ソーシャルゲームの成功に必要なことの1つはリテンション、つまりいかに既存ユーザーにゲームを継続して遊んでもらうかだ。そのためには、ビッグデータの解析をして、ユーザーの傾向に適した施策を検討することは重要だ。そんなソーシャルゲームで培ったテクノロジーでHR領域、特に採用の改革を進めるのがハッチだ。同社は5月8日、サイバーエージェントベンチャーズおよびANRIから、総額7500万円の資金調達を実施したことを明らかにした。
ハッチの設立は2013年8月。代表取締役の二宮明仁氏は、新卒でサイバーエージェントに入社して、19番目の社員としてグリーに転職。KDDIとの提携でスタートした「EZ GREE」のディレクションを担当。その後「クリノッペ」や「ハコニワ」、「海賊王国コロンブス」といったゲームに携わり、GREE Internationalの立ち上げにも参画。グリーが買収した米funzioの黒字化を進めたという人物。7年半のグリーでの経験を経てゲーム以外での起業を考えていたとのことだが、「新しい分野で業界の常識をひっくり返したいと思った。当初Edtech(教育×テクノロジー)をテーマにも考えたが、HR(人材)分野もテクノロジーオリエンテッドな会社が少ない。ここで今までのノウハウを生かせないかと考えた」(二宮氏)と、思いを語る。
同社が手がけるのは、HR向けのクラウドサービスブランド「Talentio(タレンティオ)」だ。機械学習やビッグデータ解析を基盤にした人材の管理ツールを展開していくという。その全体像については開発中の部分も多いということで詳細を聞くことができなかったが、4月より、コイニーやnanapi、フリークアウトなど一部の企業に限定して、採用の進捗管理機能を提供している。「データをきちんと蓄積して、スクリーニング、面接、といった人事担当者の作業を見えるようにする管理ツール。将来的には人材版のGoogle Analyticsといったようなものを作りたい」(二宮氏)。
採用の進捗管理や効率化では、すでにジャパンジョブポスティングサービスの「JobSuite」などがある。だがハッチでは、求職者と求人を募集する企業の両社にサービスを提供していくことを考えているようだ。求職者に対しては、自身の能力や才能をより発揮できる仕事やプロジェクトの発見を促し、ビジネスでのつながりを可視化するサービス。また企業に対しては、自社に最適な人材をより効率的かつ低コストで探し出し、採用・人事にまつわる様々なデータを蓄積し解析するサービスを考えているという。「求職者が自分の履歴や経歴を登録して、最適な仕事とマッチングできるようになる。また企業は、どういう人材が一番いい人材なのかといったことや、優秀な人材はどういったソースから来ているのかということが分析できるようになる」(二宮氏)。正直なところサイトが正式公開されていないし、僕も管理画面を1ページを見ただけなのでどこまでサービスが実現するのか分からないところがあるが、求職者から見れば「LinkedIn」のような機能が提供されることになるのだろうか。
同社では今回の調達をもとに、エンジニアの採用を実施。加えてインフラの増強やマーケティング強化を進める。また、サービスに興味のある企業の経営陣や人事限定でのサービス披露イベント「Talentio Secret Release Party」を開催する予定だ。