ソフトバンク・グループがビジョン・ファンド幹部へのインセンティブを半額に

Softbank Group(ソフトバンク・グループ)は米国時間2月8日、2021年3月期第3四半期の決算を発表した。その中には運用額986億ドル(約10兆370億円)のVision Fund(ビジョン・ファンド)の業績も含まれる。最近上場したDoorDash(ドアダッシュ)が数十億ドル(数千億円)の利益をもたらしたこともあり、その数字は魅力的なものだった。これは同ファンドにとって本当の意味での最初の大ヒット投資の1つである。同社は現在18件の投資を回収しており、そのうち10件は全部エグジットし、8件は現在公開市場で取引されている。

だが、同社の決算短信を注意深く見ると、ビジョン・ファンドのリーダーシップに割り当てられていたインセンティブを50億ドル(約5256億円)から25億ドル(約2628億円)に半減させたことが記されている。

この50億ドルのインセンティブ・スキームは、2018年4月にFinancial Times(フィナンシャル・タイムズ)などの出版物が最初に報じたときに物議を醸した。このモデルでは、基本的にソフトバンクが従業員に融資してビジョン・ファンドに出資させるという仕組みで、1000億ドル(約10兆5100億円)の資金調達のクロージングを加速させるためのものだった。同社は2018年第2四半期の決算で初めてインセンティブ・スキームに関する文言を追加し、こう記している。

2018年10月19日、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは中間クロージングを行い、追加の出資コミットメント50億米ドルを取得しました。これにより同ファンドの累計出資コミットメント総額は967億米ドル(約10兆1470億円)となります。なお、当該追加出資コミットメントは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの運営に係るインセンティブ・スキームの導入に向けたものです。

それ以来、同社は四半期ごとの決算報告書で50億ドルという数字について一貫した表現をしてきた。しかし、今回の最新の2020年度第3四半期決算では、インセンティブは「25億米ドル(前回の50億米ドルから減額)」になったことが記されている。

ソフトバンクのインセンティブ・スキームは、業界関係者の間で大きな論点となっている。2週間前のフィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、ソフトバンクの4人のトップ幹部であるRajeev Misra(ラジーブ・ミスラ)氏、Marcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏、佐護勝紀氏、宮内謙氏は、ビジョン・ファンドに出資するために6億ドル(約631億円)をまとめて貸し付けられたという。その資金の一部は50億ドル(現在は25億ドル)のインセンティブ・スキームから出たものだが、全額がこの特定のプールからのみ充当されたのかどうかは明らかではない。

ソフトバンクがビジョン・ファンドのインセンティブを引き下げたのは、同ファンドの全体的な業績の低迷と、グループに大幅な損失をもたらしたWeWork(ウィーワーク)への悲惨な投資に対応したためと思われる。ビジョン・ファンドとしては最近のパフォーマンスははるかに良くなっているが、これらのインセンティブの一部を排除することで、ファンド全体の業績が向上し、最終的にはソフトバンク・グループの収益が改善されるはずだ。

ビジョン・ファンド1は2020年の時点で新規企業への投資を停止している。第2のファンドは、すべてソフトバンク・グループ自身からの出資で100億ドル(約1兆510億円)の資本を持ち、定期的に投資を行っている。ビジョン・ファンドはまた、2020年12月の1社目に続き、先週末に新たな2つのSPAC(特別買収目的会社)の申請も行っている

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Softbank GroupSoftbank Vision Fund決算発表

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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