テスラの元CIOが自動車ディーラー向けクラウドソフトビジネスの成長に向け160億円調達

「言葉を慎重に選ぶ必要があります」。カリフォルニア州サンノゼにあるStevens Creek Volkswagen(スティーブンス・クリーク・フォルクスワーゲン)のJoe Castelino(ジョー・カステリーノ)氏は、ほとんどの自動車販売店が在庫情報、マーケティング、顧客関係などの管理に使うソフトウェアについて尋ねられてそう答えた。

ディーラーのサービスディレクターであるカステリーノ氏は、そういって笑った。しかし、冗談のような状況にあるのは自動車ディーラーだ。ほとんどのディーラーは何年にもわたり、ディーラー管理システムに関して、限られた数のイライラさせられる時代遅れのベンダーに大きく依存してきた。そして、より洗練されたポイントソリューションも使ってきた。

Tesla(テスラ)のCIOを務めたJay Vijayan(ジェイ・ビジャヤン)氏が、電気自動車の巨人にまだ雇われている間に、自分はこの問題に対処するのに適した立場にいると結論付けたのはまさにチャンスだったといえる。

ビジャヤン氏がいま述べているように、同氏は2011年にテスラに入社するまで自動車については何も知らなかった。その前はOracle、次にVMwareで12年間製品開発に携わった。それでも同氏はその後の4年間で多くを学んだ。具体的には、Elon Musk(イーロン・マスク)氏とともに、テス​​ラ内の中央分析システムの構築を支援したと述べている。これは、サプライチェーンから、工場システム、小売プラットフォームに至るまで、社内のすべての内部システムを確認できる一種の頭脳だ。

テスラは自身でそれを構築しなければならなかった、とビジャヤン氏はいう。サードパーティーのプロバイダーの既存のソフトウェアを評価した後に「チームが理解したのは、スムーズで最新の消費者体験を提供するためにテスラが求めていたものに近いものがなかったということです」。

アイデアが閃いたのはその頃だった。テスラが自社の顧客体験を変革できるなら、ビジャヤン氏ははるかに大規模で幅広い自動車業界の売買体験を変革できるかもしれない。Tekion(テキオン)で検索して欲しい。カリフォルニア州サンカルロスで4年の歴史を持つ同社は、すでに同地とバンガロールで470人を雇用しており、プライベートエクイティ投資家のAdvent International(アドベント・インターナショナル)がリードした資金調達で1億5000万ドル(約160億円)を集めた。

このシリーズCラウンドで同社の累計調達額は1億8500万ドル(約200億円)になった。Index VenturesAirbus Ventures、FM Capital、Exor(フィアットクライスラーとフェラーリの持ち株会社)も参加した。

同社は10億ドル(約1050億円)以上の評価がついている。自動車メーカーのゼネラルモーターズ、BMW、日産・ルノー・三菱ア​​ライアンスも投資家だ。

AdventのマネージングディレクターであるEric Wei(エリック・ウェイ)氏は同氏のチームが過去10年間、100億ドル(約1兆500億円)の時価総額に近づいている会社をつかむことに熱心だったという。現在はReynolds&Reynolds、CDKGlobal、Cox AutomotiveのDealertrackのような会社を探し、あるいはより優れたプレーヤーが出現するのを待っている。

ウェイ氏はその後、テスラの前社長であり、AdventのアドバイザリーパートナーであるJon McNeill(ジョン・マクニール)氏を通じてTekionに出会った。

ウェイ氏は、Tekionのテクノロジーを大手ライバルと比べてどう見ているかについて、「折り畳み式携帯電話をiPhoneと比較するようなものだ」と述べた。

当然のことながら、テスラでビジャヤン氏と一緒に働いていたマクニール氏もTekionを称賛し、同社がカリフォルニア州ギルロイのディーラーを買収し、テクノロジーをゼロから構築している間、一種のラボとして使用していたとを指摘した。

称賛は素晴らしいが、より重要なのはTekionがディーラーの注目も集めているということだ。ビジャヤン氏はどれくらいの顧客が同社のクラウドソフトウェアを購入したか明かさなかった。このソフトウェアは機械学習アルゴリズムを利用しており、ディーラーとメーカーの両方を結び付ける。同氏はすでに28の州で使用されていると述べた。

顧客となったディーラーの1つに全米チェーンのSerra Automotiveがある。操業者のJoseph Serra(ジョセフ・セラ)氏は現在Tekionの投資家だ。

もう1つが冒頭のサンノゼにあるフォルクスワーゲンのディーラーだ。ここのカステリーノ氏はTekionのプラットフォームによってチームが節約できた時間と費用について熱心に語っている。同氏はTekionに対して投資していない。

例えば顧客は特定の問題にフラグを立てようと思ったら、いますぐログインするだけでよいと同氏は説明する。その後、RFIDタグの助けを借りて、スティーブンス・クリークは、その顧客がいつディーラーに来るのか、どのような支援が必要かを正確に把握し、やって来たときの対応を極めてスムーズにできる。

Tekionは、車の履歴に基づいて推奨を行うこともできる。例えばアドバイザーが顧客の履歴を調べなくても、顧客に対しブレーキオイルを交換するよう提案する場合がある、とカステリーノ氏はいう。

同氏によると、重要なこととして、同氏のディーラーは他の多くのソフトウェアベンダーとの関係を断ち切ることができたと同時に、その時間をより生産的に利用できたことだという。同氏は「修理の注文が届くとすぐにコーディネーターがそれを把握し、技術者が車に取りかかれます」と述べた。すべての手続きでそのように運ぶと同氏は主張する。「15分間の節約を繰り返せるので、気がつけば3時間が手に入っています」。

カステリーノ氏のような転向者のおかげで、Tekionが市場シェアを大きく延ばしていることは容易に想像できる。それでもライバルは存在し、その中には顧客との長期契約を結んでいる会社もある。

競争が激化したとしても、最終的にはテスラ自体との競争になる可能性がある。

マスク氏は本日のテスラの電話による決算報告でアナリストに、車両サービスを中心に、テスラの内部には実質的に12のスタートアップがあると語った。まさにそれらはビジャヤン氏が立ち上げを支援した事業だ。

マスク氏がそのうちどれかをスピンアウトする可能性について、テスラは現在その予定はないと同氏は述べた。同氏は当面はこのままだと示唆した。ただしTekionが離陸するなら状況は大きく変わる可能性がある。

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タグ:Tekion、資金調達

画像クレジット:Tekion

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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