チベットが中国の南アジアへのデータゲートウェイになる

6万平方メートルの広大なデータ施設が、中国と南アジア隣接諸国を結ぶデータ交換の中心地になりつつある。

チベットの高原都市である首都ラサに民間テック企業のNingsuan Technologiesが設立したクラウドコンピューティングデータセンターは、このほど試験運用を開始し、建設の第1フェーズを終えたことを発表した。中国の国営通信社、Xinhau(新華社通信)が中国時間6月7日に報じている(新華社通信記事)。

ヒマラヤ山脈の北東に位置するチベットは、1950年に自治区として中国に統合された。数十年にわたり中国政府は、この国家安全保障にとって極めて重要な地域で、多くのチベット民からの宗教の自由や人権の要求への対応に悩まされている。

この高原地帯は、中国の野心的国際基盤プロジェクトである一帯一路政策(Belt and Road Initiative、BRI)の下、中国と南アジアを結ぶ架け橋のひとつとなっている。チベットに拠点を持つNingsuan社は、北京にデータ制御センターを、南京に研究開発チームを置き、中国とインド、ネパール、バングラディシュをはじめとするBRIの一部をなす国々との貿易や投資活動の増加に期待している。

そのためには膨大なデータ通信を維持するための堅牢なIT基盤が必要になる、とNingsuanのゼネラルマネージャーであるHu Xiao(フ・シャオ)氏が以前のメディアインタビューで語っている(Global Times記事)。

一部の南アジア地域の高温と不安定な電力供給は、データセンターの運用コストを高いものにしているが、すでにデータハブで実績のある貴州省と同様に、チベットはサーバーを低温に保つために理想的な温暖気候と低い平均気温であるため、天然のデータ安息地だ。

ラサ・データセンターの建設は2017年に開始(Global Times記事)され、2025~2026年の完成を目指す壮大な事業であり、総工費は120億人民元(約1830億円)に上る。クラウド設備は、全面稼働すると年間100億元(約1530億円)の収益を生むと試算されている。

Alibaba(アリババ)も一枚噛んでいる。2018年にクラウドコンピューティング事業を拡大している中国のEコマース巨人は、電力供給、金融、国家安全保障、政府業務、公安、サイバースペースなど多岐にわたるチベット産業にクラウドサービスを提供する契約(Alibaba Cloud記事)をNingsuanと結んだ。

画像クレジット:Xinhua / Chogo via Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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