ソーシャルレンディング界のユニコーンFunding Circleが新たに1億ドルを調達

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ヨーロッパでフィンテック企業に対する新たな大型投資が行われた。ロンドンに拠点を置き、小規模事業者に融資をしたいと考えている投資家と企業を結ぶソーシャルレンディングプレットフォームを運営しているFunding Circleが、1億ドルの資金調達を行ったのだ。Accelがリードインベスターとなった今回のラウンドには、以前からFunding Circleに出資していたBaillie Gifford、DST Global、Index Ventures、Ribbit Capital、Rocket Internet、Sands Capital Ventures、Temasek、Union Square Venturesも参加していた。

共同ファウンダー兼CEOのSamir DesaiはFunding Circleの評価額を公開せず、2015年の資金調達時より「すこし増加した」と話すにとどまった。なお、TechCrunchでは前回の資金調達時に、同社の評価額が既に10億ドルを超えていたことを確認した

今回の調達額は、2015年4月以降ヨーロッパのフィンテック企業を対象に行われたラウンドで最大だとFunding Circleは話す(2015年4月には他でもないFunding Circleが1億5000万ドルを調達していた)。今週だけでもモバイル決済のiZettleが6300万ドル、CompareEuropeGroupが2100万ドルを調達しており、全体的に2017年はフィンテックへの投資が加速していきそうな雰囲気だ。

シリーズFとなる今回のラウンドの結果、Funding Cicleの調達資金総額は約3億7500万ドルに達した。

そしてこの1億ドルの資金調達は、Funding Circleにとって面白いタイミングで起きた。

まず同社は猛烈な勢いで成長を遂げており、2016年の世界中での貸出額合計は11億ポンド(13億ドル)に及ぶ(Funding Circleはヨーロッパとアメリカで営業しており、Desaiによれば採算のとれているイギリスが同社にとって最大の市場だ)。そして合計額のうち4億ポンドがQ4単独の数字で、前年同期比で90%も増加している。

昨年のFunding Circleの成長度合いをわかりやすくするために書くと、2010年の設立からこれまでの貸出額の合計は25億ポンドだと同社は話している。

その一方でFunding Circleは特に追加資金を必要としていなかったが、Lending ClubWongaなど他社のスキャンダルを考慮すると、レンディングサービスを提供するスタートアップにとっては今がとても大事な時期なのだ。

「昨年の市況は、特にオンラインレンディング企業にとって厳しいものでした。それでも私たちはFunding Circleの状況を喜ばしく思っています。前回のラウンドで調達した資金の大半は未だに手元に残っていますが、私たちはさらに事業へ投資できるチャンスを利用したいと考えていました。今回の資金調達によって、イギリスやヨーロッパ当局に対して私たちが今後もビジネスを続けていこうとしていることをアピールできます。Funding Circleは旧来の銀行を代替し、信頼に値する企業という地位を確立しようとしており、今回のラウンドは私たちの進歩やFunding Circleのビジネスの未来を証明するものでもあります」とDesaiは話す。さらに彼によると、調達資金の一部は、同社のプラットフォームや「プラットフォームをさらに強力なものにする」アルゴリズムの開発にあてられる予定だ。

プラットフォーム上での貸出と、実業家コミュニティや労働市場、経済への貢献という、Funding Cirleの政府へのアピールはうまく機能しているようだ。

「Funding Circleはイギリスのフィンテックにおける、本当の意味での成功モデルになりました。そして8000万ポンドもの投資を受けることができたという事実が、フィンテックの重要性が増していることを証明しています。また今回のラウンドは、ビジネスの成長や雇用創出というイギリス経済における重要な役割を担った企業が、新たに信任を得たということを意味しています」と財務大臣のPhilip HammondはTechCrunchへの声明の中で語った。

現在Funding Circleのプラットフォーム上では、個人や地方自治体、中央政府、欧州投資銀行、年金ファンドといった金融機関を含む6万人の認定投資家が、2万5000もの企業へ貸し出しを行っている。Desaiによれば、今後は小口投資家の参加も目論んでいるようだ。さらにリターンについては、同社がこれまでに1億ポンド以上を払いだしており、年間の利回りは7%に達するとDesaiは話す。

次の一歩として、Funing Circleは現在の市場での売上を拡大すると共に、2013年にEndurance Lending Networkを買収してアメリカ市場へ進出したように、買収を通して新たな市場でビジネスを展開していくことも考えている。

Desaiは「現状IPOに関しては何も計画していない」と語っているが、長期的な目標としてはIPOも視野に入れている。「企業としての透明性や債権者ではなくプラットフォームであり続けることなど、私たちが大切だと考えている事項に加え、私たちはいつもFunding Circleを上場させたいと話してきました」

この継続性こそ、Funding Circleが新たな投資家を招かずに、既存の投資家との関係を保っているように見える理由なのだ。

「私たちは初期の投資段階から、Funding Circleのチームに感心していました。同社は中小企業が求める借入のオプションを準備するとともに、投資家に対しても魅力的なリスク調整後利益を提供することで、世界中の市場において大きな成長を遂げてきました。今回のラウンドの結果、Funding Circleは世界最大かつ最も自己資本の多い中小企業向けレンディングプラットフォームとなり、私たちは今後も同社をサポートしていけることを嬉しく思っています」とAccelのパートナーであるHarry Nelisは声明の中で語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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