デジタル・レンディング・プラットフォームのBlendの新規公開での評価額は約4400億円超

住宅ローンはセクシーではないと思われがちだが、ビッグビジネスだ。

最近、デジタルで住宅の借り換えや購入をした人は、その背後でソフトウェアを動かしている会社に気づかなかったかもしれない。だが、その会社がBlend(ブレンド)である可能性は十分にある。

2012年創業のBlendは、住宅ローンテクノロジー業界のリーダーとして着実に成長してきた。Blend社のホワイトレーベルテクノロジーは、Wells FargoやU.S. Bankなどの銀行のサイトで住宅ローンの申請をサポートしている。その目的は、プロセスをより速く、シンプルにし、透明性を高めることにある。

サンフランシスコを拠点とするBlend社のSaaS(Software-as-a-Service)プラットフォームは、昨年7月には1日あたり約30億ドル(約3300億円)だった住宅ローンや消費者ローンの取り扱い額が、現在では50億ドル(約5500億円)以上に達している。

Blendは米国7月16日、ニューヨーク証券取引所に上場企業としてデビューした。「BLND」というシンボルで取引される。米国東部時間の午後早い時間に、株価は13%以上上昇し、20.36ドル(約2240円)で取引されている。

7月15日夜、同社は1株あたり18ドル(約1980円)の価格で2000万株を市場に出すと述べていた。これは同社が36億ドル(約3960億円)のバリエーションを目標としていたことを示している。

1月に行われた前回の資金調達時のバリエーションは33億ドル(約3630億円)だった。それは3億ドル(約330億円)のシリーズGラウンドで、CoatueやTiger Global Managementが参加した。また、Blendがユニコーンになったのは、昨年8月に7500万ドル(約82億5000万円)を調達したシリーズFからであることも忘れてはならない。同社は、7月16日の上場までに6億6500万ドル(約732億円)を調達した。

Blendは、6月21日に提出したS-1で、収益が2019年の5070万ドル(約55億7700万円)から2020年には9600万ドル(105億6000万円)に増加したことを明らかにした。一方、純損失は、2019年の8150万ドル(約89億6500万円)から2020年には7460万ドル(約82億600万円)に縮小した。

サンフランシスコを拠点とする同社は2020年、そのデジタル消費者金融プラットフォームを大幅に拡大した。拡大に伴い、貸し手である顧客に新しい機能を提供し始め、あらゆる消費者向け銀行商品を「数カ月ではなく数日で」立ち上げることができるようになった。

今後の見通しとして、同社は収益成長率が「将来的に低下する」と予想している。また、しばらく成長に重点を置くために、すぐに黒字化を達成することは想定していない。また、開示資料によると、2020年には上位5社の顧客が収益の34%を占める。

TechCrunchは先日、共同創業者でCEOのNima Ghamsari(ニマ・ガムサリ)氏に、ユビキタスなSPACや、まして直接上場でもなく、伝統的なIPOに踏み切った同社の決断について話を聞いた。

ガムサリ氏は、同社が「長く続く企業」であることを顧客に示すために、成長を続けるための十分な資金をバランスシートに残しておきたいと考えていた。

「世界最大級の投資家の方々に当社への投資を納得していただかなければなりませんでした。それは、当社がどれだけ長くお客様にサービスを提供できるかを説明するということでした」と同氏は語った。「つまり、最も規制の厳しい業界の1つであるこの業界で、本当に信頼できるソフトウェア・プロバイダーとしての地位を確立したいという思いと、当社の資金需要が結びついたのです」

Blendは住宅ローンのプロセスを支援するソフトウェア会社であり、住宅ローンを提供する会社ではない、とガムサリ氏は強調する。そのため、住宅ローンを提供するフィンテックの一群と連携している。

「多くのフィンテック企業が、インフラとしてBlendを利用しています」とガムサリ氏は言う。

同氏は全体としてこれはBlendにとって始まりに過ぎないと考えている。

「金融サービスの特徴の1つは、いまだにそのほとんどが紙で行われていることです。だからこそ、Blendの成長の大部分は、数年前に始めたこのプロセスをさらに深めていくことなのです」と語る。前述の通り、Blendは住宅ローン商品からスタートしたが、その後も商品を増やし続けている。現在では、自動車ローン、個人ローン、ホームエクイティローンなど、他のローンにも対応している。

「当社の成長の多くは、他のビジネスラインによって支えられています」とガムサリ氏はTechCrunchに話した。「金融業界ではデジタル化の流れがまだ始まったばかりで、開発すべきものがたくさんあります。この業界は比較的規模が大きく、変化に富んでいます」

5月には、デジタル住宅ローンの貸し手であるBetter.comがSPACと合併し、2021年後半に株式公開すると発表した。

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画像クレジット:Blend

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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