セキュリティソフトのNortonLifeLockが同業Aviraを約374億円で買収

1億8000万ドル(約187億円)で買収されてからまだ8カ月のAvira(アヴィラ)は、今度は倍の価格でまたも買収される。NortonLifeLock(ノートンライフロック)は米国時間12月7日、ドイツのセキュリティ企業Aviraを全額キャッシュの3億6000万ドル(約374億円)で買収すると発表した(Business Wire記事)。

このM&Aは、両社をめぐる一連の所有の統合や変更における最新の動きだ。NortonLifeLockは、Symantecの企業セキュリティ事業がBroadcomに110億ドル(約1兆1440億円)近くで買収された(Broadcomリリース)ことにともなって2019年に独立した企業となったばかりだ。NortonLifeLockは公開企業であり、時価総額はおおよそ115億ドル(約1兆1960億円)だ

一方のAviraは2020年4月まで、主に消費者向けのセキュリティソフトウェアにフォーカスしていた新進のテック企業だった。同社のプロダクトにはNortonのようなウイルス対策ソフトウェアが含まれる。Aviraの場合、ソフトウェアはFacebook(フェイスブック)などによって再販されてきた(いまは休止中のウイルス対策マーケットプレイスの一部として)。近年、Aviraは有名企業とのホワイトレーベル取引で顧客を獲得してきた。戦略的パートナーにはNTT、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)、IBM、Canonical(カノニカル)などが含まれる。Aviraは何百万という顧客ベースを抱え、デバイス3000万台をカバーし、有料顧客150万人を抱える(さらに多くが無料のサービスを利用している)。ホワイトレーベルのパートナー企業とあわせ、同社のソフトウェアは今日、世界のデバイス5億台で使用されている。

中でもAviraはフリーミアムモデルのビジネスを構築したのが特徴で、このモデルは維持するつもりだとNortonは語った。

Investcorp Bankのプライベートエクイティ部門であるInvestcorp Technology Partnersは2020年4月、Aviraの過半数の株式を買収し、これにより同社のバリュエーションは1億8000万ドル(約187億円)になった。この株式取得はAvira自身が買収できるようにするための資金注入だった。当時、この買収はAviraを統合企業と位置付けることになったのに加えて、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界経済に影響を及ぼし始めた初期に休眠状態になったのち、M&Aマーケットが再び動き始めたことを示す案件として注目された。

最終的にAviraは統合企業となる代わりに合併整理されることを選んだようだ。NortonLifeLockは、Aviraが強固な顧客基盤を持つ欧州で特に成長できるよう資産を活用するはずだ。

「AviraをNortonファミリーに迎えることをうれしく思います」とNortonLifeLockのCEOであるVincent Pilette(ヴィンセント・ピレッテ)氏は声明文で述べた。「当社はサイバーセーフティをみなさんにもたらすべく努めています。Aviraの買収により成長事業がポートフォリオに加わり、当社の国際成長を加速させ、フリーミアムソリューションで市場開拓モデルを拡大できます。文化的に我々は完璧な組み合わせです。当社はイノベーティブなプロダクトを消費者に届けることに絶えずフォーカスしていて、常に顧客を第一に考えています。Aviraとともに取り組むのが楽しみです」。

所有が変わる時期にAviraのCEOだったTravis Witteveen(トラビス・ウィッテヴェーン)氏は、このディールに「ワクワクしている」と声明文で述べた。買収によりAviraのバリュエーションは倍になった。

「NortonLifeLockとAviraは、消費者のデジタル生活を守ることを専門としています。サイバーセーフティにおいて信頼とリーダーシップを持つNortonLifeLockの一部になることを楽しみにしていて、さらに多くの世界中の消費者を守ることができます」とウィッテフェーン氏は声明文で述べた。

NortonLifeLockによると、買収は2021年第4四半期にクローズする見込みで、その後ウィッテヴェーン氏とCTOのMatthias Ollig(マティアス・オリグ)氏がNortonLifeLockの経営陣に加わる。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:NortonLifeLockAvira買収

画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Image

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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