Facebook上に王室を中傷するコンテンツを投稿していたタイに住む男性に対し、禁錮35年の判決が言い渡された。
言論の自由の擁護を目的とする非営利団体iLawの情報によれば、Wichaiと呼ばれるこの男性がFacebook上に投稿した写真や動画、コメント計10件が、王家に対する批判を禁じているタイの厳格な不敬罪に触れたとのこと。
33歳のWichaiは、口論が原因で仲違いした友人に扮した”虚偽の”アカウントを使用して、王室を中傷していたとも言われている。当初彼は容疑を否認していたが、判決を待ちながら1年以上を拘置所で過ごした後に、一転して起訴内容を認めたとiLawは語っている。
なお、軍事裁判所で本日(現地時間6/9)行われた公判には、ジャーナリストは参加できなかった。もともとは1件あたり懲役7年(合計70年)とされていた刑期は、結局35年に短縮された。とは言っても、国連が「国際人権法にそぐわない」と主張するタイの不敬罪に関連した事件の量刑としてはもっとも重い。
本件とは別に、Chaliewと呼ばれる男性も2014年にラジオ番組の音声をファイル共有サイトにアップロードしたことを理由に、禁錮2年半の判決を受けたとiLawには記されている。当該音声も王室を中傷するものだと判断されたのだ。
3年前のクーデターを機に軍事政府が政権を握って以降、タイは不敬罪やその他の検閲策の適用に関して批判を浴びてきた。人権擁護団体のFIDHは、クーデター以後に不敬罪で逮捕された市民の数が、先月100人を超えたと報じている。
Wichai以外にも、Facebook上のコメントや”いいね”、さらには単にメッセージを受け取ったことを理由に有罪判決を受けた人が存在し、タイ政府は海外に住む反現行政府派の評論家とのインターネット上でのやりとりさえ禁じている。また、同政府は物議を醸した単一のインターネットゲートウェイの導入を推し進めており、ネット検閲に対する不安が市民の間に広がっている。
政府がインターネットゲートウェイの導入を急いでいるのは、現行のシステムを使ってネット上のコンテンツを管理するためには、検閲に消極的な海外発のプラットフォームの協力を仰がなければならないという背景があるからだ。最近では、政府が直接ソーシャルネットワーク各社に圧力をかけ、違法コンテンツの撲滅に努めている。一方Facebookは、裁判所の命令に応じて一部のポストをブロックしはじめており、今年に入ってからは、FacebookとYouTubeの両サービスで違法だと思われる数百件のリンクが削除された。
しかし、多くのリンクが削除されないままだったことに不満を感じた軍事政府は、Facebookへのアクセスを禁じるという脅しをかけていた。結局、その後政府は引き下がり、現在でもFacebookには問題なくアクセスできる。
このような動きを見ていると、インターネット上の自由を守ろうとしている各団体が、タイの状況を不安視しているのにも納得がいく。アメリカのFreedom Houseは、2016年のレポート内で下記のコメントと共に、タイのインターネットやメディアは「自由ではない(not free)」と評していた。
「引き続き軍事政権が法律を利用して検閲・監視の力を伸ばす中、タイのインターネット上の自由度は2016年中に下落しました」
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)