をそれほど意識していなかったものから、徐々に「スマートホーム」を目指して、デバイスが連携してトータルなサービスを提供を目指すデバイスが増えつつあるようにみえる。
たとえばAmazon Echoは、それほどの期待はなかったものの、徐々にその評価をあげつつある。ecobeeやEmerson、Philips Hue、さらにはSamsung SmartThingsなどと連携して、さまざまな機能を提供するスマートホームを音声によりコントロールできるようになっている。それにとどまらずUberやDominos Pizzaのサービスとも連携することで、「ホーム」を超えたデータ連動の可能性が示されつつあるのだ。
データは使うためにある
現在のところでは、スマートホーム・デバイスについてはIoTを使ってどのようなデータをやり取りすることができるのかということよりも、単体としての機能に注目が集まっている段階ではある。開発者たちやメーカーは、これを次の段階に進める必要がある。データを連動させることによって描かれる未来を消費者に提示していく必要があるのだ。
すでにセンサー技術の発展などにより、屋内外から膨大なデータが収集できるようになっている。しかしそうした情報を消費者に向けて、使いやすい形で提供することはまだできていないのが現実だ。
相互接続の機能もなく、データの互換性もないような状況が続けば、データを統合的に活用するなど夢のまた夢だ。さまざまなデータを活用したいと考える消費者も混乱するばかりになってしまう。さまざまなデバイスで得られるデータを統合して、利用しやすい形で提供することができれば、それは消費者をよりスマートにさせることにつながる。そして消費者は2度の温度調整が家計にもたらす影響を把握できるようになり、外の気候に応じて室内環境を整えることの大事さを具体的に知ることができるようになるのだ。
知ることがさらなる行動につながる。スマートホーム・デバイスに関わる人たちはそのことを念頭におくべきだ。消費者をよりスマートにすることで、データも、もちろんデバイスも広く活用されるようになっていくのだ。
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(翻訳:Maeda, H)