デジタルマーケティング領域で複数の事業を開発するFLUXは11月8日、DNX Ventures、Archetype Ventures、有安伸宏氏を含む複数の個人投資家及び事業会社を引受先としたJ-KISS型新株予約権方式により2億円を調達したことを明らかにした。
同社はこれまでメディアの広告収益を増加させる「ヘッダービディング」の仕組みをSaaS型のプロダクトとして展開。今年1月の正式リリースから約10ヶ月で最大手パブリッシャーを中心に契約ドメイン数100以上を達成するなど国内市場シェアトップクラスに成長している。
今回の資金調達は既存事業である「FLUX Header Bidding Solution」の成長を加速させるための人材採用などに用いるほか、新プロダクト「FLUX LTV Analytics」の開発にも企てる計画だ。
FLUXは2018年5月にCEOの永井元治氏やCPOの平田慎乃輔氏らが立ち上げた。永井氏は戦略コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニー、平田氏はカカクコムの出身。BtoBのデジタルマーケティング領域を軸に事業を検討する中で、平田氏が前職で食べログや価格.comなどメディア事業のマネタイズを経験し現場の課題を感じていたこともあり「メディアと広告出稿者側の間に存在する情報の非対称性」を解消していくプロダクトからスタートすることを決めたという。
現在の主力事業であるFLUX Header Bidding Solutionは特にメディア側の課題を解決するためのアドテクノロジーだ。
ヘッダービディングとは複数のSSPとGoogle AdSense/AdExchangeを同時にオークションにかけることにより、メディアにとって最も高い広告が落札される仕組みのこと。簡単に言うとフェアな入札競争によって広告収益を最大化できるテクノロジーで、メディア側の視点では従来発生していた可能性のある機会損失をなくし、より多くの広告収益を手にする機会が得られる。
ヘッダービディングの市場は米国で先行して普及し、すでに既に大手メディアの80%が導入しているそう。近年は日本でも拡大傾向にあり、冒頭でも触れた通りFLUXも出版社やweb専門メディアまで契約ドメイン数は100を超えている。
FLUXは自社のヘッダービディングソリューションをメディア向けのSaaSとして提供しているが、メディアとしては「広告収益が上がる分、このプロダクトにお金を払ってもペイする」という構造だ。
またFLUXではこれまでFLUX Header Bidding Solutionで蓄積してきたビッグデータや独自の分析技術などを用いて、購買における各ユーザーのLTV (顧客生涯価値)を推定する新サービス「FLUX LTV Analytics」を今後展開していく計画だという。
導入企業がもつ顧客データとFLUXの保有データを統計と機械学習で処理し、限られたデータセットの中からユーザーごとのLTVを予測できるのが大きな特徴。分析したLTVセグメントや解約見込み率に応じてマーケティングコミュニケーション手法を変えたり、LTVが高くなる見込みのユーザーのみをターゲティングして広告を出稿したりといったことが可能だ。
たとえば顧客になる前に「この人がどれくらいのヘビーユーザーになってくれるのか(LTVがどのくらい高くなるのか)」が推論できればアプローチの優先度を変えることもできるし、顧客獲得後にも「LTVが高いと推論される人に対してはアップセルを訴求し、低い人に対してはチャーン対策をする」といった意思決定を早い段階ですることもできる。
まずはECやD2Cなど、ユーザーの行動がweb上で完結する事業を手がける企業をメインターゲットに、プロダクトの開発・導入を進めていきたいとのことだ。