「Brizzly」という名前のTwitterクライアントがかつてあり、この名前はSNS中毒対策のジョークにも使われた(詳しくは後述)。このBrizzlyが帰ってくる。しかも今度は、Twitterのパワーユーザーのニーズに応える機能が搭載される。それは、Twitterに実装されていない「編集」ボタンやツイートの自動削除オプションなどだ。
こうした機能は、Twitter API上で構成された堅牢なツールセットを提供するBrizzly+のサブスクリプションサービスに含まれる。
Brizzly+はシンプルなTwitterクライアントで、タイムラインが表示され「いいね」やツイートの投稿ができる。
しかしBrizzly+の最も注目すべき機能は、ツイートの「編集」ボタンだ。
ツイートの誤字を修正したいというのはTwitterユーザーの多くが望んでいることだが、Twitterは複雑になる、混乱するあるいはTwitter自身が関心を持っていないなどさまざまな理由から、一貫して「編集」ボタンを実装していない。ユーザーのニーズを満たそうとしたサードパーティのTwitterアプリケーションもある。例えばTwitterificアプリは、ツイートを新しいツイートで置き換えることによって結果として修正する「ツイートを削除して編集」のアクションで、この問題を解決しようとした。
Brizzly+のツイート編集機能は、Twitterificとは少し異なる。Brizzlyの創業者で以前はSlackのプロダクト責任者だったJason Shellen(ジェイソン・シェレン)氏によれば、Brizzly+の「取り消し」機能はツイートを投稿する前にクライアントに短時間保管しておくものだという。これにより、ツイートが実際に投稿される前に修正することができる。保管しておく時間は10秒から10分の間で設定できる。
もうひとつの機能は「ツイートのやり直し」で、これは投稿された後でツイートの誤字を修正するのに役立つものだ。この機能の動作はTwitterificと似ていて、前のツイートを削除して新しいツイートで置き換える。ただしBrizzly+では投稿されたツイートの文言が新しいツイートのフィールドにコピーされるので、すぐに編集できる。
ツイートの自動削除は、近年、Twitterユーザーの間で増えてきた要望だ。ひとつにはソーシャルネットワークがもっと小規模だった頃の投稿は、個人的すぎたり、共有しすぎていたり、あるいは今となっては恥ずかしいものだったりするというためだ。しかも注目されているTwitterユーザーは、古いツイートを掘り起こされ攻撃されたりする。2018年にTwitterユーザーが映画監督のJames Gunn(ジェームズ・ガン)氏の過去の不適切なツイートをやり玉に挙げ、その結果「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズの監督を降ろされたのが、その最も顕著な例だ。ガン氏は後に同シリーズの監督に復帰したが、この騒動は古いツイートが問題になりうることを世間に知らしめた。
現在、ツイートの一括削除や自動削除を主眼にしたサービスはたくさん存在している。2019年のNew York Timesの記事によれば、サービスによっては数百万人規模のユーザーがいるという。
Brizzly+では、ツイートを24時間後などに自動で消去する設定にすることができる。この機能を有効にすると、その後はツイートはずっと残るのではなく一時的なコンテンツになる。これはTwitter自身がテストしているストーリー風機能の「フリート」に似ている。しかしフリートは別のプロダクトの一部であり、ツイートしたコンテンツに関するユーザーの懸念を真の意味で解決するものではない。
Brizzly+には自動削除に関してもうひとつ「Fave to Save(お気に入りをとっておく)」という便利な機能がある。ツイートに対する「いいね」の数を設定しておくと、その数を超えたツイートは自動削除されることがない。ツイートの内容をそれほど心配しているわけではないけれど「いいね」を集めたコンテンツだけを残しておくことでTwitter上で人気があるように見せたいユーザーには有効かもしれない。
そしてちょっとしたことだが、Brizzly+ではツイートの入力フィールドに書かれている「What’s happening?(いまどうしてる?)」を任意のフレーズに書き換えることができる。
Brizzlyを創業したシェレン氏はこれまで数々の人気ソーシャルアプリやコミュニケーションアプリ、直近ではSlackに携わってきた。キャリアの初期にはBloggerを開発したPyra Labsで働いていた。Pyra Labsは2003年にGoogleに買収された。Googleでも引き続きBloggerを手がけ、Google Readerを作り、FeedburnerやPicasa、Measure Mapなどの買収にも関わった。Googleの後、Brizzlyを作った自身のスタートアップのThing Labsを2010年にAOLに売却し、AOLでAIMとメッセージングの業務にあたった。同氏が次に立ち上げたスタートアップのHike Labsは、Pinterestに買収された。
シェレン氏はBrizzlyをAOL/Oathから買い戻した(Oathは後にVerizon Mediaとなった。TechCrunchの親会社である)。Brizzly+を開発する前の2018年、同氏は入力した内容がどこにも投稿されずに消えるSNS中毒対策のジョークプロジェクトとしてBrizzlyの名を復活させた。これは今でも「Brizzly Zero」という名前で残っている。
新しいBrizzly+のサブスクリプションの価格は1カ月6ドル(約643円)で、年間契約だと1カ月5ドル(約535円)に割引される。2週間の無料試用期間もある。
現時点ではBrizzly+はウェブクライアントのみだが、今後はiOSアプリのネイティブアプリを開発する計画だ。画像のアップロード、ダークモード、ツイートの履歴の削除なども盛り込まれる予定となっている。
Twitterにはサードパーティのクライアントを敵視してきた経緯があり、つぶしにかかったこともある。しかし興味深いことに、TwitterはBrizzly+に対して応援の意を表している。
Our friends @Brizzly are back! We’re excited about their new Tweet compose & auto-deletion tools. They even built…an edit feature! Check them out https://t.co/p7Hbt4qxPF
— Twitter Dev (@TwitterDev) March 10, 2020
Twitterのデベロッパープラットフォーム責任者のIan Cairns(イアン・ケアンズ)氏はTechCrunchに対する文書の中で「我々は、ツイートの作成などTwitterの重要な部分を向上させるものをデベロッパーが開発することをとてもうれしく思っている。デベロッパーは、人々ができなかったことをできるようにする手助けをしている」と述べた。さらに「これは初期のTwitter APIの優れた部分のひとつだったが、実現が簡単とは限らない。我々はこれを変えようとし始めたところだ」とも付け加えた。
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(翻訳:Kaori Koyama)