トッド・ラングレンがバーチャルだが「地域限定」のツアーを間もなくスタート

バーチャルコンサートツアーというアイデアは、新型コロナウイルス感染症のために考えられたように思えるが、ミュージシャンのTodd Rundgren(トッド・ラングレン)氏は、実は何年も前からこのようなことを考えていたという。

ラングレン氏は、ハリケーンや気候変動によって悪化した「崩壊しつつある」空の旅というシステムに不満を感じていたと筆者に語った。「どこかに座わったまま、次のコンサート会場に行けない」ことが増え、オーディエンスにリーチするためには「他の方法を想像し始める」必要があると、彼はすでに確信していたのだ。

だが、新型コロナウイルス感染流行がきっかけとなり、ラングレン氏は米国時間2月14日から始まるClearly Human Tour(クリアリー・ヒューマン・ツアー)で、ついにこれを実現させることに決めた。彼は従来のようなツアーを計画していたが、コロナ禍の影響で日程の延期が続いていた。そしてついに彼は主催者に言った。「やらせてくれ。2年間もツアーをしないでいるわけにはいかないんだ」と。

ラングレン氏と彼のバンドは、実際にはすべてシカゴで演奏する。そこで彼のキャリアの中からこれまで発表してきた曲と、アルバム 「Nearly Human(ニアリー・ヒューマン)」の全収録曲を演奏する予定だ。しかし、バーチャルなツアーは2月14日のバッファローから始まり、3月22日のシアトルで終了するまで、全米25都市で行われる。

「1回のショーを行って、それをすべての人々に披露する」よりも、その方が魅力的だと思った、とラングレン氏は語る。

「人々はこの特定のイベントのために何週間も何カ月も前から計画を立て、ショーはそれぞれの都市または特定の地域にいる人々だけを楽しませる」と、彼は語る。「これは何よりも社交的なイベントであり、我々はそれを地域を限定して行おうとしているのです」。

ライブはすべて現地のタイムゾーンに合わせて午後8時に始まる。また、バンドもそれに気分を合わせるために「自己催眠」を試みるつもりだと、ラングレン氏はいう。「ライブ会場のすべての壁は、その街のポスターやスポーツチームの記念品で飾りつけ、我々はその地域で馴染み深い食べ物を取り寄せて食べるのです」。

その他にも、地元のファンとバーチャルで挨拶や交流を交わしたり、ライブ会場内にはビデオスクリーンを設置してバーチャルオーディエンスを映すなどの工夫が施されるという(そのための限られた枚数のチケットが販売される。ただし、もちろん参加者はその時、シカゴにいる必要がある)。

このコンサートには、ジオフェンス(地理的な境界線)が設定されることになる。このアプローチは進化してきたとラングレン氏は語っているが、それはバッファローのコンサートをバッファローの参加者に限定するというよりも、ラングレン氏の契約上の義務に基づいて地理的な制限を強いるということだ。または彼がいうように「観客を囲い込むというよりも、入れないようにするためのもの」ということになる。

画像クレジット:Todd Rundgren

ラングレン氏は、ミュージシャンのCisco Adler(シスコ・アドラー)氏とDonavon Frankenreiter(ドノヴァン・フランケンレイター)氏によって設立されたライブストリーミングコンサートのスタートアップ、NoCapのサポートを受けてこのツアーを開催する。NoCapは設立されてまだ1年も経っていないものの、アドラー氏によれば、最初のショーで販売したチケットは700枚だったが、「今では3万、4万、5万枚のチケット」を販売しているという。そして同氏は、このコロナ禍が終息した後も、バーチャルコンサートがなくなることはないだろうと予測している。

「5年に1度しかミュージシャンが来られないような、十分なサービスを受けていない市場があるはずです」と、彼はいう。「将来的には現実のコンサートとバーチャルのハイブリッドになるでしょう」。

結局のところ、スポーツのテレビ中継は、スポーツを「より大きく、よりグローバルに」するだけだったと彼は指摘する。同様に、アドラー氏がコンサートのライブストリーミングについて考えていたとき、「私が思ったのは、どうやってBand Aid(バンドエイド)を作り、このギャップを埋めてみんなを助けようか?ということではありませんでした。それよりも、今、音楽にできることの向こう側へ続く架け橋を作るためにはどうすればいいか?ということでした」。

関連記事:Spotifyにアーティストのバーチャルイベントの予定がわかるリストが登場

カテゴリー:ネットサービス
タグ:音楽動画配信

画像クレジット:Lynn Goldsmith

原文へ

(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。