ソニーのGoogleスピーカーLF-S50Gを詳細レビュー。実は「汎用性の高さ」こそが魅力?

eng-logo-2015昨今、なにかと話題のスマートスピーカー。日本でも、発売で先行したLINEの「Clova WAVE」に加え「Google Home」と「Amazon Echo」が登場。そして今後登場するであろうAppleの「HomePod」も含めて、代表的製品が出揃いつつあります。

ですが、筆者個人としては、周囲のスマートスピーカーへの盛り上がりを見ながら、イマイチ不安が拭えないタイプ。
「声でスピーカー自体をコントロール。さらにはそれを経由して、音声で自宅のいろいろな機器までも思い通りに動いてくれたら、未来がやってきたみたいでなんてステキ」……と期待値を膨らませつつ、実際に使ってみたら、思ったことと違う、とガッカリしかねないのではと思ってしまいます。

そうは言いつつGoogle Home Miniは購入してみた筆者ですが、そんなタイミングで、ソニーの「LF-S50G」(実売価格2万5000円前後)を使う機会がありました。今回はこの製品を、Google Home Miniとの差も確認しつつレビューします。

ソニーから12月9日に発売される「LF-S50G」は、Google アシスタントを搭載したスピーカーです。スマートスピーカーとしてはGoogle(アシスタント)勢に属するので、音声コマンドを介した機能は既に発売されている「Google Home」と同じことができると思って良いでしょう。

筆者もすでに「Google Home mini」を購入して使いだしたところなので、まずはそのあたりを確認すべく、同じように使えるかを確認してみました。

「LF-S50G」の本体サイズは、直径約110mm x 高さ約162mmの円柱型スタイルで、重さは約750g。そこそこ大きめです。
外装がファブリック素材だという点からは「Google Home mini」の雰囲気と近く、そのまま大きくしたかのような印象もあります。

電源は15VのACアダプターが付属。バッテリーなどは入らないので、AC電源は必須。小型のスマートスピーカーの一部で見られるmicroUSB給電タイプであればモバイルバッテリーなども使えますが、本機はそういった使い方はできません。純粋な据え置きタイプです。

対応するスマートフォンアプリはGoogleアシスタント勢だけあり、Google Homeシリーズと共通の「Google Home」です。これをセットアップし、早速使ってみましょう。

Googleアシスタントを起動する呼びかけは、こちらもGoogle Homeと共通の「OK Google」もしくは「ねぇ Google」です。これをスピーカーに話しかけるとアシスタントが起動するので、そこから声で指示します。

ということで、基本的な機能としてはやはりGoogle Home Miniと共通と見ていいようです。

では次に、スピーカーとしても使ってみよう……というときに、筆者にとっては様々なハードルがたちふさがります。

まずはスピーカーなので音楽を聴こう、と思ったのですが、今のところ聴ける音楽は、ストリーミングサービスの「Google Play Music」と「Spotify」の2択のみ。
筆者の場合、今までPCにせっせと貯め込んできた(ローカルの)楽曲たちがメインであり、加入しているストリーミングサービスも実は「Amazon Prime Music」なので、いきなり壁に当たってしまった格好です。

なんということでしょう、これなら「Amazon Echo」を買ったほうが幸せになれんじゃないか? と一瞬イヤな予感が脳裏をよぎりつつも、いやいや、解決策はあるはず……と調べてみました。
すると、「Google Play Music」経由で、ローカルに保存されている楽曲をクラウドにアップロードすればストリーミングサービスと同様に聴けるようになることがわかりました。

これで「OK Google。Play Musicでホニャララを再生して」といえば、アップロードされた曲も聴けるようになり、満足度が上がりました。

他にも、スマートスピーカーのコマンドワードとして定番となる「天気」や「交通情報」、「ニュース」なども、もちろん対応。こちらは問いかけるだけで、対応した情報を音声で教えてくれます。

さて、本製品は単体でもスマートスピーカーとしては良好な音質ですが(こちらは後述します)、昨今のソニー製品だけあり、他のソニー製品との連携も可能です。

これは「Works with Googleアシスタント」対応オーディオ機器で可能となるもの。例えばワイヤレススピーカー「SRS-ZR7」を同一のホームネットワーク内に置いていれば、本機に音声で指示を出すことで、離れた場所にあるZR7から音楽を流す、といった連携が可能になります。

音質面で有利な機器があれば、そちらで再生することで、満足度はさらにアップします。

また、Android TVを搭載しているテレビ「ブラビア」との連携も可能。設定をしておくことで、本機に「YouTubeでホニャララの動画を再生」と指示すれば、テレビで該当する動画を再生。ボリュームを声でコントロールしたり、停止したりといったこともできます。

こう聞くと「ネット動画サービスを横断的に音声で指示できたら便利かも!」と期待は膨らみますが、Google Homeでは残念ながら、今のところYouTubeとNetflixしか対応していません。

筆者は動画サービスも複数契約していますが、そちらは「Amazon プライム」「Hulu」「dTV」など、現状では非対応のサービスばかり(HuluやdTVはAndroid TVで見ることはできるのですが、音声検索に対応していません)。
こちらも自身が契約しているサービスが使えないという、悔しい事態になってしまいました。

しかも慣れないうちは、なかなか指示が伝わりません。単語をひとつ飛ばしてしまうだけで「すみません、わかりません。」と返答が帰ってきてしまいます。何がダメなのかと試しつつ正解を探している間に、リモコンかスマホを持ってくるほうが早いんじゃないか、と思わせられます。

このように現状では、音声コントロールを快適に使うには「自分から使い方を合わせていかないといけない」ことが多いのが現状です。

さらに難関といえば、家族が一緒にいる際、とたんに音声コマンドを使うのが恥ずかしくなること。
1人でいるときは躊躇せず話しかけられるのに、身内が近くにいると、とたんに恥ずかしくなるのはなぜなのでしょう。

とくに、自分の好みのYouTube動画や楽曲タイトル、アーティスト名を読み上げると、ともすれば家族から「ナニソレ」みたいな空気が漂うことも。こういった場合は恥ずかしいこと極まりないので、だいたい「音楽を再生して」と、無難なセリフを言ってます。

このように現状のスマートスピーカーは、いろいろな点でハードルが高いのも事実です。購入前に「近未来のライフスタイルがが手に入るかも!」と期待しすぎると、現時点で出来ることの制限から、モヤモヤっとすることが多いかもしれません。

なお、これはGoogle Homeに限らず、どのスマートスピーカーでも、スタートラインはほぼ同じような印象です。こういった面では、今後に期待しましょう。きっと良くなるはず……。

さて、本機ならではの特徴と言えるのが、音質に関しての工夫です。本機はスマートスピーカーの範疇を超えて、ワイヤレススピーカーとしても、価格なりに満足のいくものとして仕上がっています。

スピーカーの構成としては、スマートスピーカーの主流ともいえる全方位(無指向性)タイプ。部屋の全方向に音声をバランスよく広げます。

スピーカーユニットは「対向配置2ウェイスピーカーシステム」。これは、ボーカル帯域より上、いわゆる中音と高音用のフルレンジスピーカーを上向きに、低域用の大振幅サブウーファーを下向きに対向配置した2ウェイ構成のことです。

これによりコンパクトなボディながら、明瞭なボーカルと自然な低域の両立を図っています。

さらに、上下のスピーカーユニットから発生した音を効果的に拡散させるために、円錐形の「2ステージディフューザー」を搭載。部屋の隅々までバランスよく音を放射する構造となっています。

こうした構造では不要な共振が問題となりがちですが、本機ではディフューザーの中央を太い柱構造とした点などで高い剛性を保ち、不要な共振を抑えた点も特徴。澄んだボーカルと力強い低域を両立します。

低音を放出する「バスレフダクト」も、スピーカーユニットとのバランスや不要共振の低減を狙い、一部にはダンプ材を詰めた構造。小さなボディでもしっかりとした低域のボリューム感と自然な伸びやかさを両立しています。

サブウーファーのユニット駆動力や容積も、本体サイズの割にかなりのものが確保されているため、この点でも上質な低域再生を目指しています。
このように、スピーカーユニットや本体の造りのレベルから音質に配慮した構造というのは、スマートスピーカーとしては大きな特徴ではないでしょうか。

また、本機の隠れた特徴としては、Bluetooth接続により、単なるワイヤレススピーカーとして使える点も。

先ほどはスマートスピーカーとして、Googleアシスタントを通しての音楽再生にこだわったのでいろいろと試行錯誤をしましたが、実は聞くだけであれば、スマートフォンやPCに貯め込んだ楽曲を直接再生できるのです。

さらに、ソニー製ワイヤレススピーカーといえば、のNFCも搭載。NFCを搭載したスマートフォンであればワンタッチでペアリングが可能です。さらにマルチペアリングの台数も多く、8台までの機器が切り替えできます。

さらに、ワイヤレススピーカーとしての操作にもユニークな機能があります。それが、本体に触れずに操作ができる「ジェスチャーコントロール」。
本体の天面に手のひらをかざし、前から後ろに動かすと「音楽の再生/一時停止」、手のひらを左右に動かすと「曲送り/曲戻し」、天板の上で指をくるくる回すと「音量調節」といった操作ができるのです。

「OK Google」って言うのが恥ずかしい!という場合も、天板に手のひらをかざして、後ろから前に動かせばGoogle アシスタントの起動ができます(続く音声コマンドは声に出さなくてはなりませんが)。

ダメ押し的に、本体に時計表示もあります。わざわざスマートスピーカーに「今何時?」と話しかけるまでもなく、本体が近ければ時刻をひと目で確認できるのです。

さらに、発売から後日になるようですが、周囲の騒音の大きさに合わせて再生中のコンテンツを聞き取りやすい音量に自動調節する「おまかせ音量」機能も、ソフトウェアアップデートで対応する予定とのこと。

スマートスピーカーはとかく音声コントロールの便利さを強調しますが、ここまで紹介してきたように、音声コマンドが適さない場合もあります。

ともすればそこに固執してしまって本末転倒になりがちなところですが、本機はそれに頼らずとも使える本体機能を揃えているのは好感が持てるところ。音声コマンドが使いにくい状況でも代替策があれば、使う際のストレスは溜まりにくくなるはずです。

また、本体は防滴性能を持っている点も特徴(JIS防水保護等級はIPX3)。キッチンなどで水しぶきのかかる場所でも使えたり、本体を水拭きできるため、普段使いとして使うには嬉しいところです。

また、本体カバーは布製で撥水コーティングされているため、取り外して水洗いしても大丈夫な構造のようでした。

各社からたくさん登場するスマートスピーカー。相次ぐ発表を見て「いったいどの製品がいいのかな?」と思っている方も多いと思います。中には筆者のように、スマートスピーカーは使ってみたいけれど、期待をよせて導入するにはまだ不安がよぎる、という方もいるのではないでしょうか。

その中で本機「LF-S50G」は、汎用性の高さが魅力的です。Googleアシスタント搭載のスマートスピーカーでもあり、さらにBluetooth接続でワイヤレススピーカーとして使えて、音質的にも納得のクオリティ。本機であれば、スマートスピーカーとして機能強化待ちだな、となっても、使い道がいろいろとあって楽しめます。

Engadget 日本版からの転載。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。